平成9年版 通信白書

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第3章 放送革命の幕開け

(1)米国

 ア 産業政策としての規制緩和
 (ア) 1996年電気通信法
 (放送局の所有規制の緩和)
 放送メディアの集中制限を緩和するため、1社が所有できる局数に関し、テレビ局については、局数制限が廃止され、合計視聴世帯数の全国視聴世帯数に対する割合(カバレッジ)も現行の25%以内から35%以内に緩和された。また、ラジオ局については、同一地域を除き局数制限が廃止された。
 また、同一地域内におけるラジオ、テレビの兼業規制が緩和され、テレビ局とケーブルテレビ局の相互所有も原則として認められた。
 (ケーブルテレビ事業者と地域電話会社の相互参入)
 地域電話会社とケーブルテレビ事業者の相互参入が認められた。ただし、双者とも営業エリア内での買収、支配(10%以上)、合弁、提携は原則禁止されている。
 (イ) フィンシン・ルールの撤廃
 フィンシン・ルールは、昭和47年に3大ネットワークの独占的影響力を排除することをねらってFCCが導入した規制で、フィナンシャル・インタレスト・ルール(番組所有の禁止)とシンジケーション・ルール(番組販売の禁止)の二つからなっている。フィナンシャル・インタレスト・ルールは、3大ネットワークが、外部制作会社が制作した番組の所有権を確保することを禁止しており、3大ネットワークの、力による番組所有の集中を抑え、独立番組制作会社の保護を目的としていた。
 また、シンジケーション・ルールは、3大ネットワークが、ネットワーク経由以外で、ローカルテレビ局に対する番組放送権の販売(シンジケーション)を行うことを禁止しており、ネットワークの番組供給力を抑え、プロダクション等の独立シンジケーターの販売活動を促進することを目的としていた。
 本ルールが7年11月に廃止されたため、ソフト制作会社とネットワークが連携するメリットが生じ、ディズニー社のABCの買収の背景ともなった。
 (ウ) プライムタイム・アクセス・ルール(PTAR)の廃止
 PTARは、上位50市場の3大ネットワークの直営局及び系列局は、プライムタイム4時間(東部及び太平洋側標準時では19時から23時、中央及び山岳標準時では18時から22時)のうち1時間は、ネットワーク以外の番組を放送しなければならないという規則である。ローカル局の自主制作を促進するために導入されたが、現実にはシンジケーションからの購入番組を流すケースが多く、必ずしも自主制作に結び付かないという意見もあり、同規則は8年7月に廃止された。
 イ 公共の福祉の観点からの規制強化
 (ア) 1996年電気通信法
 (Vチップによる規制)
 今後製造される13インチ以上のテレビ受像機又はケーブルコンバータに、番組にあらかじめつけられたコード番号をもとに、暴力や性的シーンの多い番組をブロックする装置(Vチップ)をつけることを義務付けた。
 (暴力・わいせつ情報への対応)
 ケーブルオペレータ、直接衛星放送事業者等に対し、アダルト番組や下品な番組にスクランブルをかけることを義務付け、また、ケーブルオペレータは、パブリックアクセスチャンネル(一般開放チャンネル)等に対する編集権の行使を禁じられているが、わいせつな内容を含んだ番組に限っては、送信を拒否できる事とした。なお、いずれの規定もその後違憲判決が出ており、9年3月現在係争中である。
 (障害者の権利確保)
 視聴覚障害者のテレビ番組へのアクセスを確保するため、原則としてすべてのテレビ番組へ字幕を付与することを義務付けるとともに、解説放送の導入、普及を促進することとし、そのために必要な規則制定権をFCCに付与した。
 (イ) クォータ制の導入
 FCCは、商業テレビ局に対して、子供(16歳以下)の知識・理解力を高めるとともに、社会性を養い情操教育に資することを目的として、週3時間の子供番組の編成を9年9月から義務付けた。

 

 

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