平成14年版 情報通信白書

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第1章 特集 IT活用型社会の胎動

4 健全なネットワーク環境の確保に向けた課題

−ユーザー意識の向上と技術・サービスによる対応

(1)セキュリティ技術/サービス
 情報セキュリティを確保し健全なネットワーク社会を育成するためには、これらに対応した技術やサービスの開発が急務となっている。以下では、現在取り組まれている主な技術やサービスの開発状況等について、その概要をみていくこととする。

1)不正アクセス等に対する技術
(i)ファイアウォール
 外部からのアクセスを制御するファイアウォールは、ネットワークセキュリティの基本技術として広く普及している。従来のゲートウェイ型に加え、サーバーごとに組み込むホストベース型のものが普及しつつあり、効果を高めるためこれらを組み合わせるケースもみられる(図表1))。

(ii)アンチウイルスツール
 コンピュータウイルスを検出・駆除するツールは、最新のウイルス情報が組み込まれたパターンファイルを頻繁に更新する必要がある。そこで、管理者の負担を軽減するため、統合的な管理技術やサービスの開発が進んでいる。また、未知のウイルスの検出等についても研究が進められている。

(iii)IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)
 IDSは、ホストへのアクセスやネットワーク上の通信を監視し、不正侵入を検知した場合に警報を発するツールである。そのシステムの存在を侵入者に隠すためのIPアドレスを付与しないステルス接続の実用化、性能の評価基準の確立等といった課題が検討されている。

(iv)不正アクセス発信源追跡
 インターネットを介した不正アクセスの抑止を徹底するためには、その発信源を追跡し、突き止めることが有効である。そこで、パケットの発信源の特定を可能にするIPトレースパック技術の研究開発が進められている。

2)ネットワーク環境の健全性確保に向けた技術
(i)バイオメトリクス
 バイオメトリクスとは、指紋や瞳の光彩、声紋、筆跡等、利用者個人に固有の生体情報を用いて本人認証を行う技術であり、入退室管理やネットワークへのログインの認証等、実利用も進んでいる。

(ii)コンテンツ・フィルタリング
 コンテンツ・フィルタリングとは、子供が閲覧するのに不適切なサイト等を、事前にその程度や内容に応じてリスト化(レイティング)しておき、必要に応じてこれらへのアクセスを制御する目的で利用されるツールである。現在は、サイトに記載された文章から検索ロボットでキーワードを抽出し、不適切なキーワードを含むサイトを選び出した上で、管理者がレイティングを行っているが、今後は画像や文章の意味理解を組み込んで、省力化・自動化を図る技術が期待されている。

(2)ネットワーク環境に関するユーザ意識
 健全なネットワーク環境を確保するため、上述のように様々な技術・サービスの開発が進んでいるものの、最終的にはネットワーク利用者それぞれが果たすべき役割の認識や意識向上が重要である。「情報通信分野の安全性と将来技術に関する調査」によると、企業の情報システム管理者のうち、およそ3人に2人が「高度化・複雑化するセキュリティ技術へのキャッチアップ」が今後の課題であると回答している(図表2))。また、広告メールを「非常に迷惑」「やや迷惑」とする割合は、企業側の認識では36.0%であったが、インターネット利用者側では4人に3人にも及んでおり、広告メールの発信者側と受信者側の意識の乖離がみられる(図表3))。これらから、健全なネットワーク社会の構築のためには、上述の技術やサービスの開発とともに、ネットワーク社会を適切に動かすための技術者の育成や、利用者の不安や不満を改善するためのルール作りなども今後の課題であると考えられる。

 
図表1) ファイアウォールのタイプ
図表1) ファイアウォールのタイプ

 
図表2) 不正アクセス対策において今後重要となる課題
図表2) 不正アクセス対策において今後重要となる課題
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図表3) インターネット利用者の広告メールに対する考えと企業が想定する顧客の考え
図表3) インターネット利用者の広告メールに対する考えと企業が想定する顧客の考え
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