昭和54年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

6 漏えい同軸ケーブル方式による新幹線の列車無線システム

 漏えい同軸ケーブル(Leaky Coaxial Cable 以下「LCX」と言う。)方式は,従来,地下街等における消防活動をより円滑に行うための無線通信補助施設や,列車無線システムにおけるトンネル内の不感対策等陸上移動通信システムの一部に導入され,通信系を補完するため有効に利用されてきた。
 LCX方式による移動通信システムは,施設費が高いこと等の不利な点はあるが,
ア.電波の放射がケーブルに沿ってほぼ一様であるため,地形等の影響を受けることなく,良好な回線品質を全区間にわたり一様に得ることができること。
イ.従来の空中線を使用する方式の場合のように,必要としない地域にまでも電波を放射することはないこと。
ウ.電波の漏えい周波数帯域を広くすることができ,更に電界のレベルが一様なため相互変調妨害が少なく,多くのチャンネルが一括して伝送できること。
エ.スロット(ケーブルの外部導体に,電波の放射又は,受信用の窓)の形状により,電波の漏えい比率を加減することができること。
などの特長があり,周波数の有効利用,高品質の通信の確保に優れた性質を有している。
 国鉄においては,このLCX方式の特長に着目し,55年度末開業を目標として建設を進めている東北,上越新幹線の列車無線については,トンネル区間の多いことのほか,東京周辺部においては,電波がふくそうしていることなどから,全区間にLCX方式を採用する計画を立て,この計画に先だち,LCX方式による新幹線列車無線システムの各種の確認試験を行うため,東北新幹線の一部である栃木県小山市を中心に約43kmの区間に試験線区を設け,53年6月に実験局(基地局相当1局,移動局相当2局にて,いずれも400MHz帯24チャンネル空中線電力5W)を開設した。実験は,東北,上越新幹線の営業開始まで続けられる予定であり,通話試験,外来雑音による影響の調査,移動系及び基地系間の相互変調妨害特性の調査,データ伝送試験等各種の試験,調査が実施されることになっている。

 

5 自動車公衆無線電話方式 に戻る 7 マイクロ波帯多重通信方式 に進む