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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第2節 経済成長へのICTの貢献〜その具体的経路と事例分析等〜

(1)ICTに係る労働参画の促進

ア 経済貢献の概要

少子高齢化に伴う労働力不足については、我が国経済成長の制約要因になりつつあることが従来から指摘されてきている。日本生産性本部の調査・分析結果によれば、2014年度も医療や情報通信などを中心とした就業者の増加が就業者全体の増加にもつながっているものの、飲食業や小売・運輸などで人手不足が顕在化しつつあり、既に労働供給力は限界であることを指摘している。

こうした労働力不足に対して、ICTを活用して補い、労働参加を促進する取り組みが続けられている。労働参加が進むことはマクロ経済成長に貢献し、労働参加を通じて成長の果実が幅広く均てんされる。政府は、『世界最先端IT国家創造宣言』(平成27年6月30日改訂版)において、テレワーク等を含むICT利活用による労働環境の向上について重要な目標を立てている。具体的には、若者や女性、高齢者、介護者、障害者を始めとする個々人の事情や仕事の内容に応じて、クラウドなどのICTサービスを活用し、場所にとらわれない就業を可能とし、多様で柔軟な働き方が選択できる社会を実現するとともに、テレワークを社会全体へと波及させる取組を進め、労働者のワーク・ライフ・バランスと地域の活性化を実現するとしている。また、その一環として、地方への人の流れを促進するため、サテライトオフィスでの勤務を含め地方に住みながら仕事を行うテレワーク(ふるさとテレワーク)を推進することとしている。これらの取組等により、2020年には、テレワーク導入企業を2012年度比で3倍とし、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数や女性の就業率を高める目標としている。このように、テレワークやサテライトオフィスを活用することで、地域の雇用を促進することが期待されている。

イ 企業による取組事例

ここでは、ICTを活用した労働参画の促進や効果の事例についてみてみる。テレワークやサテライトオフィス等による、労働参加に係る環境を構築する取り組みは浸透しつつある(図表1-2-3-1)。さらに2010年代に入ってからは、発注者がインターネット上のウェブサイトで受注者を公募し、仕事や業務を発注することができる働き方の仕組みとしてクラウド・ソーシングも注目されている。

図表1-2-3-1 企業におけるICTを活用した労働参画の促進や効果の事例
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
ウ 企業等による取組状況

ここでは、国内企業向けモニタアンケート調査結果をもとに、企業によるICTを活用した労働参画の促進の実施状況や効果について概観する。

ICTの労働参画の促進の実施状況をみると、現状では「ICT人材の育成」が最も高く、次いで「サテライトオフィス」となっている。前述した「テレワーク」については、既に実施していると回答した比率は約11%となっている。今後5年の実施意向については、「テレワーク」をはじめいずれの取り組みに対しても期待が高まっていることが分かる(図表1-2-3-2)。一方、分野別でみると、とりわけ今後の「テレワーク」の実施意向は、他の施策と比べても、ICTとその他企業に大きなギャップあり、ICT以外の企業におけるテレワークの推進強化が課題である(図表1-2-3-3)。

図表1-2-3-2 企業におけるICTを活用した労働参画の促進の実施
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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図表1-2-3-3 企業におけるICTを活用した労働参画の促進の実施意向(業種別)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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こうした取り組みによる具体的な効果についてみると、取り組みを行っている企業(全体の37%)のうち、50%強が「働き方・ワークスタイルの多様化」と回答しており、ICTが就労環境の改善や変化に寄与していることがうかがえる。加えて、約30%が「新規従業員の採用」に貢献したと回答しており、ICTの進展が雇用機会の拡大にも寄与しているといえる(図表1-2-3-4図表1-2-3-5)。こうした効果について業種別でみると、とりわけサービス業において前述した「新規従業員の採用」が高いことが分かる(図表1-2-3-6)。

図表1-2-3-4 ICTを活用した労働参画の促進による効果
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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図表1-2-3-5 ICT化の進展に伴う新規従業員の採用による従業員増加率
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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図表1-2-3-6 企業におけるICTを活用した労働参画の促進の効果(業種別)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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本項では、個々の業種や企業活動における労働参画へのICTの貢献について、詳細な要因分析は行わないが、我が国経済の長期的な成長のボトルネックとして浮き彫りになっている就労人口の減少に対して、労働参画の観点からICTをどのようにきめ細かく活用していくかという課題は、今後より重要性が増すと考えられる。

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