昭和49年版 通信白書

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4 国際電気通信衛星機構(INTELSAT)

(1) 概 要
 インテルサットは,通信衛星を利用して国際通信を行うための組織として1964年8月に設立され,1973年2月,国際電気通信衛星機構に関する協定が発効し正式の国際機関となった。新たに発足したインテルサットの組織は,締約国総会,署名当事者総会,理事会,暫定事務局からなっている。
 第1回締約国総会は,1974年2月米国ワシントンで開催され,次の諸決定が行われた。
ア.締約国等の衛星打上げに関するインテルサットとの協議
 インテルサットの締約国,署名当事者は,自己はもちろん締約国内にある者がインテルサットの衛星とは別個の衛星を打ち上げようとする場合は,インテルサット協定に基づいて,一定の技術データ等の情報をインテルサットに提供し,協議しなければならないこととなっており,今回の締約国総会においては,米国の気象衛星,海上衛星の両衛星計画が提出された。この気象衛星は,米国政府が世界気象衛星システム計画の一環として,南米及び太平洋上に打ち上げるものであり,海上衛星は,コムサットジェネラル社を中心とする米国のコンソーシャムが船舶との通信を目的とする衛星を大西洋及び太平洋上に打ち上げようとするものである。これに対し締約国総会は理事会の助言に基づいて,このいずれの衛星もインテルサットに対し何ら技術的干渉の問題を起こさないこと,また海上衛星については,インテルサットが海上衛星業務を提供するという具体的な計画を有しない現状では,インテルサットに対して経済的に著しい損害を与えることは予見されない旨認定した。なお,この海上衛星については次回総会において更に詳しい報告を求めることとなっている。また気象衛星などの特殊電気通信業務用衛星は,今後その打上げが数多く予想されることから,理事会が手続の簡素化を示唆する文書を提出したが,インテルサットはこれに関しいまだ経験が少ないという理由から次回総会で再検討することとなった。
 なお,インテルサットと協議を義務づけられる衛星は,原則として実用衛星に限るものであり,実験を目的とする衛星は含まれないこととなっており,我が国が51年度に打上げを予定する実験用通信,放送両衛星については,この手続を必要としないものである。
イ.他の国際機関との関係
 インテルサットの業務を遂行するに当たっては,ITUや政府間海事協議機関(IMCO),国際民間航空機関(ICAO)等他の国際機関と一定の関係を設定することが有効であるので,必要な場合は理事会が暫定事務局長を通じてこれら機関と公式の関係を設定することとなった。もっとも公式の関係の設定は締約国総会の承認が条件となっている。
ウ.国連からのインテルサット無料使用の要請
 国連は従来からインテルサットに対し国連が行う通信について無料使用あるいは特恵的料金を適用する等優遇措置を求めていたが,今回の締約国総会で正式にこのような要請は認められないとの回答を表明した。
 しかし,国連が平和維持活動及び災害救助活動のために緊急通信を必要とする際には,インテルサットの衛星回線を優先的に使用することができることを認め,理事会にそのために必要な取決めを国連との間に結ぶよう要請している。
 このほか,インテルサットに関する紛争を処理する仲裁裁判所の裁判長団構成員の選挙が行われ,我が国からも1名選出された。
 インテルサットの参加事業体の総会である署名当事者総会の第1回会合は,1973年11月米国ワシントンで開催され,我が国からは署名当事者である国際電電が参加した。総会は理事会から年次報告を受けるとともに理事会メンバーとなるための最少の出資率(1.14%)を決定した。
 インテルサット運営の中心的機関である理事会は,署名当事者の代表で構成され,出資率の大きさによって選出される理事18,地域グループの代表である理事3の計21理事からなっている。これら理事が代表する出資額は,全体の95.68%を占めている。その内訳は第2-8-1表のとおりであり,我が国の国際電電は重要な地位を占めている。
 理事会はほぼ2か月に1度開催され,48年度においては7回開催された。このほか理事会には技術,財政等の諮問委員会があり,ひんぱんに開催されている。理事会はこれらを通じてインテルサット衛星系の正常な運用を確保するとともに,次の衛星系の技術開発を進めている。48年度は,現在のIV号系,IV-A系衛星の次期衛星であるV号系衛星のシステムディフィニションの研究が重点的に行われた。またインテルサット恒久制度発足の第1年目として,新たに発足した事務局の組織固めを行い,暫定事務局長としてチリのアストライン氏を選出した。
(2)インテルサットの現状
 インテルサットは,1965年4月のアーリーバードを皮切りに次々と高性能の衛星を打ち上げてきたが,現在商用に供せられている衛星は<4>号系衛星であり,大西洋上2個,太平洋上,インド洋上各1個の計4個が配置され,衛星1個が電話換算約5,000回線の容量を有している。<4>号系衛星は,1975年には大西洋地域において飽和点に達するので,電話換算約7,000回線の容量のある<4>-A系衛星の打上げが1975年に予定されている。<4>-A系衛星の最大の技術的特徴は,衛星のアンテナを四つの地域に集中させ,かつ,同じ周波数を多地点に使用する点にある。
 大西洋地域におけるインテルサット衛星経由のトラフィック需要予測によると,大西洋地域においては,<4>-A系衛星を1975年に導入しても1978年ごろには再び飽和状態になると予測されている。このため,インテルサットは電話換算12,000〜13,000回線を容する大容量のV号系衛星を1978年ごろに打ち上げることを目標として目下検討を急いでいる。このV号系衛星では,11及び14GHz帯の使用が導入されるほか,海上衛星機能を盛り込むことについても検討されている。
 大西洋,太平洋,インド洋上の各衛星の使用状況は第2-8-2表のとおりであり,これら衛星の利用国は54か国に達している。

第2-8-1表 インテルサットに対する理事の出資率

第2-8-2表 インテルサット衛星の利用状況(1974.4.4現在)

 

 

 

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