昭和54年版 通信白書

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4 電離層観測衛星の運用

 電離層観測衛星(ISS-b「うめ2号」)は,53年2月16日の打上げから約2か月間の初期段階の運用を経て,53年4月24日から電波研究所による定常運用業務に供されている。定常運用開始から約1年を経過した現在においても,衛星各部機器は順調に動作しており,53年度定常運用期間(53年4月24日〜54年3月31日)中に全経度範囲に分布する782地球周回分の観測データが取得されている。ISS-bは,限られた地球局(電波研究所鹿島支所等)で運用されるため,衛星の一周回分の観測データをとう載テープレコーダに記録し,地球局の可視域内で全記録データを地上に降ろすことができ,また,観測経度を任意に選択するため,観測記録開始時刻を遅延コマンドで指示できるように設計されている。
 ISS-bのコマンド,テレメトリ等の管制運用は鹿島支所において行い,取得データの処理・解析は電波研究所本所において行っている。
 ISS-bの電離層観測(TOP)により,衛星軌道に沿って衛星直下点における電離層臨界周波数(f02)が得られる。毎日3ないし4衛星周回軌道に沿ったf02の分布が得られており,その結果は毎日電波研究所平磯支所にファクシミリ伝送され,電波警報資料として利用されている。また,f02データを4か月間蓄積した後,電離層臨界周波数の世界分布図を作成し,アトラスとして出版している。この結果から短波の伝搬状況を予測することができる。このほか,電離層観測によって得られるイオノグラム(周波数対エコー見掛け距離の関係を示すデータ)から散乱エコーを検出することにより,散乱源発生頻度の世界分布図が得られている。
 ISS-bの電波雑音観測(RAN)により,雷放電に伴う空電を検出し,空電発生ひん度の世界分布図が得られている。また,ISS-bのイオン組成観測(PIC)及びプラズマ観測(RPT)により,衛星近傍に存在するイオン組成(水素イオン,ヘリウムイオン,酸素イオン等)及び電離気体(プラズマ)の密度,温度が測定されており,これら諸量の世界分布図が得られている。
 ISS-bは順調に動作し,目的とした電離層パラメータ及び電波雑音の世界分布図が得られており,諸外国の衛星観測では得られなかった画期的な結果が次々と求められつつあり,ISS-bの成果は国の内外から高く評価されている。

 

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