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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第3節 公共分野における先端的ICT利活用事例

2 教育分野

(1)スタディサプリ

ア スタディサプリのサービス概要

スタディサプリは、株式会社リクルートマーケティングパートナーズが主に高校生を対象に提供している、月額980円でオンライン授業等5を受けることができるサービスである(図表3-3-2-1)。

図表3-3-2-1 スタディサプリのサービスイメージ
(出典)株式会社リクルートマーケティングパートナーズ提供資料

同社は2011年10月に高校生向けオンライン学習サービス「受験サプリ」をリリースして以来、小中学生向け「勉強サプリ」、「英語サプリ」など、それぞれの学習領域に特化するオンライン学習サービスを提供してきた。2016年2月には、小中高校生の多様な「学び」を総合的にサポートすることを明確にするため、各サービスのブランド名を「スタディサプリ」に統一にした(図表3-3-2-2)。2016年3月時点での累計会員数は約25万人となっている。

図表3-3-2-2 スタディサプリへのブランド統合
(出典)株式会社リクルートマーケティングパートナーズプレスリリース6
イ スマートフォン利用ならではの特徴

スタディサプリの特徴、特にスマートフォン利用をターゲットとしたサービスならではの特徴として、第一に、月980円という価格で、トップレベルの講師による講義をいつでもどこでも何回でも受けられることが挙げられる。

たとえば、「スタディサプリ高校講座・大学受験講座(旧・受験サプリ)」の場合、講義は5教科13科目3レベル7別に合計3,000以上提供されている。後述のとおりスタディサプリは高校でも利用されているが、クラス内で生徒の理解にばらつきがある場合、スタディサプリを活用して生徒一人一人に合わせたサポートを行っている例8もある。マクロ的に見ても所得や地域から生じる教育環境の格差の是正にも資すると考えられる。

第二に、動画ならではの機能を活用し、利用者の意見を取り入れサービス改善につなげていることが挙げられる。具体的には、動画ごとに横軸に再生時間、縦軸に視聴し続けている人の割合をとり、途中で視聴を止める人が多い動画では要因を分析したり、また、チャプターごとに利用者がフリーコメントをつけられる機能を活かし、例えば「難しくわかりづらい」「早口」といったコメントが寄せられ必要と判断すれば授業を撮り直したり、講師にフィードバックし授業の改善につなげるなどしている。

ウ データの利活用が価値を生む9

スタディサプリ高校講座・大学受験講座では、講義動画全3,000時間分の各チャプターと、演習問題の各問題と、到達度テストの各問題(図表3-3-2-3)とを対応付けている。これにより、例えば、生徒が到達度テストである問題を間違えた場合、その問題の単元に対応する授業の動画や演習問題を自動的に提示し、生徒がつまづきを克服しやすくしている。生徒が以前間違えた問題を後日できるようになったか、デジタルダッシュボードにて全体の中でどこでつまずいたかなどを確認することも可能である。高校単位で利用している場合には教師用に追加料金なしで学習管理システム「スタディサプリ for Teachers」も提供しており、教師が生徒一人一人の苦手克服の状況をモニタリングできるようにしている。

図表3-3-2-3 到達度テストのイメージ
(出典)株式会社リクルートマーケティングパートナーズ提供資料
エ スタディサプリの広がり①大学受験向けから多様な学びへ

スタディサプリ高校講座・大学受験講座は、もともと高校生が個人で大学受験用に利用することを想定して始められたサービスであるが、高校側からの要望により高校の授業の予習や復習としても使われるようになり、2016年3月現在全国約5,000の高校のうち約700校で利用されている。

オ スタディサプリの広がり②海外展開

リクルートマーケティングパートナーズは2015年にQuipper社を子会社化したことで、海外にも事業を展開している。Quipper社は2010年に設立され、2014年には小学校中学校高校の教師向けに、宿題や授業中の課題に関わるあらゆるプロセスをオンライン化するツールであるQuipper Schoolの提供を開始しており、2015年12月の時点で、世界9か国で20万人の教師、300万人の生徒が利用している。コンテンツは、国ごとに現地化している。

図表3-3-2-4 Quipper Schoolのサービスイメージ①
(出典)株式会社リクルートマーケティングパートナーズ提供資料
図表3-3-2-5 Quipper Schoolのサービスイメージ②(生徒の学習状況をリアルタイムで把握可能)
(出典)株式会社リクルートマーケティングパートナーズ提供資料

ツール導入前までは教師が、問題の作成、用紙の印刷、生徒への配布・回収、個別の丸付け、点数の管理などを紙で行っていたが、これらをオンライン化することで、教師は宿題や課題を瞬時に配布・回収できるようになったほか、オンラインで提出を促したり、生徒の回答を授業に反映したり、親を巻き込むこともできるようになった。新興国の中には、人口増加に伴い学生の急増と教師の不足への対応が課題となっているところもあるが、Quipper Schoolは課題の解決や新たな価値の創出につながるとして、教師の間でFacebook等のソーシャルメディアを通じて自然に利用が広がっているとリクルートマーケティングパートナーズは分析している。

Quipper Schoolが新興国で利用されるようになった背景の1つとして、新興国においてもスマートフォンが急速に普及していることが挙げられる。新興国では先進国と比較して相対的に経済成長率が高く、また既存のサービス等が少ない分、安価かつ革新的なサービスが急速に普及する可能性が高いと考えられるが、今後、EdTech(教育とテクノロジーを掛け合わせた造語)の普及が社会にもたらすインパクトを展望するうえでも、Quipper Schoolは示唆的な事例と考えられる。



5 演習問題や到達度テストも追加料金なしで受講可能。

6 http://www.recruit-mp.co.jp/news/release/2016/0225_2893.html別ウィンドウで開きます

7 レベルには、偏差値40〜のスタンダード、偏差値50〜のハイレベル、偏差値65〜のトップレベルの3つを設定

8 例えば、理解が進んでいる生徒はスタディサプリを用いて次の単元又は高いレベルの内容を学び、わからないところがある生徒は中学総復習コンテンツも使ってわからないところに戻って勉強するといった使い方がある。

9 2016年3月現在、同社ではシンプルながらも利用者にとってもわかりやすいデータ分析を中心にサービスを展開しているが、やや高度な分析も試行的に行っている。一つは東京大学松尾研究室と共同で行っているもので、受験サプリで数学の講義を受講した生徒を対象に、ある単元でつまづき以前の単元に戻る行動データを分析することで生徒に理解しやすい学びの順序を提示しようとするもの。もう一つは第一志望の大学に合格した人や受験サプリのアクセス回数又は受講回数が多い人の利用履歴等を基に、会員のパターン分類ごとの受講しやすい時間帯を推定し、受講につながるよう曜日や時間帯を変えながら受講を促すメッセージを出すことも検討している。

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