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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第2節 市場規模等の定量的な検証

1 関連市場の規模と成長性

前節の整理に従い、IoT時代のICT産業を「コンテンツ・アプリケーション」「プラットフォーム」「ネットワーク」「デバイス・部材」の大きく4つのレイヤー(階層)に分類し、関連市場の規模と成長性を定量的に把握する。

本項では、各レイヤーにおける代表的な市場・品目について概観し、第2項以降でそれぞれ具体的な市場規模や今後の見通し、また近年のトレンド等の事例について紹介する。「コンテンツ・アプリケーション」や「デバイス・部材」レイヤーでは、ウェアラブルやセンサー等、近年のIoTのトレンドに直接関連する市場を取り上げる。「プラットフォーム」や「ネットワーク」レイヤーにおいてはIoT市場に関するデータが限られているため、関連市場の動向を概観しながらIoTに関連する動向やインパクトは定性的に触れるものとする(図表2-2-1-1)。

図表2-2-1-1 各レイヤーの対象市場・品目
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)

まず、各レイヤー・市場について、グローバルレベルでの市場規模と成長性(予測ベース)を概観する。全体的には、「ネットワーク」「デバイス・部材」の下位レイヤーは、すでに世界的に普及していることから、移動体を中心としてその規模は大きいが、成長率の観点からはとりわけ「デバイス・部材」レイヤーは低く、スマートフォンを中心に急速に成長した「人」向けデバイスの成長は今後鈍化することが予想される。特に、スマートフォンについては過去の情報通信白書においても、グローバルレベルでの成長トレンドを取り上げてきたが、2015年後半から中国を中心とした新興国市場の成長が鈍化している。とりわけ、低価格端末の流通増加を要因として、年平均成長率がわずかにマイナス成長となっている。

他方「コンテンツ・アプリケーション」や「プラットフォーム」の上位レイヤーは、現在の市場規模は前述の下位レイヤーと比べて小さいが、成長率が高いことから、今後ICT産業の付加価値は全体的に上位のレイヤーへとよりシフトしていく蓋然性が高い。ただし、「プラットフォーム」レイヤーもコモディティ化の激しさが指摘されており、例えば、データセンターについては、クラウドインフラのコモディティ化や仮想化による設備投資金額の抑制が進み、金額ベースでは成長率の押し下げも指摘される(図表2-2-1-2)。

図表2-2-1-2 主要グローバルICT市場の規模と成長性
(出典)eMarketer(eコマース)、JEITA(センサー)、IHS Technology(その他)

爆発的に増大するデータトラヒック量を支えるICTインフラや関連サービス・アプリケーションの市場は成長を続けている。IHS Technologyによれば、企業等のICT支出1の面からみてみると、世界のICT市場規模は2015年時点で約2兆ドルに達しており、2020年に向けて年平均成長率7.0%で拡大を続ける(図表2-2-1-3)。

図表2-2-1-3 世界のICT市場の推移
(出典)IHS Technology

一方で、これらのICTインフラを利用する需要側と提供する供給側の双方において次のような潮流が見られる。第一に、市場全体としては拡大傾向が見られるものの、先進国を中心に引き続き経済の不安定性がリスク要因となっていることから、企業がICT設備投資を控える傾向も内在している。第二に、こうした投資環境も相まって、多くの企業がコロケーションやクラウド事業者へのアウトソース等でデータセンターに係る運用の統合を進めている。第三に、データセンターやクラウド等のICTインフラを取り巻く技術的変化がみられ、具体的にはサーバー関連技術における仮想化の流れを背景に、運用等に係る効率性が飛躍的に向上している。最後に、爆発的なデータ量の増大を背景として、大規模なICTインフラの運用においては、従来の設計にはとらわれない、規模や要件に見合った「破壊的な」設計が求められている。そのため、そのような設計を実装する必要があるユーザー企業が必要なハードウェアを自らの手で開発する取組が進んでいる。具体的には、FacebookのOpen Compute2やYahoo!のComputing Coop3等が挙げられる。こうした企業は、従来からサーバーなどの自社開発をしており、オープンソース化を通じて互いに知識や経験を共有することで、自らハードの開発力をより高めようとしている(図表2-2-1-4)。

図表2-2-1-4 ICTにおける近年のトレンド
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)


1 IHS Technology社のレポートでは、ICT支出は、企業のICT関連機器、ソフトウェア、サービスへの支出の合計と定義されている。

2 データセンターで使用するサーバーやストレージ、ネットワーク機器、ラック、空冷装置などのハードウェアの設計図をオープンソースとして開発・公開するプロジェクト。米Facebookが2011年に開始したものだが、現在は米Open Compute Projectファウンデーションという組織がプロジェクトを推進している。

3 米Yahoo!がデータセンター用に設計した電力効率を大幅に改善する処理技術。

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