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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4章まとめ

第4章まとめ

以上、人工知能(AI)の現状と未来を整理した上で、人工知能(AI)と雇用の関係や今後人工知能(AI)の導入・実用化に向けてどのような対応が求められるかを展望した。

有識者へのインタビューなどから、今後私たちの生活や仕事に人工知能(AI)が広く普及していくことは確実であり、人工知能(AI)に関わる取組を怠ってしまう方が国の成長を妨げ、結果として雇用への悪影響を及ぼす可能性があることが示唆された。人工知能(AI)の利活用を促進するためには、人工知能(AI)に対する正しい理解の浸透、人工知能(AI)の実用化に従事する優秀な人材の育成、人工知能(AI)の導入・活用を意思決定できる経営者の増加、人工知能(AI)という手段を使って何かを実現したいという意欲や主体性、生活や仕事の中に人工知能(AI)を取り込んで良い使い方を見出す創造性の習得など、人工知能(AI)に対して積極的に関わる姿勢が必要であることが明らかとなった。しかし、日米就労者の意識比較では、まだまだ日本の就労者の方が人工知能(AI)の導入に対して実感に乏しいのが現実である。

強い問題意識のもと、政府や一部の企業による人工知能(AI)への取組は急速な広がりを見せており、官民一体となったさらなる取組が期待される。

「AIネットワーク化検討会議」

今日の世界では、AIを構成要素とする情報通信ネットワークシステムであるAIネットワークシステム等に牽引された第四次産業革命が進展しつつある。AIネットワークシステムは、従来にないスピードと規模で、既存の産業構造・就業構造の変化を促すと同時に、新たな産業を創出することにより、多種多様な付加価値を産み出し、従来の経済・産業の在り方を根本的に変革する起爆力を有している。AIネットワークシステムが変革するのは経済・産業の在り方だけにはとどまらない。AIネットワークシステムは、社会の在り方を根本的に変革し、さらには我々人間の在り方すらも変革する可能性を秘めている。

このような状況を背景として、総務省情報通信政策研究所では、インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会「報告書2015」(平成27年6月)1の提言を踏まえ、平成28年2月から「AIネットワーク化検討会議」(座長:須藤修 東京大学大学院情報学環教授)2を開催し、同年4月に中間報告書「AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS:ウインズ)―第四次産業革命を超えた社会に向けて―」を公表した3

中間報告書では、「AIネットワーク化」(AIネットワークシステム(AIを構成要素とする情報通信ネットワークシステムをいう。)の構築及びAI相互間の連携等AIネットワークシステムの高度化をいう。)(図表1)に関し、AIネットワーク化の進展を通じて目指すべき社会像及びその基本理念を示すとともに、AIネットワーク化が社会・経済にもたらす影響及びリスクについて検討した上で、当面の課題を提示している。

図表1 「AIネットワーク化」の進展段階

具体的には、「情報」・「知識」(知)に着目する社会像たる「高度情報通信ネットワーク社会」、「知識社会」の次に目指すべき社会像として、「智慧」(智)に着目する社会像として「智連社会」(Wisdom Network Society:(WINS:ウインズ))(図表2)を構想する4とともに、その基本理念として、すべての人々による恵沢の享受、人間の尊厳と個人の自律、イノベーティブな研究開発と公正な競争、制御可能性と透明性の確保等を掲げている。

図表2 智連社会(WINS:ウインズ)

当面の課題としては、透明性や制御可能性の確保等を求める研究開発の原則の策定(図表3)、利用者保護の在り方、社会の基本ルールの在り方等を掲げた上で、AIネットワーク化をめぐる諸課題に関し、継続的に議論する国際的な場の形成及び国際的な場での議論に向けた国内での検討体制の整備を提言している。

図表3 AIの研究開発の原則の策定5

この点に関し、平成28年4月29日から30日にかけて開催されたG7香川・高松情報通信大臣会合において、我が国の高市総務大臣から、OECD等国際機関の協力も得て、AIネットワーク化が社会・経済に与える影響、AIの開発原則の策定等AIネットワーク化をめぐる社会的・経済的・倫理的課題に関し、関係ステークホルダーの参画を得て国際的な議論を進めることが提案され、各国から賛同が得られた。

検討会議は、中間報告書の公表後も検討を継続し、平成28年6月に報告書2016「AIネットワーク化の影響とリスク―智連社会(WINS:ウインズ)の実現に向けた課題―」を公表した6

「報告書2016」では、中間報告書の公表後のAIネットワーク化をめぐる国内外の動向を概観した上で、AIネットワーク化の進展が産業構造や雇用にもたらす影響を踏まえつつ、「智連社会」における人間像について検討を行うとともに、AIネットワーク化の進展・影響の評価指標及び豊かさや幸せに関する評価指標の検討を行ったほか、ロボットを題材としたリスク・シナリオ分析を試行した上で、これらの検討を踏まえて今後の課題を整理した。

「智連社会」における人間像については、AIネットワーク化の進展が産業構造や雇用にもたらす影響を概観した上で、価値観の多様化の見地から、人間の生き方の多様化及びこれを可能とする資金の確保の在り方等に関し議論するとともに、仕事で求められる能力の変化の見地から、AIネットワーク化の進展に伴い必要となる能力開発・技能習得に向けた教育・訓練の在り方等に関し議論した。加えて、人間とロボット等が共存する社会を視野に入れ、人間の存在や生死に関する根本問題の検討の必要性も指摘している。その上で、人間像を考えるに当たっては、人間がAIネットワークシステムに何を期待し、AIネットワークシステムを利活用してどのような社会を実現したいのか等について検討する必要があると提言している。

豊かさや幸せに関する評価指標については、GDP等の経済統計だけではなく、非金銭的・非市場的な要素を考慮に入れた評価指標の設定に向けた検討が望まれるとするとともに、豊かさや幸せの感じ方は個人の価値観に大きく左右され得るため、主観的な評価と客観的な評価とのバランスを考慮することが望まれると提言している。

リスク・シナリオ分析については、リスク・シナリオ分析の枠組みとして、リスクの類型・種類、リスクの内容、リスクへの対処(リスク評価(発生時期、生起確率、被害の規模、当該リスクから二次的(波及的)に発生するリスク)、リスク管理、リスク・コミュニケーション)を掲げた上で、ロボットを利活用する具体的な場面を想定したリスク・シナリオの具体例を作成し、シナリオに即してリスク対処の在り方を検討することを試行した。その上で、今後、AIネットワーク化の進展等に応じて、リスク・シナリオの作成と見直しを継続的に行い、リスク・シナリオの共有を図ることを通じて、シナリオに基づくリスク対処を進めていくことが求められると提言している。

今後の課題としては、中間報告書において掲げられた課題に加えて、開発原則そのものに開発原則の内容を敷衍する説明を加えた指針(「AI開発ガイドライン」(仮称))の策定に向けて国内外の議論を推進すべきことを提言したほか、「AIネットワーク化の進展に向けた協調の円滑化」、「経済発展・イノベーションの促進に向けた課題」、「AIネットワーク化に対応した就労環境の整備」が掲げられるとともに、「人間の在り方に関する検討」、「AIネットワーク化の進展に伴う影響の評価指標及び豊かさや幸せに関する評価指標の設定」、「リスクに関するシナリオの作成・共有」についても継続的な取組が必要であると提言している。

「報告書2016」で掲げられている課題は、多岐にわたっている。これらの課題については、「報告書2016」が指摘するように、専門家や情報通信当局はもちろんのこと、産学民官の幅広い分野から関係ステークホルダーの参画を得て、国内外において検討を進めていくことが重要であり、今後、緊急性、重要性等を勘案してプライオリティをつけて、継続的かつ多面的に検討を進めていくべきものと考えられる。

〜SNSなどのICTを活用してクリエイティブに活動する人々〜

メロウ倶楽部 副会長 若宮正子さん

パソコンとの出合いは定年後の60歳

「エクセルアート」の創始者であり、インターネット上で活動するシニアの全国団体「メロウ倶楽部」の副会長を務める若宮正子さん。自らを「ICTの伝道師」と話す若宮さんのICTとの出合いは、勤めていた銀行を定年退職した60歳。もともと人との交流が好きだった若宮さんだが、母の介護であまり外出できず、一日誰とも会話をしないという日も少なくなかった。そんな時に「パソコンがあると、家の中にいても世界中の人と話ができる」という雑誌の記事を読み、当時(1995年)は高額だったパソコンを一念発起で購入した。在職中もパソコンに触れる機会はあったが、ほとんど初心者の状態だったという。独習で3ヵ月をかけてインターネットの接続に成功し、メロウ倶楽部の前身である「エフメロウ」に入会した。パソコンの購入と、インターネット上の老人クラブへの入会によって、若宮さんの第二の人生が始まった。


エクセルを趣味として楽しめるソフトに

「チャットで日常の他愛ないおしゃべりを楽しんだり、俳句やビデオの編集といった新たな趣味に没頭したり、毎日がワクワクする冒険のようだった」と若宮さんは当時を振り返る。

介護10年目で母が他界し、ひとり暮らしになった若宮さんは、自分が経験した喜びや楽しさ、充実感を同世代の方々にもっと広めたいと、シニア向けのICT学習のボランティアで講師を始めた。

しかし、当時はパソコン初心者でも親しめるような、シニア向けの学習教材がなく、特に表計算ソフトのエクセルに至っては、はっきりと苦手意識を示すシニアが多かった。

そこで若宮さんは、シニアの好きな手芸に着眼し、セルの色付けや罫線といったエクセルの機能で図案を作成する「エクセルアート」を考案した。手芸と同様に好きな色と柄でデザインを仕上げ、それをブックカバーやうちわ、バッグなどの作品にして楽しむこともできる。花柄や日本の伝統的な和柄、アラビア模様など、デザインの可能性は無限にあるという。ICT初心者に敬遠されがちだったエクセルが、若宮さんの創意工夫で親しみやすいソフトに変貌を遂げたのだ。

エクセルアートは、シニア世代が気軽にエクセルを学べる教材としてマイクロソフトからも称賛され、同社の公式コミュニティに記事が寄稿されている。また、国内だけでなく海外からも注目され、2015年には、台湾の大学で講演も行った。


ICTから広がった友人の輪

現在、若宮さんが持っているICT端末はパソコン3台にタブレット、スマートフォン。タブレットは琴の弾けるアプリが主な使い道で、パソコンでは、Windows10に内蔵されている3D Builderを使って、エクセルアートの新たな可能性を考案中だ。最近は、360度カメラを購入し、YouTubeに作品をアップしたり、東日本大震災の復興支援として被災地の現在を伝えるサポートもしたりと、ICTとの出合いから20年、趣味を超越したICTの普及・活動に日々、活躍の場を広げている。「広める価値のあるアイデア」を共有するイベントTEDxTokyoでは、最高齢スピーカーとして自身の経験を語り、会場を湧かせた。

日々、進化し続けるICTに「興味のあることが多すぎて、150歳まで生きても足りないくらい」と話す若宮さん。持ち前の好奇心と行動力は、コミュニティの拡大にもつながっている。TEDxTokyoでの講演やFacebook、メロウ倶楽部を通して、老若男女、さまざまな分野で活躍する世界各国の仲間と知り合うことができた。


パソコンやスマホは自分が使いたい機能をひとつ覚えるだけで十分

シニア世代が抱くICTへの抵抗感について、若宮さんはこう話す。

「パソコンやスマホ、タブレットに内蔵されている機能すべてを理解しなくていいと思うんです。まずは、自分がICTを使ってやりたいこと、それだけできればいいんじゃないでしょうか。例えば、孫とテレビ電話で話したいのならFaceTimeやSkypeが使えればいいし、使いたいアプリを立ち上げることだけできればいいんです。また、シニア世代は行動様式が単調になりがちですよね。地図アプリを使っていつもと違う道を通ってみるのも新しい発見につながりますし、良い刺激になって楽しいですよ」

充電が消耗してきたらどうすればいいのか、音量を調節するにはどうすればいいのかなど、使用していくうちに出てきた疑問を一つひとつクリアしていくと、少しずつステップアップしていき、いつの間にか使いこなせるようになっているという。

若宮さんがパソコンを始めた20年前より、シニア向けのパソコン教室やスマホ教室が豊富な時代。シニア世代が抱くICTへの抵抗感を少しでも払拭させるお手伝いをして、目の前に広がるチャンスをつかんで欲しい。活気のある豊かな生活を送るシニア世代を増やすことも、「ICTの伝道師」である若宮さんの使命なのだ。


ICTを利用して戦争の記録を後世に残したい

インターネット上で活動するシニアの全国団体である「メロウ倶楽部」の会員数は、現在約300名。平均年齢70歳で、60歳代から90歳代までのシニアが登録している。メロウ倶楽部のサイト内にはさまざまな部屋があり、若宮さんはその世話役も務める。

メロウ倶楽部のメインプロジェクトのひとつである「メロウ伝承館」は、戦前・戦中・戦後の記録を後世に伝える活動を実施しており、2005年国連情報社会世界サミット日本大会の文化部門で最優秀賞も受賞している。

若宮さんらメロウ倶楽部会員が目指すのは、教科書や資料には残っていない“生の証言”を残すこと。「戦争の記録を残せる最後の世代」でもある若宮さんは、歴史の壁に埋もれてしまっている小さなエピソードも、後世に引き継いでいきたいのだという。

「メロウ伝承館は、将来、国家的事業としてデジタル博物館が作られることがあれば、これまでに積み上げた記録をその中に入れていただければ理想だと思っています。新しいことにチャレンジするのも楽しいですが、身に着けたICTの知識を活用して、古いものを生き返らせるお手伝いをしていきたいんです。“故きを温ねて新しきを知る”ですね」

インターネットの登場により、時を経ても新鮮なままに記録を残せる時代になった。「メロウ伝承館における戦争の記録を後継者にバトンタッチし、子孫末裔までつないでいく」ことが若宮さんの最大のミッションなのだ。

IoT・ビッグデータ・AI時代のボーダーレスコミュニケーションの進展

今年で5回目となる読者参加企画「みんなで考える情報通信白書」は、「ボーダーレスコミュニケーション」をテーマにご意見募集を行った。情報通信とはもともと、様々なボーダーを超えるためのサービスと言えるが、今回の読者参加企画では特に「世代を超える」「国境や国籍を超える」「人間という枠を超える」の3つの「ボーダーレス」に着目し、ICTの進化が私たちにもたらしている新しいコミュニケーションについてコメントやご意見を求めた。昨年と同様、Facebook7、Twitter、LINE等の代表的なSNSに加え、シニア向けコミュニティサイト「メロウ倶楽部」8でもご意見募集の投げかけを行った。また、並行して各投げかけテーマに関連したウェブアンケート9を実施した。このコラムでは、お寄せいただいたコメントやアンケート回答を基に、ボーダーレスコミュニケーションの現状と、将来の可能性を探ってみたい。


1 世代を超えるコミュニケーション

少子高齢化が進んでいる我が国では、異なる世代間のコミュニケーションや交流が今以上に活発になり、その重要性も高まっていくであろう。そこで最初のテーマとして、自分と異なる世代の人々とのコミュニケーションや交流の現状について尋ねた。アンケート回答を見ると、コミュニケーションの相手として「両親/子供」の回答が多いのは当然として、「趣味やサークルの知り合い」、「年齢の離れた友人」の回答が「両親/子供」と同等かそれ以上に多くなっている(図表1)。ICTを使って、年齢や世代を超えた幅広い交流が既になされていることがうかがえる。

図表1 自分より上の世代、下の世代で、電話やネットでよくやりとりする相手は誰ですか?

他の世代の人とのやりとりの手段は、「スマートフォン」、「電子メール」、「パソコン、ワープロ」が多く挙げられた。FacebookやLINEなどのSNSも比較的多いが、それらと並んで「自宅の電話」を半数以上の人が挙げている(図表2)。固定電話は、世代間コミュニケーションでは、今なお重要なツールであることが分かる。

図表2 自分より上の世代、下の世代とのやりとりにどのような情報通信機器・サービスを使っていますか?

寄せられたコメントからは、従来のイメージとは異なる、世代をまたがった様々なネット交流の様子が垣間見える。

  • 電子メールを使っています。年齢の高い方に用件のメモをお願いするより、メールにちゃんと記述することで確実に伝わる点も便利に思います。
  • 親戚のLINEグループで、子供の写真を共有している。
  • Facetimeでよく孫娘と話をする。週に2回ぐらいかかってくるので、その成長ぶりが手に取るように分かる。
  • Facebookの投稿は、遠く離れて一人暮らしする母向けに投稿しています。ギャラリーがいることを母も楽しんでいます。
  • Facebookは、若い人たちとの交流に使っています。ボランティアでご一緒した人が多いです。中には高校生の方もおられます。
  • 趣味のSNSで、共通の話題で若い方々と盛り上がる、町内会のお知らせへの問い合わせをメールで役員の人に送る等。
  • 両親は後期高齢者のためネットも使っていないので、やっぱり昔ながらの固定電話でのコミュニケーションです。

こうして見ると、今では電話や電子メールだけでなく、LINEやFacebook等のSNSが新しい世代間コミュニケーションの広がりを生み出す基盤になっていると言える。


2 国境や国籍を超えるコミュニケーション

ICTの進化は、国境を意識させない真にグローバルな情報通信環境を実現しつつある。では、日本人の海外とのコミュニケーションは今、どうなっているのだろうか。

アンケートでよく連絡をとる海外の相手を尋ねたところ、海外在住の家族や仕事関係者よりも、「外国人の友人」、「日本人の友人」の回答が圧倒的に多かった(図表3)。家族・親族にとどまらないプライベートな交流が、国境を超えて広がっていることが分かる。

図表3 よく連絡をとる海外の相手は誰ですか?

海外とのプライベートな連絡手段については、電子メール、SNS、無料通話アプリといったインターネット関連の回答が多く、国際電話・国際郵便の回答は2割前後にとどまった。

海外との連絡・交流について、数年前と比べて何が変わったかを尋ねたところ、「料金の心配がなくなった」、「距離感を感じなくなった」という回答が特に多かった。「頻繁に連絡するようになった」、「相手の様子がよく分かるようになった」との回答も比較的多い(図表4)。コストの劇的な低下によって、海外との連絡・交流が濃密化してもいることがうかがえる。このことは、次のようなコメントでも見ることができる。

図表4 数年前と比べて、海外の家族・友人・知人との連絡・交流はどう変わりましたか?
  • 旅先で外国人と知り合う機会が多いです。連絡先の交換は必ずFacebookで、帰国後もお互いのFBの投稿にコメントしたり、メッセンジャーで次に行く旅行の話をしたりしています。
  • 海外家族とのスカイプは、顔も見れて近くにいるみたいでリアル感あり、動画もあり、距離感を感じませんね。
  • 毎週土曜日にSkypeで韓国の方々とお話ししています。写真を交換しながら、桜が咲いた、孫が大学に合格した等、まさに井戸端会議です。
  • Twitterでは相手の投稿を自分の好きな時間に見に行くので、時差を感じなくなった。
  • 前はエアメールのやり取りで回数も少なかったが、写真付きで近況をすぐ送ったりできるようになったので、交流が盛んになった。
  • 1970年代はアメリカへの電話は5分で5000円くらいだった。今となっては信じられない。

3 人と会話する機械やサービス

3つ目のテーマは、「人と機械・サービスとのコミュニケーション」である。音声認識・音声合成技術の発達とビッグデータ活用や人工知能の進歩により、レベルは様々だが、利用者と柔軟に会話しながら機能を提供するインテリジェントな機械やサービスが登場している。

アンケート回答によると、こうした機械やサービスと実際に会話経験があるのはまだ半数程度の人だが、実際に会話した人は「便利でよいと思った」、「賢くてびっくりした」、「楽しく会話できた」等、肯定的な感想を多く回答している(図表5)。

図表5 機械・サービスと会話したあなたの印象、感想は?
  • スマホのSiriをよく利用している。運転中で手が離せないが調べたいと思う時に助かっています。
  • 動いて喋るロボットやAIを店やネットで見かけるようになって面白い。まだ会話がスムーズでないからか、意外な返事が返ってくるのも面白い。
  • カーナビで利用した。手での操作が不要なので、便利だった。
  • お掃除ロボットを使っている。終了を教えてくれるのは便利だが、たまに夜中に喋っていてうるさい。

とは言え、アンケートでもSNSでも、こうした音声会話機能について「なじめない」という回答もあった。従来とは全く異質なコミュニケーションだけに、シニア層等では「人と機械・サービスのコミュニケーション」に違和感を覚える人も少なくないようである。その一方で、「既に介護施設では会話ロボットが絶大な人気」というコメントもあった。要は、利用者のコミュニケーションニーズをきちんと捉え、必要な時に、利用者が望むコミュニケーションを取れる機械やサービスなのかどうかが、広く受け入れられるためのポイントになるのではないだろうか。

  • 過剰な音声サービスには、今でも少々辟易している。「お風呂が沸きました」って、チャイムで十分!会話となると、星新一のショートショートが現実になりそうで、恐ろしい気もする。
  • 機械なので、誤動作やメンテナンスなどがどうなのでしょうか?
  • 既に高齢者の間や介護施設では、会話ロボットが絶大な人気を誇っている。独居の高齢者が増加し、一日中誰とも喋る機会がない悩みは深刻。人の「孤独」に着目した開発が望まれる。

4 ICTが実現するボーダーレスな未来

ここまで、アンケート結果といただいたコメントから、各種のボーダーレスコミュニケーションの現状を見てきた。今後のICTの進化により、これらのボーダーレスコミュニケーションはさらに高度で幅広いものになっていくだろう。ここからは、ICTのさらなる進化がもたらす未来のコミュニケーションやサービスについてのご意見を見てみよう。

まず、世代間、特にシニア層とのコミュニケーションに役立つ技術としては、「メディア変換(話したことを自動で文字にして表示)」や「会話アシスト」等、加齢によって起こりうる記憶力や聴覚、視覚機能の低下を補ってくれる技術への期待が高い(図表6)。こうした技術が発達すれば、高齢になっても気おくれすることなくネットで「若い人たちと盛り上がる」世代間交流がさらに広がるかもしれない。

図表6 上の世代とのコミュニケーションに役立つと思う未来のICTはどんなものだと思いますか?
  • 声で操作できるお年寄り向け携帯電話があったらよい。電話がかかってきた時、「はいはい」というとそれで電話がつながるとか。
  • 高齢になると、ここまで出かかっている単語が出てこない、という状態が頻繁に起こります。そういう時に、何かを少し説明すると「○○ですか」と単語を出してくれるアプリがあったらいいな。
  • 誕生日や結婚式、同窓会、法事やお葬式等の行事に参加したくても困難な時に、VR10の技術でネット上で一堂に会することができると嬉しい。
  • 母は91歳ですが、タブレットを使っているので、タブレットでやりとりできるお医者様がいらっしゃると、本当に良いですね。

国際コミュニケーションについては、日本語と外国語との完全自動翻訳技術についてご意見を求めた。

肯定的なご意見としては、非英語圏の人々との交流に使いたいというコメントが目立ったが、一方で「翻訳技術に頼ると外国語を勉強しなくなる」というご意見も多かった。

  • 実現したら、フランス語圏・スペイン語圏にもどんどん旅行して、積極的に友達を増やしたい。
  • 海外で働く人が増えると思う。反対に日本に来る人も増えると思う。
  • スマホの翻訳アプリも十分使える。東京五輪までにもっと進歩しているだろう。楽しみである。
  • 他の国の言葉を学ぶ意欲が減ると思います。その国の社会、文化を本当の意味で理解する機会を失う可能性が高くなるのでは。
  • 英語が勉強できる機会がほしいので、翻訳機能はほどほどでいい。

では、利用者と会話する機械やサービスについてはどうだろうか。アンケート回答では「便利になるのでどんどん広げてほしい」、「人間をアシストしてくれるよい技術だと思う」といった肯定的な回答が多かった(図表7)。人工知能については危険性の指摘もあるが、寄せられたコメントを見ても、危険性を危惧するよりも様々な利用の可能性に期待する意見が目立った。

図表7 会話するインテリジェントな機械やサービスについてのご意見は?
  • 利用したことがないので分からないが、興味はある。どれくらい賢いのか、試してみたい。
  • 人間の役割を代わるというよりも、面倒だったり大変なことをやってくれる、生産性を上げるツールになってくれたらと思う。
  • 言葉を発声できない人の代わりに社会的なコミュニケーションを取るツールとしてうまく利用できたら良いと思います。
  • 青森県在住の者です。とても良いと思いますが、方言や訛りの強い人にも対応できたら良いと思います。
  • 慣れていないので驚きますが、今後はこれが日常になるのかなと思います。

今後、人工知能やICTとの融合で劇的な進歩が予想されているのが自動車の自動運転である。自動運転について寄せられたコメントを見ると、車の安全性とドライバーの意識、楽しみ等を両立させるベストミックスの実現が求められていると言えそうである。

  • 目的地を告げた後は、全自動運転してくれる機能を期待します。
  • 運転を機械に完全にゆだねてしまうのは、安全面で抵抗がある。実用化の前に、安全性を十分実証してほしい。
  • アルコール検知機能付きで、検知時は完全自動運転。高齢者の場合も、ほぼ自動運転にしてほしい。
  • ドライブを楽しむ派と楽する派に分かれると思う。仕事、レジャーは自動で。ドライブを楽しむ時は人間本位で。
  • 自動化されると人間から危険意識がなくなるので、ある程度自動化し、半面で手動部分も残すべき。
  • 自動運転車と人が運転する車の道を分けられればよいと思う。混在すると自動運転の安全性が落ちるような気がする。
  • 運転者のミスなどがあっても事故を防げるような機能ができたら良いと思う。
  • タイヤでなく、宙に浮いていてほしい。

このように、ICTの進化がもたらす未来のコミュニケーションの拡張や新しい製品・サービスについては、ジャンルによって濃淡はあるものの、全体としては肯定的な意見や期待のコメントが多く見られた。中でも、人間と会話するインテリジェントな製品・サービスへの期待は高い。「鉄腕アトム」以来、日本人はロボット好きだと言われているが、人工知能を備えたロボットやネットサービスを私たちが生活や仕事のパートナーとして受け入れ、コミュニケーションをとりながら共に暮らす日は、そう遠くないのではないだろうか。

「みんなで考える情報通信白書」にお寄せ頂いたコメントは、本コラム未掲載の内容を含めてまとめサイトに全て掲載を行っている。ページの都合上掲載できなかった中にも興味深いコメントを多くいただいており、こちらも合わせて参照いただきたい。

ご意見まとめサイト:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/minna/別ウィンドウで開きます



1 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000031.html別ウィンドウで開きます

2 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/iict/別ウィンドウで開きます

3 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000049.html別ウィンドウで開きます

4 データ(Data)、情報(Information)、知識(Knowledge)、知能(Intelligence)及び智慧(Wisdom)の関係並びに「高度情報通信ネットワーク社会」及び「知識社会」と「智連社会」との関係については、中間報告書第2章1.参照(併せて、「報告書2016」第2章3.(1)参照。)。

5 中間報告書第5章1.に基づき作成。G7香川・高松情報通信大臣会合においては、高市総務大臣から、AIの開発原則の策定に向けた議論のたたき台として、図表3の内容に即した英文の資料を配付している。

6 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000050.html別ウィンドウで開きます

7 https://www.facebook.com/MINNAdeICThakusho別ウィンドウで開きます

8 http://www.mellow-club.org/別ウィンドウで開きます

9 ウェブアンケートの詳細は巻末の付注7を参照。

10 VR(仮想現実:Virtual Reality)

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