AIを巡る課題への対応も含め、AIに関する日本の制度的な取組は、本特集の「はじめに」でも見たように、2025年5月に制定され同年9月から全面施行されたAI法や、同年12月に閣議決定されたAI基本計画の下、「イノベーション促進とリスク対応の両立」を一層徹底することにより、人とAIが絶えず協働できるよう、個人の尊厳が尊重される人間中心のAI社会を堅持しつつ、「信頼できるAI」を追求していくこととしている。2025年12月には、AI法に基づいて「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」が策定され、各主体において取り組むべき事項が示されている(図表Ⅰ-3-3-1)。
日本は、こうしたAI法の制定等の以前から、進化の速度が速いAI技術の特性を踏まえ、イノベーションの推進を妨げないよう、各分野の実情に応じ、ガイドラインを通じたソフトローによるガバナンスに取り組んできた。加えて、OECDにおけるAI原則の策定に向けた議論への積極的なインプット、広島AIプロセスの立ち上げと推進、ASEAN等とのAI分野における協力の推進等、国際的な議論・国際連携においてもリーダーシップを発揮してきたところである。
国内のガイドラインは、AI法の制定やAI基本計画の決定以降も、これらAI法等と整合しながら、各分野の特性を踏まえた具体的な指針を示すものとして位置づけられており、AI研究開発機関、AI活用事業者等に対し、自発的かつ能動的な取組を行うよう促している(図表Ⅰ-3-3-2)。
例えば、本章第1節や第2節で採り上げたような点に関しては、総務省・経済産業省が策定する「AI事業者ガイドライン」において、「各主体は、主体内のAIに関わる者が、AIの正しい理解及び社会的に正しい利用ができる知識・リテラシー・倫理観を持つために、必要な教育を行うことが期待される。また、各主体は、AIの複雑性、誤情報といった特性及び意図的な悪用の可能性もあることを勘案して、ステークホルダーに対しても教育を行うことが期待される。」と示されている3。
また、ガイドラインではないものの、総務省は、例えば「生成AIはじめの一歩 〜生成AIの入門的な使い方と注意点〜」を公表しており、人々が生成AIを適切に利活用できるリテラシーを自分自身で身に付けることができるよう、生成AIの基礎知識、活用場面や入門的な使い方、活用時の注意点を紹介しており(図表Ⅰ-3-3-3)誰ひとり取り残さないAI社会に向けた環境整備に取り組んでいくこととしている。
1 内閣府(2025)「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針の概要」 〈https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_guideline/ai_gl_2025g.pdf
〉(2026年3月30日、4月7日参照)
2 内閣府「人工知能に関する各府省庁等のガイドライン等一覧」〈https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_guideline/ai_gl_list.pdf
〉(2026年6月8日参照)
3 総務省・経済産業省(2026)「「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編」〈https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf
〉(2026年4月7日参照)
4 総務省「生成AIはじめの一歩〜生成AIの入門的な使い方と注意点〜」(上手にネットと付き合おう〜安心・安全なインターネット利用ガイド)〈https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/special/generativeai/
〉(2026年4月7日参照)