平成9年版 通信白書

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第1章 平成8年情報通信の現況

(3) 企業における情報化の動向

 近年、情報通信の著しい進展により、企業における情報化が進んでいる。これにより、企業活動の仕組みが大きく変わりつつあり、企業にとって情報通信の有効活用が不可欠なものとなっている。ここでは、企業の情報化の動向を、各メディアの利用状況から分析する。
ア 企業の情報通信利用動向
 郵政省が行った「平成8年度通信利用動向調査(企業対象調査)」(8年9月)によると、企業内の情報化が着実に進んでいることが分かる。
(ア) 電子メールの利用状況
 8年度調査における電子メール利用状況を見ると、産業平均で約半数の企業が電子メールを既に利用しており、7年度と比較して21.1ポイントの大幅な上昇となった。具体的な利用予定のある企業まで含めると、約7割の企業での利用が見込まれている。業態別に利用率を見ると、金融・保険業と製造業が他に比べ高く、運輸・通信業と卸売・小売、飲食店が低くなっている(第1-4-29図参照)。これらは、各業態における、企業内・企業間コミュニケーションの特性及びコンピュータ・ネットワーク等の情報化の整備状況によるところが大きいと考えられる。
 今回調査で初めて電子メールを社内外で利用している企業が、自社内に限った利用をしている企業の割合を上回り約6割となった。このことは、電子メールが内部に対する情報伝達手段から外部に対する情報伝達手段として企業に浸透してきたものといえる。また、電子メール利用による具体的な成果として、半数以上の企業が「情報の共有化が進んだ」、約4割の企業が「業務が効率化できた」としている。
(イ) LANの利用状況
 8年度調査におけるLAN利用状況を見ると、産業平均で約7割の企業がLANを既に利用しており、7年度と比較し13.4ポイントの上昇となった。具体的な利用予定のある企業まで含めると、約8割の企業での利用が見込まれている。業態別で見ると、金融・保険業が最も高く、製造業、建設業と続いている(第1-4-30図参照)。
 LAN構築で解決する課題としては、約7割の企業が「業務情報やデータの共有化」としている。
(ウ) インターネットの利用状況
 近年急激な発展を示すインターネットの8年度調査における利用状況を見ると、産業平均で半数以上の企業がインターネットを利用しており、7年度と比較して38.8ポイントの大幅な上昇となった(第1-4-31図参照)。インターネットの利用方法では、「情報提供・宣伝媒体」としての利用が、7年度と比較し15.6ポイント上昇と最も増加した。また、7年度で回答が多かった「とりあえず利用して様子をみてみる」、「活用方法は社員個々に任せている」といった、利用方法を模索している回答が減り、具体的な利用方法が多くなった。
(エ) イントラネットの導入状況
 8年度調査におけるイントラネット導入状況について見ると、インターネットを利用している企業のうち13%がイントラネットを導入しており、具体的な導入の予定がある企業と合わせると約4割の企業で利用が見込まれている(第1-4-32図参照)。
イ 勤務形態の変化
 情報通信技術の進歩、企業における情報化の進展等により、場所に依存しない勤務形態が可能となっている。ここでは、その代表的な例であるテレワークの動向を中心に企業における勤務形態の変化について分析する。
(ア) テレワークの形態
 テレワークの形態としては、サテライトオフィス勤務、在宅勤務、直行直帰、モバイルワーク等がある。モバイルワークとは、いわゆる「どこでもオフィス」と呼ばれている勤務形態であり、外出・出張先から携帯電話、PHS、携帯端末等を活用して、情報を提供し、報告を行う勤務形態である。
 なお、自宅や小さな事務所を活用する形態であるSOHO(Small Office Home Office)も近年注目を集めている。
(イ) 日本におけるテレワークの動向
 (財)日本サテライトオフィス協会の調査(8年2月)によると、7年現在の日本の総テレワーク人口は94.7万人であるが、米国におけるテレワークの普及過程やパソコン、LANの普及ペース等を勘案すると2000年のテレワーク人口の予測は、約350万人に増大するものと見込まれる。
 しかし、現在のテレワークに対する企業の対応を見ると、まだまだ導入計画は少ないことが分かる。実際に導入している企業は1%未満であり、検討中を含めても在宅勤務制度が8.8%、サテライトオフィス制度が5.8%にとどまっている(第1-4-33図参照)。
 また、テレワーク時のオフィスへの報告手段では、電子メールの利用が前年度の2倍以上になっており、電子メールの普及が通信手段にも変化を及ぼしている。
(ウ) 在宅勤務・モバイルワーク事例
 神奈川県にあるB社は、自社のイントラネットに自宅や外出先・出張先からアクセスできるシステムを導入した(第1-4-34図参照)。
 このシステムでは、自社のサーバーへのアクセス手段として、自宅からの在宅勤務では、自宅のパソコンとモデムを利用した公衆電話網経由のアクセス、外出先・出張先からのモバイルワークでは、ノートパソコンと携帯電話を利用した携帯電話網経由のアクセスを採用している。さらに、社外の人間のアクセスを防止するためのセキュリティ対策として、ID・パスワードを利用して、事前に登録してある電話番号へのコールバックを行うシステムを採用している。これにより、利用者の電話料金の負担を軽減することにも成功している。利用者の反応としては、「土日や早朝・深夜でも電子メールを自由に送受信でき、迅速なコミュニケーションが図れる」という声が多い。
ウ エクストラネット
 エクストラネットとは、異なる企業がそれぞれ持つイントラネットを、インターネットで結んだネットワークである(第1-4-35図参照)。イントラネットを持つ企業同士が、エクストラネットを利用して、顧客情報等を共有することができる。顧客情報や販売情報を共有することで、コストの削減、納期の短縮、営業力の強化、顧客サービスの向上が図れる仕組みである。また、比較的安価にシステムを構築でき、イントラネットを持つ企業であれば柔軟に連携相手を選択できるというメリットもある。

第1-4-29図 電子メールの利用率
第1-4-29図 電子メールの利用率

第1-4-30図 LANの利用率
第1-4-30図 LANの利用率

第1-4-31図 インターネットの利用率
第1-4-31図 インターネットの利用率

第1-4-32図 イントラネットの導入状況
第1-4-32図 イントラネットの導入状況

第1-4-33図 日本のテレワークの動向
第1-4-33図 日本のテレワークの動向

第1-4-34図 B社のテレワークシステム図
第1-4-34図 B社のテレワークシステム図

 

 

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