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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第3節 経済成長へのICTの貢献〜定量的・総合的な検証〜

3 検証結果から得られる示唆

企業のICTに対する期待に基づく分析によれば、今後のICT進展による経済貢献の効果は、主として産業全体における生産性の向上によるものである。ICTに係る設備投資や労働力投入による効果はそれと比べると寄与度は小さい結果となったが、IoT・ビッグデータ・AI等、新たなICTによる効果に対する認知が浸透することで企業の意識が変わりこうした投資により積極的になり、さらに当該ICTの利用促進を高める政策的な取り組み等により、設備投資や関連サービスの供給が進展し、押し上げ効果の更なる増大が見込まれると考えられる。

一方で、ICTの発展は多量の労働力を必要としない供給力強化であることから、供給力だけが伸びて需要が伴わない恐れがある。ICTの活用により、供給力のみならず、前節で概観した需要(ECやインバウンドなど)を生み出していくことで(図表1-3-3-1)、バランスのとれた成長(GDPギャップのマイナス幅が拡大しない供給力の強化)が可能になると考えられる(図表1-3-3-2)。

図表1-3-3-1 ICTによる需要創出効果の例
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
図表1-3-3-2 ICTによる経済貢献のイメージ(需要をともなう潜在供給力の強化)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)

2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会

「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下、「2020年東京大会」)は、我が国全体の祭典であるとともに、優れたICTを世界に発信する絶好のチャンスとして期待されている。総務省では、2020年東京大会後の持続的成長も見据えて「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」1を開催し、平成27年7月、「2020年に向けた社会全体のICT化アクションプラン(第1版)」2が取りまとめられた(図表1)。本アクションプランにおいては、無料公衆無線LAN環境の整備、「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳システムの高度化、日本の魅力を海外に発信する放送コンテンツの海外展開、4K・8Kやデジタルサイネージの推進、第5世代移動通信システムの実現、オープンデータ等の活用、サイバーセキュリティ対策といった国民の目に見える形として、「いつまでに、誰が、何を行うのか」を明確化した個別分野のアクションプランとこれらの個別分野に横串をさし、利便性を真に実感できる「都市サービスの高度化」、「高度映像配信」といった二つの分野横断的なアクションプランを策定した。

図表1 2020年に向けた社会全体のICT化 アクションプラン

この分野横断的なアクションプランの1つである、「都市サービスの高度化」では交通系ICカードやスマートフォンとクラウド基盤等を連携し、言語等をはじめとした個人の属性に応じた最適な情報・サービスの提供や平成27年度に策定したガイドラインに基づきデジタルサイネージによる災害情報の一斉配信などにより、増加する訪日外国人をはじめ、誰もが一人歩きできる快適な環境を構築することを目指している(図表2)。平成28年度予算「IoTおもてなしクラウド事業」では、共通クラウド基盤の構築を行い、そこに個人の属性情報を登録し、各サービスIDとひもづけ、交通系ICカードやスマートフォンをトリガーとして、各種サービス事業者とID連携することにより、支払手続きの簡略化、美術館(イベント会場)のチケットレスサービス、レストランでのアレルギー情報、ホテルのコンシェルジュとタクシーの情報連携などの実現に向けた実証事業を行うこととしている。また、政府全体での観光立国推進に向けて、本環境の整備により、訪日外国人が、入国時から滞在・宿泊、買い物、観光、出国までストレスなく快適に過ごすことが可能となり、インバウンド拡大による経済活性化に寄与することも期待される。

図表2 都市サービスの高度化

もう一つの分野横断的なアクションプランである、高度な映像配信サービスについては、高速大容量での映像配信が可能となる通信ネットワークの進展により、4K・8Kや高臨場感映像技術等を活用したパブリックビューイングやライブビューイングなど映像配信サービス市場の活性化が期待されており、2020年に向けて、ショーケースとして世界へのアピールや新たな映像配信市場の創出に向けて取り組んでいく。

これら二つの取組については、民間事業者等において推進体制が整備されつつあり、総務省としてもオールジャパン体制での取組を進めていく。

総務省においては、平成28年度には、アクションプランの実現に向けた事業等に取り組んでいくとともに、経済成長に向けて引き続き検討を行い、新サービスの創出等によるアクションプランの内容を社会実装化していくことで、社会全体のICT化の実現に向けて取り組んでいく。



1 2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会:
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/2020_ict_kondankai/index.html別ウィンドウで開きます

2 2020年に向けた社会全体のICT化アクションプラン(第1版):
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin01_02000158.html別ウィンドウで開きます

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