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第1部 特集 情報通信白書刊行から50年〜ICTとデジタル経済の変遷〜
第2節 ICT利活用の社会・経済活動への浸透

第2節 ICT利活用の社会・経済活動への浸透

ICTの高度化とサービスの多様化に伴い、社会・経済生活の様々な分野においてICT利活用が浸透している。

企業では、1973年当時は、企業内に構築された汎用機(メインフレーム)を中心として情報を処理していた(図表0-2-1-1)。現在は、クラウド技術の発展・普及により、企業内に情報システムを構築せずに、データの共有や機能の拡張ができるようになっている。クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は2021年時点で70.4%1であり 、今後も普及が進むものと考えられる。

図表0-2-1-1 【1973年と現在】企業における情報通信の利活用の変化
(出典)富士通ミュージアム、写真AC

防災・減災分野では、センサーやドローンを活用した遠隔地からの現地の被害状況の確認や、スマートフォンで取得したGPSの位置情報などを活用した被災時における住民行動の把握などの取組が行われている。例えば、国土交通省「川の防災情報」2では、全国約6,000か所に設置した河川カメラの映像をスマートフォンなどで確認できるようになっている。また、災害時に被災者などがSNSを通して被害状況をテキストや位置情報、写真で投稿し、それらを人工知能(AI)が整理して地図上に可視化したものをSNS上で確認3することや、GPSから取得したスマートフォンの位置情報と契約者の年齢、性別などの属性情報を紐付けた上で、地図上で人の流れや滞在状況を可視化4することなどが可能となっている。

教育分野では、GIGAスクール構想に基づき、全国ほぼ全ての小・中学校において1人1台端末及び校内通信ネットワーク環境が整っており、授業でのパソコン又はタブレット端末の利用が浸透している(図表0-2-1-2)。民間サービスの取組としても、例えば、「EdTech」(Education×Technology)と称して、学校など教育機関向けの校務の効率化などの教員の負担軽減に関するソリューションや、個人向けの児童・生徒一人ひとりの習熟度・理解度などに合わせた教育の機会を提供するオンライン学習のアプリケーション、最適な学習機会を提供するAIによるアダプティブラーニングなどを組み込んだアプリケーションやサービスなどの提供が進展している。

医療分野では、救急車の中などからクラウドサーバに心電図のデータを送信することで病院到着前に病院で心電図を閲覧することや、テレビ電話やコミュニケーションアプリなどを活用して医師などの診断や服薬指導を受けることなどが可能となっている。医療の質の向上や離島・へき地などにおける高度な医療の提供に向けて遠隔医療の取組が進められており、遠隔画像診断システムは1,486の病院と1,820の診療所で導入されている5

農業分野でも、各種センサー情報を活用した生育管理6やAIを活用した収穫ロボット、ドローンによる農薬散布など、ICTを活用したスマート農業が進展している。例えば、スマート農業実証プロジェクトが2019年度に開始され、これまで全国202地区で実証が行われている7

また、野生鳥獣による農林水産業等への被害が問題となっており、農作物被害額は全国で161億円(2020年度)となっている8。センサーカメラなどによる生息域や被害状況の調査、遠隔監視・操作システムを活用したわなによる捕獲、スマートフォンやパソコンによる捕獲情報等の確認・管理など9、これらのICT技術を活用した効果的・効率的な鳥獣被害対策が行われている。

そのほか、非接触ICカード技術「Felica」を活用したIC乗車券「Suica」や「PASMO」による自動改札の普及や、電子マネー「楽天Edy(エディ)」、「WAON(ワオン)」、「nanaco(ナナコ)」などによるキャッシュレス決済の普及など、個人の日常生活の隅々までICTの利活用が浸透している。

図表0-2-1-2 【1973年と現在】新たに情報通信が利活用されるようになった分野
(出典)新潟市立江南小学校、千葉市消防局、写真AC

以上のように、1973年当時と現在を比較すると、ICTが著しく高度化するとともに、現在では社会全体が情報化する中で社会活動のあらゆる場面で利活用され、社会・経済インフラとして不可欠な存在となっていることが分かる。



1 総務省「令和3年通信利用動向調査」(令和3年8月末時点の調査)において、クラウドサービスを「全社的に利用している」又は「一部の事業所又は部門で利用している」と回答した割合の合計。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html別ウィンドウで開きます

2 国土交通省「川の防災情報」https://www.river.go.jp/index別ウィンドウで開きます

3 LINE「AI防災支援システム」

4 KDDI「KDDI Location Analyzer」

5 厚生労働省「令和2年医療施設(静態・動態)調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/別ウィンドウで開きます

6 一例として、NTTドコモでは、水温や塩分濃度センサーなどを実装し、水温や塩分濃度などの海洋データをスマートフォンや携帯電話で確認することができる「ICTブイ」というサービスを提供している。
https://www.docomo.ne.jp/biz/service/ict_bui/別ウィンドウで開きます

7 https://www.affrc.maff.go.jp/docs/smart_agri_pro/smart_agri_pro.htm別ウィンドウで開きます

8 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html別ウィンドウで開きます

9 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/kikijouhou/kikijouhou.html別ウィンドウで開きます

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