平成9年版 通信白書

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第1章 平成8年情報通信の現況

2 国際情報通信の動向

 (1) 電気通信サービス

 我が国において提供されている主な国際電気通信サービスは、第1-1-31表のとおりである。
ア 国際電話サービス
(ア) 取扱地域
 我が国の国際電話サービスには、国際オペレータ通話サービス及び国際ダイヤル通話サービスがある。国際電話サービスの取扱開始当初、オペレータが交換接続を行うことにより、交換機設備等の機能の制約を受けずにサービスが提供できる国際オペレータ通話サービスが先行して導入されてきたが、利用者が直接ダイヤルすることにより自動的に接続される国際ダイヤル通話サービスの取扱地域の拡張は急速に進み、自動化率が高くなっている。
 8年度末の国際オペレータ通話サービスの取扱地域数(注1)は233地域、そのうち国際ダイヤル通話サービスの取扱地域数は、8年度にはソマリア、赤道ギニア及びディエゴ・ガルシアの3地域が加わり227地域となっており、自動化率は97.4%に達している。
 国際VPNサービスは、国際電信電話(株)(KDD)により3年度から企業等に向け取扱いが開始されているが、日本国際通信(株)(ITJ)、国際デジタル通信(株)(IDC)により相次いで取扱いが開始されており、取扱地域数は8年度末現在、30地域となっている。
 海外から日本への国際電話をプリペイドカードの利用、クレジットカード払い又は着信人払いにより提供するサービスは、主に海外旅行者や出張者等により利用されており、国際電話の利用機会の拡大や利便性の向上に資するものとなっている。8年度末現在、このサービスのうち、オペレータが接続するサービスについてはKDD、ITJ、IDCにより提供されており、取扱地域は80地域に、ダイヤル直通によるサービスについてはKDD、ITJ、IDCにより提供されており、取扱地域数は58地域となっている(第1-1-32表参照)。
 なお、日本から外国の事業者のオペレータを呼び出して行う当該外国以外への通話の取扱いについては、8年6月、KDD及びIDCにより開始され、また、9年2月には、ITJにより開始されており、外国から我が国を経由して行う我が国以外への通話の取扱いについては、8年12月、KDDにより開始されている。
(イ) トラヒック
 7年度における国際電話サービスの発着信合計時間数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、29億5,210万分(対前年度比10.8%増)となっている。
 これを発着別に見ると、我が国からの発信時間数は16億3,130万分(同7.0%増)であり、また、我が国への着信時間数は13億2,080万分(同15.8%増)である。発着信時間数の比率は55:45であり、6年度に引き続き発信時間数が着信時間数を上回っているが、対前年度伸び率では、近年、着信が発信を上回る傾向にある。
 取扱地域別に全体に占める割合を見ると、発着信合計時間数では、6年度に引き続き米国が全体の30.0%(対前年度比1.4ポイント増)と最も大きな割合を占めている。以下、アジアNIEs、ASEAN諸国等が上位を占め、それぞれの割合も6年度とほぼ同様となっているが、特に中国(同0.6ポイント増)及びタイ(同0.1ポイント増)については前年度に比べシェアが伸びている(第1-1-33図参照)。
 また、国際ダイヤル通話サービスの発信時間数の対前年度伸び率について見ると、5年度が10.8%、6年度が8.8%、7年度が9.9%となっており、近年、減少傾向にあった伸び幅が再び増加に転じた。7年度の対前年度伸び率の上位10位までの地域について、2年度から7年度までの順位の推移を見ると、ニュー・ジーランド、カナダは6年度に引き続き順位を上げているほか、これまで上位に入ったことのなかったヴィエトナムが1位となっている。また、6年度においては上位10位に入っていない米国が、7年度においては3位となっている(第1-1-34図参照)。
イ 国際専用サービス
(ア) 国際専用回線サービス
 国際専用回線サービスの7年度末総提供回線数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、1,691回線(対前年度末比2.9%増)となっている。これを品目別に見ると、音声級回線(帯域品目で主に電話に利用)は189回線(同33.7%減)、電信級回線(速度200bps以下の符号品目で主にテレタイプ通信、データ伝送に利用)は185回線(同12.7%減)と、音声級回線は昭和62年をピークに、電信級回線も昭和56年をピークに、引き続き減少傾向となっている。これに対し、中・高速符号伝送用回線(通信速度1,200bps〜45Mbpsの回線で、主にデータ伝送、高速ファイル転送、テレビ会議に利用)は1,317回線(同14.8%増)と前年に引き続き増加し、総提供回線数に占める割合は77.9%(対前年度比8.1ポイント増)で増加している。このように、国際専用回線サービスにおいては、近年、大容量回線への需要のシフトが急速に進んでいることが分かる。
 このことは、中・高速符号伝送用回線について、回線速度に回線数を乗じることにより得る回線容量の推移を見ても、7年度末の総回線容量は354,429kbps(対前年度末比56.6%増)となっているように、回線容量が飛躍的に増加していることによっても読み取ることができる(第1-1-35図参照)。
 また、回線数が増加している中・高速符号伝送用回線の7年度末の回線数について、取扱地域別に見ると、上位を占める7地域の順位は6年度に引き続き変わらないものの、その他の地域がシェアを下げている中で、中国のシェア(対前年度末比1.4ポイント増)が増加している。また、台湾が大幅に増加(対前年度末比164.3%増)し、第8位となっている(第1-1-36図参照)。
(イ) 国際映像伝送サービス
 国際映像伝送サービスは従来、通信衛星経由により提供されてきたが、8年7月、米国・アトランタにおいて開催された第26回オリンピック大会を契機として、KDDにより、初めて光海底ケーブルを経由する取扱いが開始された。これにより、降雨等の天候からの影響を免れるとともに伝送遅延時間が短縮され、サービスの一層の品質向上が図られている。
ウ 国際デジタルデータ伝送サービス
(ア) 国際フレームリレーサービス
 国際フレームリレーサービスの提供は、第二種電気通信事業者では5年2月、ネットワーク情報サービス(株)により開始され、9年3月末現在、7社により行われている。第一種電気通信事業者では6年4月、KDDにより試験役務の提供が、続いて7年4月には本サービスの提供が開始され、また、7年12月、IDCによりサービスの提供が開始されている。
(イ) 国際ATMサービス
 国際ATMサービスについては、KDDが5年7月、AT&Tと第4太平洋横断ケーブル(TPC-4)を利用した実験を開始して以来、本格サービスの提供に向けて同社と各国との間で実験が重ねられてきた。これら実験の評価を終えて9年4月、KDDにより試験サービスが開始された。
エ インマルサット海事衛星通信サービス及び航空衛星通信サービス
(ア) インマルサット陸上移動衛星通信サービス
 従来、我が国において提供されていたインマルサット衛星を利用した通信は、日本国内と船舶・航空機間又は船舶相互間に限られていたが、8年4月、試験役務として、KDDにより、インマルサットB、C、Mの各システムを利用して、我が国内にある携帯移動地球局と海外との間の通信が可能となるインマルサット陸上移動衛星通信サービスの取扱いが開始された。
(イ) インマルサットミニMサービスの提供の開始
 通信方式及び利用可能なサービスが異なる、インマルサットA、B、C、Mサービスシステムに加え、インマルサットミニMサービスが、8年10月、KDDにより提供が開始された。
 本サービスでは、五つのサービスシステムの中で最小・最軽量のノートブック型パソコン大に縮小された可搬型地球局を用い、デジタル方式により音声、ファクシミリ、データ通信が提供されている。サービスの利用が可能な地域は順次拡大され、9年夏までにほぼ全世界でのサービスの提供が開始される予定である。
オ 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 7年度における取扱数は、それぞれ国際テレックスサービスが583万回(発着信合計、対前年度比17.5%減)、国際電報サービスが22万通(発着信合計、対前年度比18.5%減)となっており、いずれも減少傾向である。
 なお、国際テレックスサービスにおいては、9年2月、国内電話網経由によるサービスの取扱いが開始された。
カ 国際電気通信回線設備
 8年度において、開通した回線設備及び敷設に関する合意がなされた回線設備の概要は次のとおりである(第1-1-37図参照)。
(ア) SEA-ME-WE3ケーブル
 8年9月、英国-シンガポール・マレーシア間に敷設が予定されていた光海底ケーブルであるSEA-ME-WE3ケーブルを、我が国をはじめとするアジア各国まで延長して敷設することで、本ケーブルの建設に参画する各事業者間で基本合意が成立した。これにより本ケーブルは、総延長約3万km、約30か国に陸揚げされるケーブルとなった。
 また、本ケーブルでは世界で初めて「光波長多重方式」が採用される予定であり、電話回線に換算して約48万回線というケーブルの大容量化が図られ、急速に増加するアジア・欧州間の通信需要への対応が期待されている。
 本ケーブル全区間の運用開始予定時期は、11年3月である。
(イ) TAT-12/13
 8年9月、IDC、ITJ、KDDが建設に参画したフランス-米国本土間を結ぶ光海底ケーブルであるTAT-13の運用が開始された。同時に、本ケーブルが英国-米国本土を結ぶTAT-12と接続されることにより、TAT-12/13としては、フランス、英国、米国をループ状に結ぶ総延長約1.3万km、電話回線に換算して約12万回線の容量を有するケーブルとなった。さらに、TAT-12/13は、我が国と米国西海岸を結ぶTPC-5CNと接続されることにより、飛躍的に増大する我が国と欧米間の通信需要に対応した、大容量の光海底ケーブルとなっている。

第1-1-31表 主な国際電気通信サービスの概要
第1-1-31表 主な国際電気通信サービスの概要

第1-1-32表 主な国際電話サービスの取り扱い地域拡張状況(8年度)
第1-1-32表 主な国際電話サービスの取り扱い地域拡張状況(8年度)

第1-1-33図 取り扱い地域別国際電話取扱量比
第1-1-33図 取り扱い地域別国際電話取扱量比

第1-1-34図 国際ダイヤル通話発信時間数の地域別対前年度伸び率の推移
第1-1-34図 国際ダイヤル通話発信時間数の地域別対前年度伸び率の推移(1)
第1-1-34図 国際ダイヤル通話発信時間数の地域別対前年度伸び率の推移(2)

第1-1-35図 国際専用回線サービス回線数及び回線容量の推移
第1-1-35図 国際専用回線サービス回線数及び回線容量の推移(1)
第1-1-35図 国際専用回線サービス回線数及び回線容量の推移(2)

第1-1-36図 取り扱い地域別国際線用回線数比(中・高速符号伝送用回線)
第1-1-36図 取り扱い地域別国際線用回線数比(中・高速符号伝送用回線)

インマルサットミニMサービス
インマルサットミニMサービス

第1-1-37図 世界の国際電気通信網
第1-1-37図 世界の国際電気通信網

 

 

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