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第2部 基本データと政策動向
第8節 ICT国際戦略の推進

(2)ICT海外展開のための環境整備/円滑な情報流通の推進のための環境整備

ア サイバー空間の国際的なルールに関する議論への対応
(ア)サイバー空間の国際ルールづくり

いわゆる「アラブの春」に代表されるような民主化運動において、インターネットやソーシャルメディアは大きな役割を果たしたと言われている。そのため、一部の新興国・途上国においては、インターネットへの規制や政府の管理を強化する動きが強まっている一方、欧米諸国の多くは、首脳や閣僚が主導して情報の自由な流通やインターネットのオープン性等の基本理念を表明しており、2011年(平成23年)以降、インターネットに関わる様々な国際会合が開催され、サイバー空間の国際ルールの在り方に関する議論が活発に行われている。

2012年(平成24年)に開催された世界国際電気通信会議(WCIT-12)では、インターネットへの国やITUの関与の在り方や、セキュリティや迷惑メール対策の国際ルール化が主な争点となったが、国際的な合意の形成にまでは至らず、最終的には途上国を中心とした支持により投票を経て国際電気通信規則(ITR)の改正が採択された(我が国を含む、欧米諸国等55か国が署名せず)。

総務省は、サイバー空間の国際的なルールづくりに関し、①民主主義を支えるだけでなく、イノベーションの源泉として経済成長のエンジンとなる情報の自由な流通に最大限配慮すること、②サイバーセキュリティを十分に確保するためには、実際にインターネットを用いて活動しており、ネットワークを管理している民間企業や市民社会など民間部門の参画(マルチステークホルダーの枠組)が不可欠であること、の2点を重視し、二国間及び多国間会合における議論に積極的に参加している2

(イ)サイバーセキュリティに関する二国間対話

サイバーセキュリティに関する議論については、政府横断的な取組(ホールガバメントアプローチ)が行われており、日米間では、2013年(平成25年)に第1回を開催した「日米サイバー対話」の第3回会合が2015年(平成27年)7月に開催され、重要インフラ防護、国際場裡における協力等、サイバーに関する幅広い日米協力について議論されたほか、2016年(平成28年)2月に開催のインターネットエコノミーに関する「日米政策協力対話(第7回局長級会合)」の場でも、産業界や他の関係者と共同でサイバーセキュリティ上の課題に取り組むことが不可欠であるとの認識を共有するなど、議論が行われた。また、日仏間では、2014年(平成26年)12月に第1回を開催した「日仏サイバー協議」の第2回会合が、2016年(平成28年)1月に開催され、サイバーに関する幅広い日仏協力について議論された。

また、日EU間では、2014年(平成26年)10月に第1回となる「日EUサイバー対話」を開催し、開かれて安全なサイバー空間保護の重要性、既存の国際法のサイバー空間への適用等について議論がなされたほか、2015年(平成27年)3月に開催した「日EU ICT政策対話」の場でも、日欧間のセキュリティ分野での研究開発協力に関する情報共有や、欧州のネットワーク・情報セキュリティ指令案を巡る動向等について意見交換が行われた。

イ ICT分野における貿易自由化の推進

世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)を中心とする多角的自由貿易体制を補完し、2国間の経済連携を推進するとの観点から、我が国は経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)や自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の締結に積極的に取り組んでいる。2016年(平成28年)3月末現在で、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア及びモンゴルとの間でEPAを締結していることに加え、2016年(平成28年)2月には、環太平洋パートナーシップ(TPP:Trans Pacific Partnership)協定が署名されるに至った。また、日中韓FTA及びRCEP(東アジア地域包括的経済連携)といった広域経済連携交渉を行うとともに、カナダ、コロンビア、EU及びトルコとの間でEPA締結に向けた交渉を行っている(韓国とは交渉中断中、湾岸協力理事会(GCC:Cooperation Council for the Arab States of the Gulf)諸国とは交渉延期中)。日中韓FTA、RCEP、日EU・EPA交渉は2013年(平成25年)から交渉開始し、RCEPについては2016年(平成28年)内に交渉を終えることが目指されている。いずれのEPA交渉においても、電気通信分野については、WTO水準以上の自由化約束を達成すべく、外資規制の撤廃・緩和等の要求を行うほか、相互接続ルール等の競争促進的な規律の整備に係る交渉や、締結国間での協力に関する協議も行っている。

ウ 戦略的国際標準化の推進

情報通信分野の国際標準化は、規格の共通化を図ることで世界的な市場の創出につながる重要な政策課題であり、国際標準の策定において戦略的にイニシアティブを確保することが、国際競争力強化の観点から極めて重要となっている。

情報通信分野では、技術開発のスピードの加速化や製品・サービスの高度化が急速に進展しており、国際標準化活動においても、標準策定に要する時間が比較的短い民間主体のフォーラム等で標準が策定3され、そこで策定された標準を公的な標準化機関で追認4する例が見られるようになっている。

総務省は、「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日閣議決定)」等の関連する政府決定に基づく標準化の重点分野(スマートグリッド、デジタルサイネージ、次世代ブラウザ、フォトニックネットワーク、新世代ネットワーク(ネットワーク仮想化、M2M/センサーネットワーク)等)を中心に、ITU等におけるデジュール標準の国際標準化活動を推進するとともに、近年その役割が拡大しているフォーラム標準の活動についても戦略的に支援している。



2 サイバー空間の在り方に関する国際議論の動向:http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/cyberspace_rule/index.html別ウィンドウで開きます

3 フォーラム標準:複数の企業や大学等が集まり、これらの関係者間の合意により策定された標準

4 デジュール標準:国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)等の公的な標準化機関によって策定された標準

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