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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第2節 人工知能(AI)の現状と未来

(3)代表的な研究テーマ

人工知能(AI)の代表的な研究テーマを記載したものが図表4-2-1-6である。ただし、研究テーマは多岐にわたり、相互に関係していることから明瞭に分類することは困難であり、図表4-2-1-6は紙幅をふまえた便宜的なものである。また、実用化にあたっては複数の技術を組み合わせて用いられていることから、各テーマは排他的なものではない。

図表4-2-1-6 人工知能(AI)の代表的な研究テーマ
(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)

人工知能(AI)の研究テーマのうち、現在はディープラーニングに関する学術研究が特に脚光を浴びている。ディープラーニングは特徴量を自ら作り出すことができるようになった点で画期的な要素技術ではあるが、単独ではあらゆる分野のどのようなタイプの問題をも解決できるような万能の人工知能(AI)までを生み出すことはできない。したがって、今後は個別の分野における具体的な問題に対応できる人工知能(AI)を個々に実用化していくための研究がより重要になっていくと想定されている。つまり、実用化を目指す特定の分野における大量かつ適切な内容のデータを用意し、このデータからディープラーニングを用いた機械学習をすること、またそのような機械学習が可能になる情報処理能力が提供されて初めて、当該特定分野における人工知能(AI)が実用化に至るとされる15

有識者インタビュー②

早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科 尾形哲也 教授

−人工知能が脚光を浴びている背景を教えてください。

従来からある人工知能の研究は、コンピューターが認識できるような形で知識を用意し、その知識に基づいた推論をコンピューターが行うというものです。実用化するためには、膨大な知識を用意することと、高度な推論を可能にすることが求められます。これに対して、ディープラーニングは、何が知識であるかを機械学習によってコンピューター自身が見つけ出すこと(特徴量の抽出)を可能にしました。これが、ディープラーニングが人工知能における近年のブレイクスルーと言われている理由です。


−人工知能とロボットの研究はどのような関係にあるのでしょうか。

人工知能とロボットは一緒に扱われることがありますが、センサや音声対話など関連ある技術はあるものの、その進歩は基本的には独立したものだったといえます。1970年代における人工知能の第一次ブームは、まだロボットは萌芽期でした。1980年代における人工知能の第二次ブームはロボットの第一次ブームに対応しますが、二足歩行技術を中心としてロボットが第二次ブームを迎えた2000年代は、人工知能にとっては冬の時代でした。2010年代のいま、人工知能とロボットはともに第三次ブームを迎えましたが、研究者の交流など両者の直接の関係性はまだ十分とは言えません。人工知能とロボットの研究が相乗効果を持ち、たとえば人工知能がロボットを通じて身体的な経験を得ることができるようになるかは、今後の研究にかかっています。


−人工知能とその実用化の今後について教えてください。

しばらくは、実用化していくためのアイデアが問われると思われます。まずは認識のエリアで活用が進むと考えられ、アイデア次第で使えるデータがいろいろなところにあるだろうと思われます。たとえば、言語化しにくい目や耳等の感覚にたよっている技術(職人の感覚など)の学習にディープラーニングは有効だと思われます。ディープラーニングによって何ができるのかを把握した上で、アプリケーションをどんどん社会に出していく必要があると思います。今後、これらの認識の応用と並行して、ロボットなど動作を伴う応用が考えられていくでしょう。



13 機械学習のアルゴリズムの一つであり、人間の脳が学習していくメカニズムをモデル化して、人工的にコンピューター上で再現することで問題を解決しようとする仕組み。

14 松尾、前掲、p.96

15 安宅和人「人工知能はビジネスをどう変えるか」(『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2015年11月号)

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