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第Ⅰ部 特集 AIの進展がもたらす多面的影響〜人間とAIが健全に協働するデジタル社会の実現に向けて〜
第1節 企業におけるAI利用の現状

(3) 製造・生産

製造業においては、ダイキン工業が取り組む「熟練工AIエージェント」や「故障診断AIエージェント」が事例として挙げられる。ダイキン工業は、現場を担ってきた熟練のエンジニアが将来的に減少することが見込まれているところ、フェアリーデバイセズ社のウェアラブル端末を現場のサービスエンジニア(SE)に着用させて撮影した作業映像を基に、空調機の点検・修理作業の抜け漏れを自動チェックし、その結果をSEのスマートフォンに通知する熟練工AIエージェントを自社開発した。この取組は、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主催の「GENIAC-PRIZE」において、最高賞「第1位」と特別賞「AIエージェント賞」を受賞した67

加えて、設備の点検において異常を発見した際、タブレット端末などを用いてテキストで質問すると、その異常が故障かどうか、故障の場合には原因や対策も提示する「故障診断AIエージェント」を日立製作所と共同で開発・導入している(図表Ⅰ-2-1-13)。ダイキン工業が蓄積してきた設備図面や過去の保全記録などをグラフ構造で表現するデータモデル(ナレッジグラフ)として取り込んでおり、多言語対応で海外拠点でも利用できるとしている。今後は、過去の故障履歴だけでなく、設備の制御についてもAIエージェントに対応してほしいという声が上がっているという8

図表Ⅰ-2-1-13 設備故障診断を支援するAIエージェント(ダイキン工業・日立製作所)
(出典)ダイキン工業・日立製作所「ダイキンと日立が協創、工場の設備故障診断を支援するAIエージェントの実用化に向けた試験運用を開始」9

また、システムの開発におけるAI活用の事例としては、NTTデータや伊藤忠テクノソリューションズの事例が挙げられる。NTTデータは、システム開発にAI技術を活用することで、システム開発の工程そのものをAI中心に変革する「AIネーティブ開発」に取り組むとしている。システム開発における要件定義、設計、開発、テストといった工程について、従来の人による開発では、必要な機能を決める要件定義の後、設計図を作成し、それからプログラミング作業に移っていた。「AIネーティブ開発」では、AIが顧客企業の要望を分析して要件定義書を作成すると、別のAIがプログラミングに取り組むことで、全体の開発工程を減らすことができるという。人間のIT技術者は、AIが作成したプログラムの点検や工程全体の管理に特化し、動作不良や改善点があればAIに指示を出して修正をさせるとしている10

伊藤忠テクノソリューションズも、システム開発の要件定義において、顧客との会話に基づく業務フローの生成、改善の提案、書類の作成までAIが支援する「Acsim」を提供している(図表Ⅰ-2-1-14)。Acsimは、AIスタートアップの株式会社ROUTE06が開発したシステムであり、これを活用することで、従来1か月以上かかっていた要件定義のプロトタイピングを1時間に短縮できるという。また、効果測定も自動で作成することができ、開発稟議をスムーズに進めることにも貢献できるとしている。Acsimには、高度なスキルが必要とされるシステム開発の上流工程を標準化、自動化し、属人的な作業を削減、誰もが高品質な成果を出せるといった効果が見込まれているという1112

図表Ⅰ-2-1-14 システム開発の要件定義におけるAI活用(伊藤忠テクノソリューションズ・ROUTE06)
(出典)伊藤忠テクノソリューションズ「AIで要件定義を支援する「Acsim」の提供を開始」


6 日経クロステック(2025年2月26日)近岡 裕「ダイキンがサービス支援AIを内製、活用進めた4度の「偶然の出会い」」〈https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/10313/別ウィンドウで開きます〉(2026年3月25日参照)

7 ダイキン工業(2026年3月25日)「ダイキンとフェアリーデバイセズが開発するAIエージェントが経済産業省とNEDO主催の「GENIAC-PRIZE」で最高賞「第1位」と特別賞「AIエージェント賞」をダブル受賞」〈https://www.daikin.co.jp/press/2026/20260325別ウィンドウで開きます〉(2026年3月26日、4月5日参照)

8 日経クロステック(2026年1月15日)高市 清治「チャットで聞けば故障対応も一目瞭然、外国人への技能継承も視野に」〈https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00182/00003/別ウィンドウで開きます〉(2026年3月25日参照)

9 ダイキン工業・日立製作所(2025年4月22日)「ダイキンと日立が協創、工場の設備故障診断を支援するAIエージェントの実用化に向けた試験運用を開始」〈https://www.hitachi.com/ja-jp/press/articles/2025/04/0422/別ウィンドウで開きます〉(2026年4月5日参照)

10 日本経済新聞(2025年12月31日)「生成AIがシステム丸ごと開発 NTTデータ、IT人材不足に抜本策」〈https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC254OB0V21C25A2000000/?msockid=2b6cac6ec2066e1e08b4bacac3146fd0別ウィンドウで開きます〉(2026年2月25日参照)

11 伊藤忠テクノソリューションズ(2025年12月24日)「AIで要件定義を支援する「Acsim」の提供を開始」〈https://www.ctc-g.co.jp/news/release/20251224-02014.html別ウィンドウで開きます〉(2026年3月26日参照)

12 伊藤忠テクノソリューションズ「Acsim」〈https://www.ctc-g.co.jp/keys/product/acsim別ウィンドウで開きます〉(2026年3月26日参照)

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