昭和49年版 通信白書

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第2節 資源・エネルギー危機と通信の役割

1 通信による交通の合理化

 近年における我が国経済の伸長と生活レベルの向上に伴って,人の往来,物の輸送に対する需要は年々増大の一途をたどり,陸,海,空のすべてにわたり交通はますます過密化の様相を帯びるに至っている。この結果,我が国における交通,とりわけ大都市における交通は,通勤・通学難の深刻化,交通の混雑,渋滞の激化,交通公害,交通事故の多発等様々の問題を抱えており,また,今後資源・エネルギーの供給面における不安定の増大が見込まれている。
 交通の過密化を緩和するためには,根本的には都市機能の分散や道路等の社会資本の充実が図られねばならないが,同時に省資源・エネルギーのための対策が緊急の課題となっている現在,交通システムに情報通信システムを効率的に組み込むことによって,積極的に交通を制御することが必要である。
 このような見地から既に社会の中で有効に機能している情報通信システムには,交通管制システム,タクシー無線システムなどがある。
 交通管制システムは,警視庁によって運営されている広域交通管制システムをはじめとして,各地の主要都市に導入されつつある。このシステムは,各地点の交通量を自動的に検知し,センターの電子計算機により各交差点での最適信号時間,交差点の各方向の信号時間比率及び交差点間の時間のずれを求め,交通信号機の点滅状態の随時的な調整変更,交通規制標識の臨時的な変更等臨機応変の措置を行おうとするものである。このシステムの導入によって,交通の安全が確保されるとともに,交通の流れが円滑化されるため道路,車両等の有効利用が図られ,また,無駄な交通が省かれるため燃料等の使用量が節減され,省エネルギーのために大きな貢献をしている。
 タクシー無線システムは,自動車に無線機を備え付けることによって,営業所から走行中又は待機中の無線車に対し,随時指令を行い利用者に対する迅速なサービスの提供と経営効率を図ることを目的として導入されたが,無線通信の利用によって空車でいる時間が短縮され,走行経路の円滑化及び走行距離の短縮が図られるため,自動車の有効利用,燃料の節約に効果をあげている。
 また,航空管制システム,海上航行管制システム,列車運行システムなどもそれぞれ,交通システムに情報通信システムを導入することによって,飛行場,港湾,鉄道施設などの効率的利用に資するとともに,航空機の飛行場上空での着陸待機時間の短縮,船舶の港湾外での待機時間の短縮等を通じて燃料等の節約にも効果を発揮している。
 このように交通を円滑化,効率化するためのシステムが実用化され,またデマンド・バス・システム,CVSなど新しい交通システムの開発が行われようとしているが,資源・エネルギーの枯渇が叫ばれ,この問題が日本の将来を左右しかねない現在,交通システムと情報通信システムを有機的に結合して,更に一層交通施設の有効利用を図るためのシステムの在り方を検討する必要がある。

 

 

 

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