平成9年版 通信白書

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第3章 放送革命の幕開け

(1)事業経営の動向

 ア 経営動向
 放送事業者全体の経営状況について経常損益の動きを見ると、5年度にかけて減少したものの、その後増加に転じ、7年度においては全体で前年度比70.6%増と顕著な伸びを示している(第3-2-9図参照)。
 その内訳を見ると、地上放送(NHK、民放)については、6年度以降順調に増加している。また、衛星放送(NHK、民放(BS、CS))については、民放のBS放送が7年度において初めて黒字化(注9)しているほか、CS放送についても赤字幅が縮小している。ケーブルテレビについても、赤字が続いているものの、その赤字幅は縮小の一途をたどっている。
 民放の衛星放送(BS、CS)及びケーブルテレビの黒字・赤字事業者数の推移を見ると、衛星放送事業者については7年度において30%以上の事業者で既に単年度黒字化している。またケーブルテレビについても、6年度以降単年度黒字化している事業者が30%を超えているほか、累積黒字化を果たしている事業者も見られ、その事業経営が軌道に乗り始めている事業者が着実に増加している(第3-2-10図参照)。
 イ 経営上の問題点
 前述のように、放送事業者の経営についてはおおむね順調に推移してきているといえるが、今後の放送事業を展望した際、デジタル化に伴う多チャンネル放送の開始により新規参入事業者が急増しており、複数メディア間の競争激化は避けられない状況にあるといえる。
 「通信産業設備投資等実態調査」(郵政省)によると、今後の経営上の問題点と考えている事項について「他メディアとの競合」の比率が上昇しているのは、こうした本格的な競争市場の出現を見込んだものといえる(第3-2-11図参照)。
 また、8年3月調査以降、もっとも比率が高くなっている問題点が、「番組ソフト制作購入負担」となっている。将来における我が国のチャンネル数は、数百チャンネルと見込まれているが、今後、こうした多チャンネル化の進展に伴うソフト需要の急速な拡大から、番組の調達に要する経済負担は更に拡大していくことが想定される。
 従来から我が国の放送ソフトについては、その制作を行った局及びその系列局以外で二次利用される場合が少なかったが、今後、多チャンネル化の進展に伴い想定される放送ソフトの不足に対応するためには、良質な放送ソフトの二次利用を積極的に行うことが、一つの解決策として有効であると考えられる。郵政省が委託して行ったアンケート(注10)により、委託放送事業者の二次利用率(時間ベース、総放送時間に占める比率)を見ると、既にその積極的な活用が見られている(第3-2-12図参照)。

第3-2-9図 放送事業の経常損益の動向

第3-2-9図 放送事業の経常損益の動向(1)

第3-2-9図 放送事業の経常損益の動向(2)

第3-2-10図 衛星放送事業者、ケーブルテレビ事業者の黒字・赤字比率の推移

第3-2-10図 衛星放送事業者、ケーブルテレビ事業者の黒字・赤字比率の推移(1)

第3-2-10図 衛星放送事業者、ケーブルテレビ事業者の黒字・赤字比率の推移(2)

第3-2-11図 民間放送事業者(ケーブルテレビを除く)における経営上の問題

第3-2-11図 民間放送事業者(ケーブルテレビを除く)における経営上の問題

第3-2-12図 放送番組の二次利用率

第3-2-12図 放送番組の二次利用率

 

 

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