総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > 在留外国人と日本の文化・コンテンツ
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4節 外国人から見た日本のICT・文化 

(5)在留外国人と日本の文化・コンテンツ

ア 来日前に日本についての情報を収集する手段の分析

続いて、在留外国人へのアンケート調査結果8について取り上げる。在留外国人が来日前に日本についての情報を収集する手段の結果は以下のとおりである(図表3-4-1-13)。

図表3-4-1-13 在留外国人が来日前に日本の情報を収集する手段
(出典)総務省「在留外国人及びソーシャルネットワークサービス利用者のICT利用状況等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-4-1-13 在留外国人が来日前に日本の情報を収集する手段」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

在留外国人の我が国への滞在年数別にみると、滞在年数が短い者、すなわちより直近に日本に来た可能性が高い者ほど9、インターネット系のメディアを利用する割合が高い傾向にある。年を追うごとに、インフラ、端末面でのインターネットの普及、また、我が国からの情報発信、また外国人による日本についての情報発信が充実し、それらがソーシャルメディア等によって伝播している可能性がうかがえる。

イ 日本についての情報収集・発信の変遷の分析(来日前と来日後など)

在留外国人の来日前及び来日後の日本についての情報収集、また、来日後の日本についての情報発信について尋ねた(図表3-4-1-14)。来日前に情報収集している項目と来日後に情報収集している項目とを比較すると、「観光」「伝統文化」「日本食」「日本での暮らし」のように来日前後で情報収集している者の割合に差がないものと、「アニメ・ポップカルチャー」「ショッピング」「自然」「季節や年中行事」のように割合に差がついているものとに分かれている。在留外国人は、外国人の中でも特に我が国に関心の高い層と考えられるが、「観光」「伝統文化」「日本食」「日本での暮らし」のようなテーマは来日前からイメージしやすく関心を持ちやすいテーマ、「アニメ・ポップカルチャー」「ショッピング」「自然」「季節や年中行事」は従来来日後に関心を持ちやすい傾向があったと考えられる。もっとも後者についても我が国への滞在年数別に集計すると、直近に来日した者は比較的高い割合で来日前も情報収集を行っており、情報収集する手段と同様、我が国からの情報発信、また外国人による日本についての情報発信が充実し、それらがソーシャルメディア等によって伝播している可能性がうかがえる。

図表3-4-1-14 日本についての情報収集(来日前後)・発信(来日後)の変遷
(出典)総務省「在留外国人及びソーシャルネットワークサービス利用者のICT利用状況等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-4-1-14 日本についての情報収集(来日前後)・発信(来日後)の変遷」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

在留外国人の利用しているICT端末・サービス

在留外国人の利用しているICT端末、またサービスのうちソーシャルメディアの利用状況を概観する(図表3-4-1-15)。

図表3-4-1-15 在留外国人の利用しているICT端末
(出典)総務省「在留外国人及びソーシャルネットワークサービス利用者のICT利用状況等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-4-1-15 在留外国人の利用しているICT端末」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

在留外国人のスマートフォンの利用率は、先進国出身者では87.8%、先進国以外の国の出身者では91.8%とほとんどに近い水準で在留外国人がスマートフォンを利用している結果となった。タブレットの利用率もそれぞれ47.8%、36.9%と日本人よりも高い利用率となっている。

在留外国人にソーシャルメディアの利用頻度について尋ねた結果を見ると(図表3-4-1-16)、現在日本においては概ね8割程度が毎日利用していると回答した。毎日ではないが週に1回以上利用していると回答した者と合わせると、概ね9割以上が高い頻度でソーシャルメディアを利用していると言える。

図表3-4-1-16 在留外国人のソーシャルメディア利用頻度
(出典)総務省「在留外国人及びソーシャルネットワークサービス利用者のICT利用状況等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-4-1-16 在留外国人のソーシャルメディア利用頻度」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

在留外国人が現在日本でどのようなソーシャルメディアを利用しているかの回答結果を見ると、Facebook、YouTubeが8割超、LINEが7割超と高くなっている(図表3-4-1-17)。LINEについては、第2節にて取り上げた各国のソーシャルメディアの利用率の調査結果においても日本以外の国における利用率は極めて低く、また在留外国人が来日前母国にいた際の利用率も先進国出身者で16.1%、それ以外の国出身者で20.2%と必ずしも高くなくはないが、現在日本での利用率は7割超と高くなっている点が注目される。日本国内における知人・友人や他の在留外国人等とのコミュニケーションのために利用していると考えられ、居住地の状況やよく連絡をとる周囲の人々に応じてコミュニケーション手段を変化させている様子がうかがえる。

図表3-4-1-17 在留外国人の利用しているソーシャルメディア
(出典)総務省「在留外国人及びソーシャルネットワークサービス利用者のICT利用状況等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-4-1-17 在留外国人の利用しているソーシャルメディア」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

概ねどのソーシャルメディアにおいても、在留外国人の来日前(母国で)よりも来日後(現在)の方が利用率が高くなっている傾向があるが、グローバルに見てソーシャルメディアの利用が一般化したのはここ10年ほどのことであり、いつ来日したかの影響を受けている点は注意が必要と考えられる。

〜SNSなどのICTを活用してクリエイティブに活動する人々〜

お笑い芸人 NON STYLE 井上裕介さん

Twitter上の「ポジティブ返し」で人気が急上昇

Twitterでのつぶやきが、インターネット上でたびたび話題となるお笑い芸人・NON STYLEの井上裕介さん。井上さんに対するネガティブコメントを、ポジティブに切り返す「ポジティブ返し」が注目され、Twitterを通じてファンの数を増やした。特に、Twitter利用者の多い女子中高生による人気芸人ランキングでは、好きな芸人、嫌いな芸人の両方にランクインし、井上さんの世間からの注目度の高さがうかがえる。そんな井上さんがTwitterでのつぶやきやファンとの交流についてどのように考え、感じているかについてお話をうかがった。


SNSの活用はひとつのビジネスプラン

井上さんが使用しているSNS系のサービスは、Twitter、Instagram、Facebook、mixi、755、ブログの6つ。メインで活用しているTwitterのフォロワー数は74万人を超え10、現在までにつぶやいたツイート数は22,00010にも上る。

Twitterを始めたのは、初めてスマートフォンを購入した7年前。先輩芸人からの誘いをきっかけに、当初は趣味程度で利用していた。その後、Twitter人口が増えることで仕事に繋がると考えた井上さんは、日常を切り取ったさりげないひとコマであっても、それをインターネット上のニュースやテレビの仕事との縁を意識しながらつぶやくようになった。

井上さんはTwitterを「インターネット上の公園のようなもの」だという。

「子どもの頃、公園に行って知らない子と友達になるような感覚です。公園でもTwitterでも、気が合う人がいるといつの間にか仲良くなる。Twitter上で言い争っている人がいれば誰かが仲裁に入るのは、公園で子ども同士がけんかしているのを大人が止めるのと同じようなものですよね。誰かのツイートを見ている時は、公園で他の子が遊具で遊んでいるのを見ているような…」

井上さんは、使用するSNSごとの特徴を捉えて見せ方に変化をつけ、他のSNSユーザーとの差別化を図っている。Twitterは拡散を狙ったコンパクトな文章で分かりやすく、Instagramは閲覧した人によりインパクトを与えられるように自撮り写真をメインに投稿している。趣味であるスノーボードの動画も一見するとプライベートな投稿に見えるが、スポーツ番組の出演に繋がることを意識してのものだという。その反面、時にアップされる甥の動画や画像の投稿では、井上さんの素の一面を垣間見ることができる。仕事とプライベートをバランスよく見せることもまた、人気の秘訣となっているのだろう。


ポジティブへと導くネガティブのエンターテインメント化

Twitterでの「ポジティブ返し」をきっかけとして、2013年には初の著書を出版。2015年には、井上さんのポジティブなメッセージが書かれた日めくりカレンダーを発売など、Twitter発のポジティブキャラが完全に定着して、新たな仕事として実を結んだ。「Twitterが仕事に繋がる」という構想は見事的中したのだ。

本人は、ポジティブ返しがヒットしたことについては「半分は自分の構想ですが、半分はラッキーだった」と話す。

「景気不安など、今の時代のネガティブな風潮にマッチしたんじゃないでしょうか。元気がない、不安を抱える人が多い中で『井上のTwitterを見ると元気になる』と感じてくれたんだと思います」

インターネット上の掲示板に書かれている自分への中傷を見て母親が涙したことや、Twitter上で言い争っている仲間を見た井上さんは、本来、インターネットはこういうネガティブなことに利用されるためのものではないと感じた。「だったら自分は真逆のことをしよう」というひらめきが、「ポジティブ返し」のきっかけだという。ネガティブな発言もエンターテインメントのエッセンスを加えて切り替えれば、たとえば、インターネット上で中傷されている人に「こういう対処法もあるんだ」と勇気とテクニックを伝授できるのではないかと思ったのだ。

もちろん、「スーパーポジティブ」と言われる井上さんでも、怒ったり落ち込んだりすることもある。しかし、ネガティブコメントに落ち込んだり怒ったりするよりは、一日の終わりは楽しい気持ちで終わり、一日の始まりも楽しい気持ちで始めたい、「今を楽しく精一杯」生きたいのだという。


ICTによって広がる人間関係が新しい能力を見出すきっかけに

好きな漫画家からTwitterにコメントをもらったり、つながりのなかったタレントが自分のTwitterのフォロワーであることを知ったり、井上さんの人間関係はICTによって広がった部分も大きい。ICTの最大の産物は、「人と人とのつながりやコミュニティの幅の広がりを生み出したこと」だと井上さんは話す。地元で暮らす母親への連絡にもICTを活用しており、母親の誕生日にはメールでメッセージを送っている。電話だと照れ臭い気持ちがあるし手紙だとペンを取るまでに時間がかかるが、ICTのある時代だからこそ親孝行もしやすくなったという。

コミュニケーションの多様化が進む昨今。井上さんは、SNSで気持ちを伝えられるのであれば、それを最大限に生かすことも新しい能力が芽生えるきっかけになるのではないかと考える。

「Twitterにアップできる文字数は140字。今の時代の人は短い文章で気持ちを伝えることに長けていると言われていますよね。ブログがあるから日記の習慣が身に付いた人もいます。こういったICTがもたらす良い面を伸ばしていくことが大切なのではないでしょうか」


進化するICTに遅れを取らず、自ら何かを生み出しいきたい

現在使用しているICT端末は、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンとデスクトップパソコン。特にスマートフォンは生活の中で絶対に手放すことのできない必需品だという。

2016年の3月1日で36歳になった井上さんは、ICTのめまぐるしい発展を自分の目で見て、実際に体験してきた世代。初めて手にしたICTはポケベルで、高校2年の時だった。携帯電話を手にしたのは、大学に入学してから。日々、進化していくICTとそれを駆使する生活に、疲弊することもあるという。しかし、時代の流れをつかむために、いつでも情報をキャッチできる状態にいてビジネスチャンスをつかんでいきたいのだと井上さんは話す。エンターテイナーとしての頭の回転の速さと持ち前のポジティブ思考から生み出される新しい発想で、これからも世間に笑顔と元気を提供してくれるだろう。



8 アンケートは2016年2月、ウェブ調査により実施し、日本に1年以上居住している外国人(特別永住者は除く)を対象とし、先進国出身者205人、先進国以外の出身者331人から回答を得た。アンケート概要は付注5参照。

9 他の年層と比較して若年層のインターネット利用率が高く、またインターネット上の多様なサービスを利用する傾向に影響されている可能性も考えられる。

10 2016年6月2日現在。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る