本調査でヒアリングを実施したAI活用先進企業の一部には、生成AIの登場以前から、一部業務において従来型の機械学習によるAIを業務に取り入れていた企業もあるが、生成AIの登場以降、より幅広い領域での効果創出に向け、各社段階的な取組を進めている。
段階的な取組の第一歩として、まずは比較的安価で導入しやすい汎用AIを、社員の個人作業で活用することを組織的に浸透させることにより、AIの特性と適用可能な業務への理解を社内全体で深めていくことが考えられる。その上で、自社の経営戦略・経営方針に基づき人間と生成AIとの協業の在り方を検討・定義し、組織的な取組として、業務プロセス全体をAI前提で変革していくことが考えられる(図表Ⅰ-2-1-23)。
個人作業の効率化という観点では、ChatGPTやGeminiなどの汎用的な生成AIツールを導入することのみでも一定の効果を見込めるため、まずは少ない投資で、社員が安全に汎用的なAIツールを活用できる環境を構築することから開始することが考えられる。社員が個人の判断でAIを業務に使用する「シャドーAI」は、入力した機密情報の流出等のリスクを孕む。企業内に、情報漏えい対策等を適切に施した生成AIの活用環境を整備し、あわせて、利用時のルールやガイドラインを整備・周知することで、生成AIを個人作業の効率化のために安全に活用できるようになる。
ただし、汎用的なAIツールが導入されても一部の積極的な社員が活用するのみで、全社的な活用と効果創出に至らない可能性もある。本調査でヒアリングを実施したAI活用先進企業は、生成AIの活用環境の整備で終わらせず、活用ユースケースの収集や社内展開、定期的なワークショップ開催など、具体的な活用シーンと効果を実感できるような活用促進策を実施することにより、会社全体への浸透を実現している。なかでも、日清食品グループ(図表Ⅰ-2-1-24)では、生成AIの活用効果を見込める対象業務を部門ごとに選定した上で、プロンプトのテンプレート(ひな形)を作成し、AI活用効果を測定する取組を少しずつ社内展開していった結果、社内の生成AI利用率が直近では7割超にも到達しているという。
次に、AI活用を前提とした業務の変革においては、企業の経営戦略や成長戦略に基づき、経営層の判断でAI活用に優先的に取り組むべき業務領域を検討し、当該業務領域の特性や人間が負うべき責任の範囲を見極めることが重要である。その上で、業務プロセス全体において「どのタスクはAIを人間の思考や判断の補助として用い、どのタスクはAIに自律的に実行させるべきか」といった点を検討し、業務プロセス全体を設計していく必要がある。また、社内システムや社内データとAIの連携等を進めていくに当たっては、投資判断を含めた組織的な取組が求められていくと考えられる。
42 日清食品ホールディングス(2024)「生成AI活用の取り組み」(2024年3月期テーマ別IR資料 P5)〈https://media.www.nissin.com/jp/company/ir/library/event/pdf/20240314_2.pdf
〉(2026年4月6日参照)