昭和54年版 通信白書

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5 国際海事衛星機構(INMARSAT)

(1) インマルサット条約の署名等の状況

 国際海事衛星機構(インマルサット)は,海事通信を改善するために必要な宇宙部分の提供を目的とする組織として設立が構想され,3回にわたる政府間会議における審議の結果,1976年9月3日にインマルサットに関する条約及び同運用協定が採択され,同日以降署名のために開放されている。1979年3月31日現在における条約及び運用協定の署名等の状況は第2-8-8表のとおりである。
 条約が発効するためには当初出資率の95%を代表する国が締約国となる必要があるが,所要の手続を了して締約国になっているのは,米国,ソ連,ノールウェー,日本,クウェイト,スペイン,オーストラリア,インド,ニュー・ジーランド,エジプト,白ロシア及びウクライナの12か国で,当初出資率の合計は68.94%である。
 なお,我が国は,条約については1977年3月22日に受諾を条件として署名を行い,第84国会において承認を受けた後,同年11月25日に受諾した。一方,運用協定については,1977年3月22日に国際電電をこれに署名する事業体として指定し,同社は同年4月7日に署名を行った。

(2) 準備委員会の活動

 政府間会議の決議に基づき,インマルサットの発足に備えて諸準備を行うことを目的として準備委員会が設立され,1977年1月から活動を開始した。
付託された主要任務は,陸上及び船上地球局の技術基準の研究,宇宙部分施設に関する研究,管理業務契約者に関する研究,事務局組織に関する研究,機構の諸規則の準備,本部協定締結の準備等である。
 1979年3月現在の準備委員会参加国は,オーストラリア,ベルギー,ブラジル,ブルガリア,カナダ,デンマーク,フィンランド,フランス,西独,ギリシャ,インド,イタリア,日本,クウェイト,オランダ,ニュー・ジーランド,ノールウェー,スペイン,スウェーデン,ソ連,英国及び米国の22か国である。
 実質的な作業は,準備委員会の下に設置された技術,経済及び組織の3パネルにおいて行われてきたが,各パネルとも1978年6月から7月にかけて開かれた第4回会合をもって作業を終了した。準備委員会は,第3回(7月19日〜21日)及び第4回(12月18日〜22日)会合において,各パネルからの報告を基礎に更に所要の検討を加えた上で政府間会議の参加国政府に対して提出する付託事項の研究結果の暫定報告(最終報告は,発足後のインマルサットに提出される。)を採択,これによりその任務の大部分を終了した。

(3) 宇宙部分をめぐる動き

 準備委員会も,宇宙部分システムについての検討を行ってきた。しかし,準備委員会は決定をする権限を有さず,一方,現用中のマリサット・システムが設計寿命に達する1981年からインマルサットのシステムが運用可能となるためにはインマルサット発足以前に調達作業を開始する必要があるので,宇宙部分の決定・調達を行いこれをインマルサットに引き継ぐことを目的とするジョイント・ベンチャー組織の設立が構想され,その準備のための会合が1977年10月からたびたび開催されて準備委員会のメンバの大部分がこれに参加した。結局,インマルサットの発足が間近に予想されるに至ったために,1979年3月の会合でジョイント・ベンチャーは設立されないことになったが,準備委員会及びジョイント・ベンチャー設立のための会合を通じて,多くの国が海事通信用部分をとう載したインテルサットV号系衛星3個及びヨーロッパ宇宙機関(ESA)が開発中のマレックス衛星3個からなるシステムに対する支持を明らかにし,これに基づいてインテルサット理事会が,インテルサットV号系衛星の5,6及び7号機に海事通信用部分をとう載することを決定して必要な手続を開始する等インマルサットが早期に宇宙部分を取得し得る可能性は大きく高まった。

第2-8-8表 インマルサット条約及び同運用協定の署名等の状況(1979.3.31現在)(1)

第2-8-8表 インマルサット条約及び同運用協定の署名等の状況(1979.3.31現在)(2)

 

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