平成9年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(3) 通信・放送の融合に関する検討

ア 21世紀に向けた通信・放送の融合に関する懇談会
 近年の技術革新の結果、通信にも放送にも利用可能なネットワークの実用化と通信と放送の融合による新たなサービスの開発が想定されており、このような通信と放送の融合動向に対応したニュービジネスの振興、メディアの再編、関連する法制度の在り方について総合的な検討が必要となっている。
 郵政省では、6年7月から「21世紀に向けた通信・放送の融合に関する懇談会」を開催し、1)広帯域網の構築と情報通信サービスの多様化、2)情報通信サービスのマルチメディア化、3)通信と放送の融合に伴う制度的課題と対応等を中心に検討を行ったが、8年7月、報告が取りまとめられた。その概要は次のとおりである。
(ア) 通信と放送の融合
 電気通信の中で、「公衆(不特定多数)向けの一方向型情報発信」を「放送」、それ以外を「通信」としてきた。しかし、情報環境・情報活動の変化により、通信・放送の情報伝送路の共有化が進み、「公然性を有する通信」、「限定性を有する放送」といった、通信・放送の中間領域的サービスが出現しつつある。このような動きを「通信・放送の融合化」の現れと捉えることができる(第2-2-2図参照)。
(イ) 通信・放送の融合と情報活動の在り方
 「公然性を有する通信」において、わいせつ情報、他人の誹謗・中傷、虚偽情報等の反社会的情報の流通が拡大しつつあり、また、1対1型の通信形態において迷惑通信が深刻化しつつある。このため、情報活動に関する従来のルールでは適切な対応が困難な状態が生じている。情報活動に関する新たなルール作りに際しては、「表現の自由」確保を基本原則としつつ、新たな情報環境におけるその意義や情報受信者及び第三者の権利保護についても、併せて検討する必要がある。
 また、「限定性を有する放送」の出現を踏まえ、今後、多チャンネル時代における番組規律について、現行制度の意義を十分に配意しつつ、各放送メディアの特性に応じて、その適用の在り方を見直していく必要がある。
(ウ) 情報(コンテント)の創造と流通
 通信・放送の融合等の情報環境・活動の変化により、情報は、文化の発展、産業の振興に、より一層重要な役割を担うこととなる。
 情報の力を最大限発揮させ、社会の発展を促進するには、質の高い情報が豊富に創造される環境、情報が円滑かつ正確に流通する環境の整備が必要である。そのためには、情報に係る権利の適切な保護、権利処理の容易化及び情報セキュリティの確保されたネットワークの整備が必要とされる。
(エ) 情報通信産業の展望
 情報環境の変化により、情報活動を専門的に担う事業者を取り巻く環境も大きく変化する。情報通信産業の発展を支えるために、情報発信主体の多様化や事業者間における公正な競争状態の確保等の環境整備が必要である。
イ 通信・放送の融合と展開を考える懇談会
 「21世紀に向けた通信・放送の融合に関する懇談会」において整理された論点及び今後の通信・放送の展開を視野に入れた課題について、具体的な対応を幅広い見地から総合的に検討するため、8年10月から「通信・放送の融合と展開を考える懇談会」を新たに開催し、2年間程度の予定で、1)通信・放送事業の国際化の進展、2)通信・放送の融合と情報活動の在り方、3)情報(コンテント)の創造・流通環境整備、4)情報通信産業に関わる競争環境整備等について検討を行っている。
ウ 通信ネットワークの放送事業への利用に関する検討
 伝送路の光化による広帯域化等に伴い、公衆網を利用した、電気通信事業者によるケーブルテレビ事業者へのサービス提供が技術的に可能となるなど、通信ネットワークの放送事業への利用可能性が広がっている。郵政省では、8年11月から、「通信ネットワークの放送事業への利用に関する研究会」を開催し、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者のネットワーク整備の在り方、サービス形態及びシステム上の課題、公正有効競争条件の担保方法、現行法体系上の制度的な整理等の課題について検討を行っており、9年5月を目途に報告を取りまとめることとしている。

第2-2-2図 通信放送融合のイメージ
第2-2-2図 通信放送融合のイメージ

 

 

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