総務省トップ > 政策 > 白書 > 28年版 > 人工知能(AI)への対応
第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4節 必要とされるスキルの変化と求められる教育・人材育成のあり方

(2)人工知能(AI)への対応

以上のように、人工知能(AI)の普及にあたって求められる人材と必要な能力として、基本的な資質能力の重要性と合わせて、人工知能(AI)の開発や実用化に関わる人材の必要性が明らかとなった。それでは、人工知能(AI)の普及に向けた今後の対応・準備については、日米の就労者はどのように考えているのだろうか。

米国の就労者は「人工知能(AI)の知識・スキルを習得するなど、人工知能(AI)を使う側の立場に立って、今の仕事・業務を続けようと対応・準備する」とする人が多くみられ、人工知能(AI)の普及にそなえて、それを使いこなせるようにし、今の仕事・業務に適応させるための対応・準備を重視する姿勢がうかがえる。一方、日本では、「対応・準備については、特に何も行わない」とする人が過半数を超えており、今後人工知能(AI)が普及浸透していく中で、人工知能(AI)を活用する流れから、取り残される人が出てくることが懸念される(図表4-4-1-3)。

図表4-4-1-3 人工知能(AI)の普及に向けた今後の対応・準備
(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)より作成
「図表4-4-1-3 人工知能(AI)の普及に向けた今後の対応・準備」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

有識者インタビュー⑦

株式会社リクルートホールディングス
R&D本部 RIT推進室
石山洸 室長

−貴社では専門知識がない社員でも人工知能(AI)を活用しているという話は本当ですか。

リクルートは、DataRobot Inc.への出資および同社とAI研究所の事業提携を通じて汎用機械学習プラットフォームの進化に貢献し、データサイエンティストの業務効率改善や、データサイエンティストではない方のデータ活用を支援しています。機械学習プラットフォーム『DataRobot』は、こうした取組みを通じて、社内におけるより一層の普及に弾みがついており、現段階では社員誰もが機械学習を使えるインフラ環境の準備が完了しており、普及活動としてグループ各社での導入実験が始まっています。今まさにさまざまな事業のオペレーションの中でなるべく使ってほしいとお願いしている普及段階に入ったところです。「DataRobot」は、データファイルをドラッグ&ドロップし、予測というボタンをクリックするだけで誰でも簡単に機械学習を利用することができます(図表4-4-1-4)。機械学習の使われ方は個人差がありますが、今では、日々の業務の中でいろいろなデータを機械学習させて積極的に活用する者も出てきています。

図表4-4-1-4 機械学習プラットフォーム『DataRobot』
(出典)株式会社リクルートホールディングス提供

−今後、日本の企業がレベルアップしていくためには何が必要だと考えますか。

先ずベースとして、効果的なデジタル化シフトを進めることが必要です。リクルートは、デジタル化へのシフトがうまくいっている数少ない企業だと思います。デジタル化シフトは、簡単なことではありません。カルチャーやビジネスの考え方が異なる組織間の意向を調整したり、デジタル化を進める転換期となるタイミングは、ビジネスセクターごとに違ってくるため、そのような状況を踏まえて効果的に投資を進めることが必要になってきます。そのような素地を築いたうえで、経営側が、製品のライフサイクルや、事業分野の市場成長率と市場占有率、イノベーションのジレンマをマネジメントするのと同じ経営の発想で、機械学習の導入・活用を意思決定できることが必要になります。リクルートでは、Web2.0がもてはやされた時代に、当時、情報量が売りであった雑誌販売から、API(アプリケーションプログラムインターフェイス)でのデータ開放へとビジネスを拡大させ、大きな成長を遂げました。こうした経営側の意思決定が大きな変革には求められます。また、ビジネスセクターの現場側においても、データサイエンティストを採用するだけでなく、データサイエンティストと、データのことをよく分かっている現場、データ整備の重要性やビジネスをよく分かっている経営、これら3つを融合させ、権限を持ってビジネスを回していく人材が必要になります。


−貴社が目指す人間と人工知能の未来とは。

リクルートのAI研究所では、人間と人工知能(AI)を組み合わせることで、高い付加価値を生み出す、人間と人工知能(AI)の『共進化』をテーマにしています。人間と人工知能(AI)の役割分担において、コミュニケーションが必要とされる業務は人間に残るといった一般論がありますが、そのような大掴みの話、単純な話ではありません。ビジネスセクターをもっと細分化して議論する必要があります。人間と人工知能の共進化は、ビジネスセクターにおける細かい業務ケースの事例をボトムアップで積み上げていって、さまざまな課題を洗い出すところから研究を始めるべきで、それが健全な姿でしょう。


−人間と人工知能の共進化に向けて、企業における教育・人材育成はどう変わっていくべきでしょうか。

ジャストインタイムエデュケーションが重要になると考えています。今後、仕事とタスクの関係が変わっていき、その中でタスクの一部を人工知能(AI)が担っていくと思いますが、これまではスキルの100%を人間が習得・吸収する必要がありましたが、タスクの80%を人工知能(AI)が担ってくれれば、人間の習得・吸収が必要なスキルは20%でよくなります。このような省力化が可能なスキルの習得・吸収をタイムリーに行うことのできる教育・人材育成が求められると思います。また教育・人材育成においては、人工知能(AI)活用に対する対応能力や姿勢・スタンスを学ぶことと並行して、人工知能(AI)に対する苦手意識を取り除くことが必須です。英語が話せない人の教育と同じです。

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