総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > 人口減少における我が国経済成長
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第1節 少子高齢化等我が国が抱える課題の解決とICT

(2)人口減少における我が国経済成長

こうした少子高齢化やそれに伴う人口減少は、我が国経済の供給面と需要面の双方にマイナスの影響を与え、我が国の中長期的な経済成長を阻害する可能性がある。すなわち、供給面からみた場合、経済成長の要因は、①労働投入、②資本投入、③TFP(全要素生産性)の3要素に分解されるが、少子高齢化による生産年齢人口の減少は、前述したとおり①の労働投入の減少に繋がると考えられる。また、人口が減少すると、国内市場が縮小するとの懸念から企業の成長期待が喪失し、資本蓄積(設備投資による資本ストックの積み上げ)にマイナスの影響を与える。

需要面からみた場合、少子高齢化とそれに伴う人口減少は、医療・介護サービスなど一部の分野で国内需要を拡大させる一方、多くの分野で国内需要の縮小要因となると考えられる。社会的に必要な住宅投資やインフラ投資の水準を変化させ、需要面でも資本蓄積に影響を与える。

我が国経済の構造を踏まえると、平成27年情報通信白書でも言及したとおり、中長期的な経済成長を実現していくためには、供給面の対策と需要面の対策を車の両輪として進めていく必要がある。具体的には、供給面では、労働投入の減少を見据え、積極的な投資を続けながらも企業の生産性向上を図っていくことが何より重要である。加えて、女性や高齢者の就業促進による労働参加率の拡大や、教育・人材育成の充実による労働の質向上も求められる。他方の需要面では、企業の積極的なグローバル展開を通じて拡大する海外需要の取り込みを図るとともに、新たな商品やサービスの創造(プロダクト・イノベーション)を通じて持続的な需要創出を図ることが重要である。

また、経済は循環的構造にあり、供給面と需要面のバランスが悪くなれば成長に限界が生じ、経済成長が鈍化する。我が国では、「失われた20年」と言われるように、長年需要不足が成長のボトルネックとなっており、さらに我が国では所得が増えても消費を抑える傾向も指摘されてきたところである。すなわち、潜在GDPと実質GDPの差(GDPギャップ)は、需要不足に伴い拡大してきた経緯がある。以降の節で説明するように、ICTは供給及び需要の両面から貢献することで、今後も経済の循環において役割を果たすことが期待される(図表1-1-1-3)。

図表1-1-1-3 経済の循環におけるICTへの期待
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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