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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第4節 経済社会に対するICTの多面的な貢献

(3)情報資産(レビュー(口コミ)等)

ア 事例
(ア)口コミサイト

口コミサイトは多くの商品・サービスの価格、評判、スペック等の情報を集約し提供している。ユーザーが販売店舗別に価格を比較する、ユーザーが口コミ(レビュー)を書き込む、他のユーザーの口コミを参照する、ユーザー同士が質問し回答するといった利用例が典型的である。購買支援サイトの1つである「価格.com」(図表1-4-2-11)は、現株式会社カカクコムが1997年に開始したサービスに端を発する。

図表1-4-2-11 口コミサイトの例(価格.com及び食べログ)
(出典)株式会社カカクコム提供資料

当初は販売店舗やメーカーといった企業側の反応は芳しいものではなかったが、ユーザー数が増え認知度が高まるにつれて、サービスの価値や影響力が高まり、企業側からも次第にサイトに情報を提供したり広告を出稿するようになった。レビュー(口コミ)の質を確保するために、株式会社カカクコムでは、製品に関係する情報に限るなど書き込みの目的とルールを示し、人海戦術でスタッフが書き込みを確認し、ルールから外れるものは書き手に修正を依頼している。同社によると、ある程度口コミが集積された後は、悪質な書き込みがあってもユーザー同士自制しあうなどして信頼関係が構築され、次第に自律的に良質な情報が集まるようになったとのことである。

また、口コミ(レビュー)がサイトに掲載されることによって、店舗やサービスの評価に関する情報量が増え、店舗間、サービス間の評価が順位づけされるようになる。これにより、消費者が財・サービスの比較を行いやすくなったり、同種の財・サービス間の競争が促進されたりすることにより、消費者の財・サービス購入時のリスク(想定したものと異なるものを購入してしまう、質に対して割高な財・サービスを購入するなど)が軽減している。

口コミサイトは、個人のエンパワーメントの集積(レビュー情報の集積)によって、企業側にも影響をもたらした事例と考えられる。

(イ)ネットオークション

ネットオークションは消費者間で、いつでも、どこでも簡単に売り買いが楽しめる。ネットオークションにおいては、出品者が商品を送ったのに購入者が代金を支払わない、購入者が代金を支払ったのに出品者が商品を送らない、購入した商品がイメージと違ったというトラブルの可能性はありうる。ただし、出品者と購入者が事後に相互に評価を行うことで取引を円滑に進めるインセンティブを与え、また取引前においても以前に蓄積された評価を参照して相手と取引を行うかどうかの参考にしたり、購入者が出品者に質問できるようにするなど仕組みを工夫することで、信頼性を確保した消費者対消費者の取引(C2Cモデル)を成立させている。口コミサイトの事例で見た企業対消費者の取引(B2Cモデル)の関係に加えて、C2Cの関係においても、買い手側と売り手側の相互レビューがサービスの質の向上をもたらしているといえる。

(ウ)シェアリング・エコノミー

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産をインターネットを介して他者も利用8できるサービスである。貸し手は、遊休資産の活用による収入、借り手は所有することなく多種多様なサービスの中から自分の好みに合うサービスを選択し利用できるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要となるが、ネットオークションの箇所で前述した貸し手と借り手による相互評価や相手方の過去の評価の参照等に加え、他の情報と組み合わせることで信頼関係の担保や貸し手借り手のマッチングの強化を図っている例も見られる。後述するスペースマーケットの事例では、クレジットカードや各種身分等を証明するものとのひも付け、ソーシャルメディアの評価との連動も行っている(図表1-4-2-12)。

図表1-4-2-12 スペースマーケットの利用の流れと信頼関係の担保等の強化
(出典)スペースマーケットホームページ9を基に総務省作成

後述するAirbnbの事例では、ユーザー間の信頼性を担保しより高める工夫として、ホストとゲストとの相互レビューに加え、Airbnbのプロフィールを外部の個人情報(Facebook、電話番号、メールアドレス、写真入り身分証明書など)と連携し本人確認を行う機能、利用者に起因する損害を補償するホスト保証制度を導入するなどしている。2015年の全世界におけるAirbnbのゲスト数延べ3500万人以上に対しホストの施設における1000米ドル以上の物損は455件、割合にして0.0013%にとどまっており、こうした信頼性を担保する工夫が機能している様子がうかがえる。

レビューが関連するサービスを口コミサイト、ネットオークション、シェアリング・エコノミーと登場した順にみていくと、レビューがICTの利活用の進展の影響も受けながら仕組みを工夫し、より多様な取引に用いられ、またマッチング等の付加価値ももたらしていることがわかる。

シェアリング・エコノミーの幅広な事例、利用実態等については、第3章第1節にても取り上げるが、ここではスペースの貸し借りに関する二つの事例を基に、レビューの役割や、レビューがこうした新しい経済活動にどのような影響をもたらしているのか概観する。

株式会社スペースマーケットは、企業や飲食店のもつ遊休スペースや利用時間外のスペースを1時間単位で貸し借りできるプラットフォームを2014年から提供している。当初は結婚式場や飲食店、オフィスの会議室などの遊休時間を法人利用者が借りるサービスを中心にしていた。その後、個人宅や公共スペース、古民家、お寺、球場等貸し借りするスペースを拡充する方向にある(図表1-4-2-1310。利用用途は懇親会やパーティーが5割、イベント・会議が3割、そのほか2割である。個人利用と法人利用の割合を見ると、サービス開始当初は2:8であったが、2015年秋以降個人利用が逆転し、現在では8:2と個人利用が増加していった傾向にある。予約の手続きのやりやすさなどの利便性や、これまでにない楽しさを得られる点(皆でキッチン付のスペースで食事を作り、懇親会を行ったり、日常とは異なるスペースで会合したりする等)が評価されている。

図表1-4-2-13 スペースマーケットの利用例
(出典)株式会社スペースマーケット提供資料

Airbnbは自分の家の空き部屋を貸したい個人と宿泊希望者の個人とをマッチングさせるプラットフォームを2008年からグローバルレベルで提供している。同社によると、2015年末時点で世界3万4千以上の都市で200万物件が登録され、累計7,000万人のゲスト(借り手)がAirbnbを使って旅をしたとのことである。

こうしたサービスには遊休資産の有効活用や、ホスト(貸し手)の副収入の獲得、観光客の分散や多様なニーズへの対応等のメリットがあるが、その中でもゲストがAirbnbを使う理由は近年「地元で暮らしている人のように旅をしたいから」が最も多い(同社調査による)ことを受け2016年4月にはアプリを刷新しこうしたニーズに対応しようとしている。具体的には、物件タイプ(アパート、城、バンガロー等)の好みのみならず、エリアのタイプ(景色がいい、おしゃれ、静かなど)、体験の種類も選択できる機能を導入している。その他、同社によるとゲストとして旅をした人が、Airbnbの良さを体験して旅行を終えた後にホストになるケースもあり、貸す人、借りる人双方の人のつながりができたことによる楽しさももたらしているとしている。

イ アンケート結果の分析

口コミやレビューのサービス事例としてインターネットショッピングサイトを対象とし、買い物をする際にレビューをどの程度参考にするのかを尋ねた(図表1-4-2-14)。どの年代でも「かなり参考にする」、「まあ参考にする」を合わせると6割強となり、過半数がレビューをある程度参考にしていることがわかる。年代が低いほど「かなり参考にする」の割合が高く、若者ほどレビューを参考にして買い物をしている傾向がうかがえる。

図表1-4-2-14 レビューをどの程度参考にするか
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究
「図表1-4-2-14 レビューをどの程度参考にするか」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次に、レビューを「まったく参考にしない」という人以外に、レビューを読む際に主に重視する点を尋ねた(図表1-4-2-15)。どの年代でも「情報の信頼度(一定数の人が実体験に基づき評価をしているか)」の割合が最も高くなった。20代〜40代では「情報量が多いこと」が、50代、60代では「最近の情報が含まれていること」が続いて高くなった。

図表1-4-2-15 レビューを読む際、主に重視する点
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究
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最後に、レビューを「まったく参考にしない」という人以外に、レビューを読んだことで購入する商品を決定した経験があるかどうかを尋ねた(図表1-4-2-16)。どの年代でも「何度もある(5回以上)」、「何回かある(5回未満)」を合わせると8割強となり大部分の人がそのような経験があることがわかる。「何度もある(5回以上)」の割合は年代が低いほど高い傾向がみられた。

図表1-4-2-16 レビューを読んだことで、購入する商品を決定した経験
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究
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続いて、レビューを書き込むという観点で、インターネットショッピングサービスの利用状況を確認した。まず、レビューを書き込む経験について尋ねた(図表1-4-2-17)。50代が最も高く67.9%、20代が最も低く46.9%という結果となった。若年層の書き込み経験が低いのは、若年層ほど相対的にパソコンよりもスマートフォンを利用する傾向にあり、かつレビューを書き込みやすいのはスマートフォンよりもパソコンであるためと考えられる。

図表1-4-2-17 インターネットショッピングサービスの利用者におけるレビューを書き込む経験
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究
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次に、レビューを書き込む主な理由・動機について尋ねた(図表1-4-2-18)。どの年代でも「ポイントや割引等の見返りのため」の割合が最も高くなっており、口コミを主とするサービスと比べてもその割合が高い。また、年代が高くなるにつれて「自分の体験を他の人にも伝えたいため」の割合が高くなる傾向がみられた。

図表1-4-2-18 レビューを書き込む主な理由・動機
(出典)GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究
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8 貸し手が情報を掲載し、借り手が当該情報にアクセスできるシステムを提供している者を「シェアリング・エコノミー」のプラットフォームと呼ぶことがある。

9 https://spacemarket.com/about/how_it_works別ウィンドウで開きます

10 ユニークなスペースの事例としては、横須賀市の猿島がある。12月から2月までの一般開放されない時期の1日、コスプレーヤーの団体が貸切り撮影会を行ったこともある。

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