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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第3節 公共分野における先端的ICT利活用事例

(1)公共交通オープンデータ協議会

ア 公共交通オープンデータ協議会の概要

公共交通オープンデータ協議会は首都圏の公共交通事業者とICT事業者等が集まって交通関係のオープンデータの実用化を推進するために2015年9月に設立された産学官共同の協議会である。協議会には45の事業者等が参画14しており、オブザーバとして総務省、国土交通省、東京都が加わっている(図表3-3-3-1)。対象となる交通データとしては、鉄道、バス、飛行機等の運行に関する情報や、駅・停留所・空港といった交通ターミナルの施設情報が挙げられている。

図表3-3-3-1 公共交通オープンデータ協議会の構成員
(出典)総務省「IoT時代における新たなICTへの各国ユーザーの意識の分析等に関する調査研究」(平成28年)
「図表3-3-3-1 公共交通オープンデータ協議会の構成員」のExcelはこちらEXCEL

協議会では「公共交通オープンデータセンター」を設置し、各交通機関別の運行データを一括して収集して、標準化した上で提供することを構想している。これによりICTベンダー等のサービス事業者は複数の交通事業者のデータをワンストップで取得して、サービス提供することができるようになる(図表3-3-3-2)。

図表3-3-3-2 公共交通オープンデータの仕組み
(出典)公共交通オープンデータ協議会提供資料

この目標に向けて、協議会の構成員であるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所が公共交通データプラットフォームを開発して実証実験に提供している。協議会ではそれを活用して数回の実証実験を実施している。

イ スマートフォンならではの特徴

協議会ではこのようなオープンデータの活用の一例としてスマートフォン向けのアプリ「ドコシル」を開発して実証実験を行った。鉄道やバスなどの運行状況や位置をスマートフォンで閲覧でき、さらにtwitterアカウントでつぶやく「ドコシルなう機能」も搭載されている。さらに、災害時には最寄りの避難所を表示する機能も搭載されている(図表3-3-3-3)。

図表3-3-3-3 ドコシルで提供されるサービス例
(出典)公共交通オープンデータ協議会提供資料

また、協議会では駅や空港などの公共交通施設における情報提供を行うアプリ「ココシルターミナル」も開発している。施設構内の案内情報の他、窓口の混雑状況などをリアルタイムで提供しているのが特徴である(図表3-3-3-4)。

図表3-3-3-4 ココシルターミナルで提供されるサービス例
(出典)公共交通オープンデータ協議会提供資料
ウ データの利活用が価値を生む

同協議会では、2016年5月16〜5月31日、訪日外国人客を対象に情報提供・移動案内のため、成田国際空港において公共交通オープンデータを活用した実証実験を行った。スマートフォンアプリの「ココシル成田空港」によって、成田空港の主要交通手段、空港の発着便、空港内施設に関する情報を多言語で提供した。ココシル成田空港は、日本語、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語に対応している(図表3-3-3-5)。

図表3-3-3-5 多言語による情報提供(ココシル成田空港)
(出典)公共交通オープンデータ協議会提供資料

その他にも、ビーコンを活用した空港施設内の移動案内や東京の主要観光地情報の提供の実証も行われた。

エ 海外の公共交通オープンデータとの比較

海外でも公共交通オープンデータの提供は進んでいる。例えば、ロンドン市では2007年から運行情報等のオープン化に取り組んでおり、2012年のロンドンオリンピックの際には専用の交通データポータルサイト「full Games transport data porta」を公開した。それに対するICT事業の利用登録者数は4,000を超えたとのことである。

このような取り組みにより年間1.5〜5.8百万ポンド(26〜99億円)相当の時間短縮効果との試算がされており、効果を踏まえて、さらに取り組み内容が充実するという好循環が実現している。また、個人がオープンデータを活用してアプリを公開している事例も出てきており、例えば地下鉄の運行情報を可視化している「Live train map for the London Underground」は広く知られている(図表3-3-3-6)。

図表3-3-3-6 Live train map for the London Underground
(出典)総務省「IoT時代における新たなICTへの各国ユーザーの意識の分析等に関する調査研究」(平成28年)

首都圏は諸外国に比べて非常に多くの交通事業者がサービスを提供しており、共通での取り組みを進めるには時間がかかる面があるが、ロンドンのように効果を明確化して社会で共有することで、関係者の取り組みがより一層促進されることが期待される。



14 2016年4月20日現在

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