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第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI〜ネットワークとデータが創造する新たな価値〜
第3節 経済成長へのICTの貢献〜定量的・総合的な検証〜

1 企業から見たICTの効果

企業向けのアンケート調査結果に基づき、企業から見たICTの貢献について、重視度・期待度と実際の効果の顕在化との関係性についてみてみる。すなわち、企業活動におけるICTの重視度・期待度と効果のギャップに着目することで、ICTの貢献の現状を浮き彫りにする。

全体の傾向としては、ICTに係る重視度・期待度がとりわけ高いのは、「効率化」の側面のうち「業務効率の向上」であり、またその効果が顕在化しているという認識が高い。一方で、この結果に対して、「業績」の側面のうち「既存市場の売上の向上」や「新規市場の売上の向上」に関しては、重視度・期待度が高いものの、前述の業務効率化に係る効果と比べると相対的に低いことが分かる(図表1-3-1-1)。このように、ICTに係る取り組みによって、売上拡大には重視・期待する程に十分に寄与していないという企業の認識が如実に表れている。

図表1-3-1-1 ICTに対する重視度・期待度と効果
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
「図表1-3-1-1 ICTに対する重視度・期待度と効果」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

こうした、ICTに対する重視度・期待度と効果とのギャップに着目し、業種別に定量化して比較してみると、特に「新規市場の売上の向上」に関しては、全業種にわたってギャップが大きく、効果が十分に表れていない。また、「業務効率の向上」については、全体平均では重視度・期待度と効果がマッチしている傾向がみられたものの、業種別でみると、「製造業」や「商業・流通業」においては高いが、その他業種では効果に見合っていない。また、「技術開発力の向上や基準・規格への対応」については、全業種に亘って重視度・期待度以上の効果が表れている(図表1-3-1-2)。

図表1-3-1-2 ICTに対する重視度・期待度と効果のギャップ(業種別)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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これらのICTに対する期待や効果に関して、今後注目される先進的なICT基盤やアプリケーションとの関係性についてみてみる。ここでは、前述の5つの側面をイノベーションの観点から先進的なICTとの親和性についてみてみる。

『イノベーション』とは、「技術革新」や「経営革新」といった概念が一般的であるが、「新しいもの」「新しい組み合わせ」などを含む広い概念と捉えられるものである。すなわち、「新しい技術・財・サービス」を生み出すことはもちろん、既にある技術・財・サービスの「新しい組み合わせ、新しい利用方法」を実現することによって、新たな価値を創出することも含むと考えられる。イノベーション自体の詳細は先行研究事例に譲るが、ここでは4つのイノベーションの形態とICTとの関係をみてみる。すなわち、『プロダクト・イノベーション』(新しい製品・サービス、あるいは大幅に改善された既存の製品・サービスの市場への導入)、『プロセス・イノベーション』(生産工程や配送方法、またそれらを支援する活動について新しい手法、あるいは大幅に改善された既存の手法の導入)、『組織・イノベーション』(業務慣行、職場組織の編成等に関する新しい方法、あるいは大幅に改善された既存の方法の導入)、『マーケティング・イノベーション』(製品・サービスのデザイン、販促・販路、価格設定方法等に関する新しい手法、あるいは大幅に改善された既存の手法の導入)である(図表1-3-1-3)。

図表1-3-1-3 先進的なICTとイノベーションへの期待
(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)
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企業向けアンケート調査によれば、全体としては、ビッグデータ・オープンデータに対する『プロダクト・イノベーション』への期待が高いことが分かる。また、同様に、センサー技術・M2M/IoTは業務効率化の側面から議論されがちであるが、実際の企業の期待としては「プロダクト・イノベーション」に注目していることが分かる。

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