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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第3節 人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響

1 ICTと雇用

(1)かつての技術革新

技術革新は、一般的に、技術が人に取って代わることで生じる雇用の代替と同時に、技術革新で生産性が比較的高くなった業界に企業が参入することで雇用の創出をもたらすとされている1

過去の技術革新を検証すると、19世紀における産業革命では、製造業における作業を単純化して再構成することで機械が導入されて熟練工が不要になっており、技術がスキルの代わりになったと言える2。この現象を労働経済学の観点で捉え直すと、イギリスにおける実質賃金が上昇していることから、熟練工の雇用は代替されたものの技術的進歩による利益が労働者に分配されたと評価されている2

20世紀初頭におけるオフィスの機械化・電化では、事務機器によって業務コストが低下した結果、高度な教育を受けた事務職員の雇用が増大している。ただし、高度な教育を受けた事務職員の人材供給が需要を上回っていたため、結果としてオフィス労働者の平均賃金は減少している2

20世紀後半におけるコンピューターの普及に際しては、コンピューターを使用するコストが急速に低下していったことで、自動化の適用領域が拡大した2。この間、重要性が高まったスキルは“複雑なコミュニケーション”と“専門的な思考”であり、重要性が低下したスキルは“定型的な手作業”や“定型的な認識業務”であるとされる3。また、ICT導入の活発な産業で知識集約型(非定型分析)業務が増大し、定型業務が減少していることが示されている4

このように、技術革新による雇用への影響は、一律に決まるものではなく、時代によって様相が異なることがうかがえる。



1 Aghion, P. and Howitt, P.(1994). Growth and unemployment. The Review of Economic Studies, vol. 61, no. 3, pp. 477-494.

2 Osborn, M. & Frey, C.(2014)The Future of Employment

3 Autor, Levy and Murnane(2003), “The Skill Content of Recent Technological Change: An Empirical Exploration” Quarterly Journal of Economics

4 池永肇恵(2009)「労働市場の二極化―ITの導入と業務内容の変化について―」『日本労働研究雑誌』

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