昭和54年版 通信白書

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6 電離圏の観測

 電離圏は,地球を取り囲む大気の中で,電波の伝わり方に影響を及ぼし得る量の電子が存在する約60km以上の領域を言い,地球環境として社会生活に重要であるばかりでなく,無線通信に用いられる広範な周波数領域の電波の伝わり方に重要な役割を果たす。
 電離圏内に形成されるいくつかの層は,無線通信に不可欠な伝搬媒体ではあるが,その反面,地上100km付近に夏季発生するスポラディックE層によるVHF帯電波の混信,電離層F層中の電子の乱れにより発生するGHz帯の衛星通信用電波のシンチレーションなど不都合なことを起す原因ともなっている。
 電波研究所では,国内5か所(稚内,秋田,国分寺,山川,沖縄)及び南極・昭和基地において,高性能の電離層観測装置を用いて15分ごとに休みなく観測を続けている。
 一方,53年2月16日に打ち上げられた国産の電離層観測衛星(ISS-b)「うめ2号」は,全地球上の電離層等を効率的に観測するもので,53年4月24日からは電波研究所による定常運用に入り,現在,電離層,空電,プラズマ特性等に関する貴重な情報を地上に送ってきている。その成果として,世界で初めてF層臨界周波数の世界分布図を完成し,また,雷発生率の世界分布図も逐次得られており,その成果に対し国の内外から信頼と期待が寄せられている。
 このように,衛星と地上から観測を組み合わせることにより,立体的に世界の電離層の状況を監視する体制が確立されつつあり,従来の電波警報(太陽フレア又は磁気嵐に起因するHF帯通信のじょう乱予報)も拡張して広い周波数帯にわたる無線通信の障害を予報するための研究も行われている。
 また,磁気圏の国際観測計画(IMS1976〜1979年)にも参加し,地球環境の監視に電離圏観測技術が役立てられている。観測の完全自動化については,調査,実験を昨年度に引き続き実施中である。

 

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