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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第1節 少子高齢化等我が国が抱える課題の解決とICT

(2)新たなICTがもたらす社会経済へのインパクト

「モノのインターネット(IoT)」「ビッグデータ(BD)」「人工知能(AI)」の性質を踏まえると、これらを一体的に捉えることで、その真価と必然性が見えてくる。すなわち、IoTで様々なデータを収集して「現状の見える化」を図り、各種データを多面的かつ時系列で蓄積(ビッグデータ化)し、これらの膨大なデータについて人工知能(AI)を活用しながら処理・分析等を行うことで将来を予測する、という関係性が成り立つ。例えば、人工知能(AI)をIoTと組み合わせることで、収集したデータを知識に変え、サイバー空間から現実世界にフィードバックし、さらにそこからデータを得て学習するようなサイクルを確立することもできる。さらに、ロボットなどの物理的手段と組み合わせることで、現実世界における効率化、高速化、安全・安心の確保などを実現したり、現実世界に起こりうる将来を予測したりすることも可能になると考えられる。本章では、こうした一体的な捉え方を「広義のIoT」と称する(図表1-1-2-3)。

図表1-1-2-3 IoT・ビッグデータ・AIが創造する新たな価値
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)

広義のIoTを活用することで、新たな価値を創造することが可能となる。具体的には企業の業務効率化(プロセス・イノベーション)、潜在需要を喚起する新商品・サービスの開発・提供(プロダクト・イノベーション)、商品・サービスのデザイン・販売(マーケティングイノベーション)、業務慣行・組織編成(組織イノベーション)、さらには社会的課題への対応(ソーシャル・イノベーション)といった様々なイノベーション形態の実現も可能となる。例えば、小売分野での需要予測、交通分野での自動運転、医療分野での予防医療やオーダーメイド治療、都市経営分野での犯罪・事故・災害抑制など、産業の垣根を越えた異業種による連携も含めて、従来の企業活動を変革する可能性を秘めており、さまざまな分野への応用が期待される。また、企業の経済活動や産業の生産性向上のみならず、地域や社会の存続・発展に資する社会経済インフラを構築していくことも可能となり、我が国社会経済の持続的成長へ寄与していくことが考えられる。

あらためて本節で浮き彫りにした我が国経済における課題に対するICTの貢献について整理してみる。まず、供給面では基本的には労働投入を増やさずに、業務効率化や財・サービスの高付加価値等が期待できるため、企業活動等の生産性を高めることができる。また、自動化などが進展することにより、労働力をより生産性の高い業務へ集中することができ、効率的に労働の質を高めていくことが可能になる。他方の需要面では、プロダクトイノベーションやマーケティングイノベーションへの貢献から、革新的なサービスやアプリケーションの創出や海外需要の取り込みにも貢献するであろう。

これらは、新たなICTがもたらす貢献の一側面に過ぎない。次節では、広義のIoTを含め、ICT全般による経済貢献について具体的に整理する。

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