総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > ICTの貢献の多様性(本節のフレームワーク)
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4節 経済社会に対するICTの多面的な貢献

(1)ICTの貢献の多様性(本節のフレームワーク)

ICTの経済・社会への貢献を、企業側、消費者側に分け、さらにそれぞれについて類型化し、図式化したものが以下の図である(図表1-4-1-1)。

図表1-4-1-1 ICTの貢献の多様性
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究

企業側での貢献は、最終的に前節までみてきた経済成長への影響に収れんするが、企業や組織というミクロレベルで細かく見ていくと様々な側面がある。例えば、伝統的に経済学で考えられている経済性である「規模の経済性」、「範囲の経済性」と対応して、ICTの時代には「ネットワーク効果」、「連携の経済性」が大きな意味を持つ1

また、ビジネスモデルに着目すると、デジタル化とウェブ化によって従来は存在しなかったビジネスモデルが多数生み出され、新企業の誕生や企業の成長につながっている。例えば、無料の財・サービスを活用したビジネスモデルでは直接的内部相互補助、三者間市場、フリーミアム、非貨幣経済の4つの類型がある2が、この中でフリーミアムは特にICTと関連が深い。これは財・サービスの基本版を無料で提供し、高機能版、付加価値版を有料化して利益を得るビジネスモデルであり、無料の基本版の費用は有料版のユーザーが支払う料金で賄うことになる。従来のビジネスモデルでも食品、飲料、化粧品等の無料サンプルを提供することはあったが、提供に実費がかかるので供給量が限られていた。これに対して、ICT財・サービスの場合はデジタル化によって基本版(多くは有料版の簡易版の複製)の費用をほぼゼロにできるので供給量の制限はない。つまり、フリーミアムは複製費用がゼロのICT財・サービスならではのビジネスモデルだと考えられる。

他方、消費者側から見てもいくつかの側面での新しい貢献(便益)がある。これらの貢献は新しい概念であり、また、比較的統計として把握しやすい企業側ではなく消費者側ということもあり、どのようにとらえるかについては様々な議論や試行が行われているところである。本項では、まずICT財・サービスの特徴を整理したうえで、GDPに代わる豊かさへの指標に関する取組事例を概観し、「消費者余剰」、「時間の節約」、「情報資産(レビュー(口コミ)等)」の類型に分けて考察を進める。



1 「規模の経済性」、「範囲の経済性」、「ネットワーク効果」、「連携の経済性」は篠﨑彰彦『情報技術革新の経済効果』第6章で整理されている。

2 この4類型はクリス・アンダーソン『フリー』で述べられたものである。

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