総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > シェアリング・エコノミーが注目されている背景
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第1節 IoT時代の新たなサービス

2 シェアリング・エコノミー

(1)シェアリング・エコノミーが注目されている背景

シェアリング・エコノミーとは個人が保有する遊休資産をインターネットを介して他者も利用できるサービスである。代表的なサービスとして、住宅(戸建住宅及び共同住宅)を活用した宿泊サービスを提供する「民泊サービス」が挙げられる。この他にも、一般のドライバーの自家用車に乗って目的地まで移動できるサービス、個人の所有するモノを利用するサービスや、個人の持つ専門的なスキルを空き時間に提供するサービス、空いている駐車スペースを利用するサービス等、様々なサービスが登場している。

シェアリング・エコノミーには、貸主にとっては遊休資産を活用することで収入を得る、借主にとっては資産を所有することなく利用できるというメリットがあると考えられる。また、マクロ的に見ても、個人の多様な需要への対応、社会的課題の解決等につながることが期待される。一方で、安全の確保、利用者の保護等の観点から課題も存在する。

シェアリング・エコノミーが可能となった背景としては、インターネットの普及により個人間の取引費用が下がったこと、とりわけスマートフォンの普及によりこうしたサービスを利用する場所や時間の制約が緩和されたことのほか、シェアリング・エコノミーのプラットフォーム6とソーシャルメディアとを連携させることで個人間のニーズのマッチングや信頼性の担保強化が可能となっていることが挙げられる。

シェアリング・エコノミーはシリコンバレーが起点となり、海外の一部の国を中心としてグローバルに利用が進展し、また市場規模が拡大してきている。PwCの実施した調査では、シェアリング・エコノミーの各国合計の市場規模は、2013年に約150億ドルであったが、2025年までに約3,350億ドルにまで拡大すると予測されている(図表3-1-2-1)。

図表3-1-2-1 シェアリング・エコノミー各国合計市場規模の予測
(出典)PwC「The sharing economy - sizing the revenue opportunity」

我が国においても、今後の市場拡大が予想されている。矢野経済研究所の推計によると、シェアリング・エコノミーの国内市場規模は2014年度に約233億円であったが、2018年度までに462億円まで拡大すると予測されている(図表3-1-2-2)。

図表3-1-2-2 シェアリング・エコノミー国内市場規模の予測
(出典)矢野経済研究所「シェアリング・エコノミー(共有経済)市場に関する調査結果2015」
「図表3-1-2-2 シェアリング・エコノミー国内市場規模の予測」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

民泊サービスを例にシェアリング・エコノミーサービスの我が国における代表的な政策動向について見ることとする。

「民泊サービス」については、海外における事例の増加や市場規模の拡大に加え、我が国においても急増する訪日外国人のニーズや大都市部での宿泊需給への対応及び地域活性化の観点から活用を図ることが求められている一方、旅館業法等既存の法令との関係性の整理7、感染症まん延防止やテロ防止などの適正な管理、地域住民等とのトラブル防止に留意したルール作りが求められている。

規制改革会議の関連では、2015年6月、規制改革会議による「第3次答申」を受け、「規制改革実施計画」において、民泊サービスについて幅広い観点から検討して平成28年(2016年)に結論を得ることが閣議決定された。2015年10月以降、規制改革会議やWGにおいて関係省庁、有識者、事業者及び関係業界からヒアリングを実施し関連規制の検討を行ったほか、2016年3月には民泊サービスに関する公開ディスカッションを実施した。

国家戦略特区の関連では、2013年(平成25年)に成立した国家戦略特別区域法において、区域計画8に特定事業として国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(「特区民泊」9)を定めた区域においては旅館業法の適用を受けずに、民泊サービスを反復継続して有償で行う、すなわち事業として行うことが可能となった10。2015年10月に開催された国家戦略特区諮問会議において東京圏の区域計画が、2016年4月に開催された国家戦略特区諮問会議において関西圏の区域計画が認定され、また、東京都大田区や大阪府において、関係の条例が施行された結果、2016年から実際に同法の規定に基づく民泊サービスが提供され始めた。

国家戦略特区のスキーム以外においても、適正な管理、安全性を確保しつつ、その活用が図られるようにしようとする動きもみられる。前述の閣議決定を受け、厚生労働省と観光庁は、2015年11月から「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」11を開催しており、2016年3月に中間整理がとりまとめられ、2016年6月に報告書がとりまとめられた。諸外国においては、年間の宿泊日数に上限を設ける、主たる住居の部屋に限るなどの条件を設けたうえで、個人が民泊サービスを行うことのできるルールを整備する事例もあり、諸外国の例を参考に我が国の実情にあったルール整備がなされることが期待される12

本項では、シェアリング・エコノミーのうち、(1)民泊サービス、(2)その他シェアリング・エコノミーの類型について、消費者にも比較的身近と考えられる事例やアンケート調査の結果を基に、意義や社会へ与えるインパクト等の考察を行う。



6 貸し手が情報を掲載し、借り手が当該情報にアクセスできるシステムを提供している者を「シェアリング・エコノミー」のプラットフォームと呼ぶことがある。

7 空き室を旅行者に対して仲介する行為自体は、旅館業法の規制対象ではないが、こうしたサイトを通じて、反復継続して有償で部屋を提供する者は、旅館業法の許可が必要とされる。http://www.mlit.go.jp/common/001111882.pdfPDF

8 国家戦略特別区域は、東京圏、関西圏、新潟市、養父市、福岡市・北九州市、沖縄県、仙北市、仙台市、愛知県、広島県・今治市の計10か所となっている(2016年4月現在)

9 国家戦略特別区域法第13条参照

10 事業として特区民泊を行うためには国家戦略特別区域会議が区域計画を定めたうえで、内閣総理大臣の認定を受け、区域内の自治体が対応した条例を定め、特区民泊を事業として行う者が自治体あてに申請を行う必要がある。

11 http://www.mlit.go.jp/kankocho/page06_000093.html別ウィンドウで開きます

12 「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)には、シェアリング・エコノミーに関しては、「(略)健全な発展に向け協議会を立ち上げ、関係者の意見も踏まえつつ、本年秋を目途に必要な措置を取りまとめる。その際、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネス創出を促進する観点から、サービス等の提供者と利用者の相互評価の仕組みや民間団体等による自主的なルール整備による対応等を踏まえ、必要に応じて既存法令との関係整理等を検討する。」と、「民泊サービス」に関しては、「規制改革実施計画に沿って、「家主居住型」と「家主不在型」の類型別に規制体系を構築するべく「民泊サービスのあり方に関する検討会」の取りまとめを踏まえ早急に必要な法整備に取り組む旨記述されている。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る