昭和54年版 通信白書

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3 今後の展望

 以上の各章において,まず一つの文化現象としての主要通信メディアの現状と,その発展の道筋を取り上げてみた。その高度に発達し,全国的に普及した状況は,成熟の段階に到達し,需要を充足したといえる。次に,通信の文化的役割について,いくつかの主要な視点からこれを取り上げるとともに,最近の社会経済の高度化と技術の進歩が生み出す新しい潮流を展望してきた。
 このような新しい潮流の中にあって,我が国をはじめとする主要先進国は共通に今後の通信の果たすべき役割を重視し,新しい政策を模索しまたは展開しようとしている。また,大量情報時代がもたらすメディア構造の変化への対応の仕方,或は,電子計算機と結びついた情報処理や宇宙開発の将来展望などとも関連した通信政策の今後の展開についてOECDをはじめとする国際機関のレベルで,問題解決にあたって行こうという気運が盛り上がって来ている。
 国土が狭く,資源に乏しい我が国は,その豊富な労働力と高い知識水準を活用して今日の繁栄を築いて来た。我が国が今後共その繁栄を維持し,国際社会に貢献して行くためには,ややもすれば我が国民性の欠点といわれがちな,情報の整理,活用の不慣れ,論理的展開の不十分さなどを克服しつつ,知識活動の高度化をはかることが必要である。ことに,その活用の促進をはかるため情報化社会における新しい知識体系の結晶ともいうべき,各種のデータベースの活用が望まれ,そのオンライン化が今後の重要な課題となろう。また,新しい技術の開発を促進しつつ,その成果を国民に還元して行くという見地から,高度で経済的なシステムの展開をめざし,新しいメディアの定着と日常化のために努力を払うとともに,新しい領域に対する制度の整備にあたっては,未来に対し柔軟に対応する姿勢が肝要である。更に,国際交流の促進と情報のフリーフロー等が論議されている国際社会の潮流に適切に対処する施策の展開が求められる。
 今後,情報化は国際的な広がりをますます強くし,その重要性を増すと考えられるが,より一層平素からの関係国間の相互理解,相互協力の機会を多くし,そのパイプを太くし,またその度合いを深くするよう努めなければならない。
 明日から眼前に広がる新しい情報通信の時代,言わば近代通信の第2世紀は,知的活動の時代であり,情報活用の時代であるといえよう。情報活用のための諸技術,適切な情報活用による経済の発展,国際協力が求められ,新しい文化の展開が期待されている。コミュニケーションは,そのための有力な武器であると同時に,新しいコミュニケーションの創造は,新しい文化の創造であるといえよう。

 

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