昭和54年版 通信白書

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4 国際電気通信衛星機構(INTELSAT)

(1) 概   要

 インテルサットは,通信衛星を利用して国際通信を行うための組織であり,1964年8月,暫定的制度として発足した。その後,数次にわたる国際会議を経て,1973年2月「国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定」及び「国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する運用協定」が発効し,恒久的制度が成立した。
 両協定のうち,前者はインテルサットに参加する政府が署名する政府間協定であって,機構の組織構成等の基本的事項を規定し,後者は,政府が指定する電気通信事業体が署名し,機構の財政的,運用的側面に関する事項を定めている。
 我が国は,暫定的制度発足時からインテルサットに参加しており,インテルサットに出資し,その運営に参画する電気通信事業体として,国際電電を指定している。
 なお,インテルサットのメンバは,1979年3月31日現在102である。

(2) インテルサットの組織構成

 インテルサットの組織は,政府間協定の全締約国で構成する締約国総会,運用協定の全署名当事者で構成する署名当事者総会,出資率の大きさ又は地域配分により選定される署名当事者の代表で構成する理事会及び理事会に属し管理業務を遂行する事務局の4者構成となっている。

(3) 第3回締約国総会

 締約国総会は,主権国としての締約国に主として関係のあるものを審議し,インテルサットの一般方針及び長期目標を審議することなどを任務としている。第3回締約国総会は,1978年10月9日から13日まで,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された。概要は次のとおりである。
ア.仲裁裁判所の構成員の選出
 インテルサットに関する紛争を処理する仲裁裁判所の裁判長団構成員の選挙が行われ,我が国の1名を含め,11名が選出された。
イ.特権及び免除に関する議定書採択会議についての事務局長の報告
 1978年5月8日から19日までワシントンで開催されたこの会議には,64のインテルサット締約国が参加し,全会一致でインテルサット及びその職員並びにメンバ等に対する特権及び免除について定めた議定書が採択されたことが事務局長から報告された(なお,この議定書は,12か国が締約国となることを発効要件としているが,1979年3月31日現在,締約国数は2である。)。
ウ.開発途上国の地球局建設援助に関する提案に対する理事会の検討結果の報告
 1976年の第2回締約国総会において,インテルサットの中に開発途上国の地球局建設のための基金を創設することが提案され,理事会の検討に委ねられていたが,これについて理事会議長から,この提案はインテルサット協定及び同運用協定と両立しないが,これに代わるものとして理事会に提出されたインテルサット事務局内に技術上及び財政上の問題に関する諮問に応ずるための要員を配置し,特に開発途上国に対するコンサルティング・サービスを提供するという提案については,インテルサット協定に定める主目標を阻害しないとの結論に達した旨の報告が行われた。
エ.締約国等がインテルサット宇宙部分と別個の宇宙部分施設を設定することを意図する場合のインテルサットとの協議
 次の2件につき,いずれもインテルサットのシステムに技術的あるいは経済的な影響を与えないとの認定を,理事会の助言に基づき勧告の形式で表明した。
[1] インドのインサット国内衛星ネットワークの気象業務用部分
[2] マリサット・システム用の山口海岸局(ただし,1981年を超えて運用される場合には,新たな協議が必要であるとされた。)
オ.標準B地球局に適用される衛星使用料の再検討
 開発途上国に多い標準B地球局(アンテナ直径約10m)に適用される衛星使用料は,標準A地球局(アンテナ直径約30m)に適用される衛星使用料の1.5倍と定められているが,これを同一とすることの可能性を検討すること,もし同一とすることが不可能であれば,現行の係数1.5を再検討することを求める提案が提出された。これに対し,理事会議長から,現行の係数1.5を適当なものとして実施しているが,今後理事会において適宜検討することとなっているとの回答があった。

(4) 第7回署名当事者総会

 署名当事者総会は,理事会から提出されるインテルサットの活動に関する年次報告,将来計画に関する報告等を審議し,署名当事者又は署名当事者の集団に対し,理事会において代表される資格を与える最小出資率を決定することなどを任務としている。第7回署名当事者総会は,1978年4月18日から21日までイランのテヘランにおいて開催され,理事会の諸報告を審議するとともに,前述の最小出資率を1.40%とすることを決定した。

(5) 理事会

 理事会は,インテルサットの宇宙部分の企画,開発,建設,設定及び維持について責任を有しており,インテルサット運営の中心的機関である。理事会のメンバは,1979年3月31日現在,出資率の大きさによって選出される理事23,地域グループの代表である理事4の計27である。これらの理事が代表する国は全部で84か国であり,その内訳は第2-8-5表のとおりである。
 なお,1978年12月31日現在のインテルサットに対する各国の署名当事者の持分の合計は4億6,902万米ドルである。
 理事会は,ほぼ,2か月に1度開催され,1978年度においては,第33回から第37回まで5回開催された。理事会には,技術及び計画の2諮問委員会並びに予算・会計審査委員会があり,理事会の活動を補佐している。
 本年度における理事会の主要な活動は次のとおりである。
ア.恒久的管理措置の実施
 インテルサットは,1973年の恒久的制度への移行後も暫定的措置として,米国衛星通信会社(コムサット)と管理業務契約を結び,運用上,技術上の管理業務の大部分を行わせてきたが,1978年12月31日をもって管理業務契約は終了し,代わってインテルサットの業務遂行を補完するためとの趣旨で次の4種の契約がコムサットと締結された。
[1] 技術業務契約一将来の衛星システムの技術特性に関するもの(4年)並びに衛星機器の製作及び軌道上運用に関するもの(6年)
[2] 研究業務契約(3年)
[3] システム計画研究支援のための過渡的契約(1年)
[4] TTC&M(追跡,遠隔測定,指令及び監視)ネットワーク及び衛星管制センタ支援のための保守供給契約
 なお,恒久的管理体制下の事務局構成は第2-8-6図のとおりである。
イ.インテルサット援助開発計画
 開発途上国の地球局建設援助に関する提案との関係で,技術上,財政上の問題に関するコンサルティング・サービスを行うことを内容とするインテルサット援助開発計画が採択された。現在,事務局のビジネス計画室が担当している。
ウ.海事衛星通信業務の提供
 インテルサット準備委員会等の動きを受けて,インテルサットV号系衛星の5,6及び7号機に海事通信サブシステム(MCS)をとう載することを決定した。
エ.V号系衛星の打上げロケット
 インテルサットV号系衛星の5,6及び7号機については,原則としてそのうちの1つを欧州のアリアン・ロケットにより,他の2つを米国のスペース・シャトルにより打ち上げることになった。なお,1号機から4号機までは米国のアトラス・セントール・ロケットにより打ち上げられることになっている。

(6) インテルサットの衛星システム

 1979年3月31日現在,電話4千回線及びテレビ2チャンネル分の容量を持
つIV号系衛星と,これにトランスポンダ数の増加,スポット・ビームによる周波数の再使用等といった改良が加えられ,電話6千回線及びテレビ2チャンネル分の容量を持つIV-A号系衛星とが運用に供されている。IV-A号系衛星は,従来の大西洋地域に加え,インド洋地域においても1978年11月19日から運用が開始された。
 衛星の配置及び使用状況は第2-8-7表のとおり,トランスポンダ・リースは,15か国の署名当事者(20件)に対して行っている。

第2-8-5表 インテルサットに対する理事の出資率(1979.3.1現在)

第2-8-6図 インテルサット事務局の構成

第2-8-7表 インテルサットの運用衛星の配置使用状況(1979.1.31現在)

 

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