総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > 非貨幣情報をシグナルとした新たな経済活動の可能性
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4節 経済社会に対するICTの多面的な貢献

(3)非貨幣情報をシグナルとした新たな経済活動の可能性

ミクロ経済学が示唆するのはいくつかの条件を満たせば価格をシグナルとした市場取引によって資源が最適に配分されるということである。

前述したレビュー等の評判や信頼の重要性をあわせて考えると、価格のみならず評判や信頼、さらには利他性といった非貨幣情報も資源の最適配分に寄与するといえる。ICTによって実現したこうした資源配分の例として、ネットオークションや、近年ではシェアリング・エコノミーといった消費者と消費者の間で財・サービスを取引するいわゆるC2Cモデルが挙げられる。

これらのC2Cモデルで注目すべき点は、事業者(プロ)のみならず、消費者個人(アマチュア)でも財・サービスの供給者になりうる点、サービス提供者も想定していなかったような新たな価値を個人が生み出しうる点である。例えば、前述のAirbnbでは、2008年の創業時は、割安に泊まれる場所の情報の提供が主であったが、近年、ゲストのAirbnbを使う理由が「地元で暮らしている人のように旅をしたいから」が最も多くなっている点、プラットフォームとして宿泊場所の好みのみならず、エリア、体験もマッチングできる機能を充実させたりホストによる地元のおすすめ情報を充実させたりしている点もその証左と考えられる。なお、海外では個人が主たる住居を貸し出すホームシェアリングについて新たなルールを整備する動きがあり、年間の宿泊数や一度に泊まれる人数に一定の制約を設けたうえで主たる住居以外を貸し出す場合や事業目的の場合よりも簡素なルールを設ける傾向にある。C2Cモデルの経済活動の拡大や個人による新たな価値創出を加速させるうえでも示唆的な動向と考えられる。

図表1-4-3-3 海外におけるホームシェアリングのルール整備例
(出典)2016年3月14日規制改革会議資料(Airbnb Japan提出資料)13

また、前述のスペースマーケットの事例では、当初は企業の利用が多かったが、サービスを始めてみると、想定以上に個人のパーティーのためといった利用ニーズも存在していたことが明らかになった。C2Cモデルの経済活動は供給側でも利用側でも事業者と消費者に幅広く広がりがあるといえるだろう。

以上のようにICTによってリアルタイムに様々な情報が生成され共有されるようになったことで、価格の他にこれらさまざまな情報がシグナルとして作用し、社会的により最適に近い、個人の価値観や嗜好の多様性も反映した資源配分がなされつつある。こうした点でもICTの評判、信頼、利他性という非貨幣的な側面の重要性が増していると考えられる。



13 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/discussion/160314/gidai/item5.pdfPDF

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