総務省｜令和4年版情報通信白書｜データガバナンスへの対応の現状

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第1部　特集情報通信白書刊行から50年～ICTとデジタル経済の変遷～

第2節　顕在化している課題への対応

2　データガバナンスへの対応の現状

第1章第5節でみたとおり、近年、データの経済的価値が高まっており、データは、「智恵・価値・競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札」とも位置付けられている10。一方で、グローバル・プラットフォーマーへの個人の嗜好や行動履歴などを含む利用者のデータの集中やその分析、活用の状況への懸念、第1章第5節でみたような事業者によるデータの取扱いへの懸念が世界的に高まっている。我が国でも、2021年3月、国内事業者が保有する我が国のユーザーの個人情報が業務委託先の外国法人からアクセス可能であったこと11を問題視する報道がされるなど、国外への開発委託、多様なベンダー製品の使用、国外のデータセンターの活用などグローバル化が進む中で大量の利用者情報を持つ事業者による情報の不適切な取扱いなどによるリスクの高まりが指摘されている。

このような状況の下、我が国を含む各国で、データの効果的かつ適正な利活用に向けたデータガバナンスに関する取組が進んでいる。EUでは、2020年2月に公表された「欧州データ戦略」に基づき、EUがデジタル経済で主導権を握るべく、データの単一市場を構築し、データ活用による技術革新を促進するために、個人や企業が生み出す膨大な産業データへのアクセスに関する域内統一ルールの整備を行っている12。同戦略に基づき策定されたデータガバナンス法（Data Governance Act）では、信頼性を確保したデータ流通の促進のため、目的に合ったデータを業界や国境を越えて利用可能とするための仕組みなどが提示されている13。また、2022年2月には、産業データへのアクセス権などを規定したデータ規則案14が公表された。GAFA含め世界を代表する巨大IT企業を多く抱える米国では、民間部門のデータ活用促進について強い介入は行っていないが、公的部門では連邦・州政府双方が積極的な取組を行っており、例えば、連邦レベルでは2019年6月に公表した「連邦データ戦略」に基づいてデータの価値向上やガバナンス体制の構築を急速に進めている15。また、中国では、2021年9月1日からデータセキュリティ法が施行され、データの概念を明確に定義するとともに、データ分類・等級付け保護、リスク評価、監視・早期警報、緊急対応などの各基本制度を確立し、データの取扱いの際に履行すべき義務を明確化している16。

これらの国際的な動向も踏まえ、我が国でも、2021年6月、データの適正な利活用の推進に向けて、戦略・政策、組織、ルール、連携基盤など7つの階層における課題と方策を取りまとめた「包括的データ戦略」が閣議決定された17（図表2-2-2-1）。

図表2-2-2-1　包括的データ戦略の概要

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（出典）デジタル庁（2021）データ戦略推進ワーキンググループ（第2回）18資料1を一部改変

総務省では、関係団体の協力を得て、電気通信事業者の取組などの実態の把握を目的としたアンケート調査を実施し、セキュリティ対策やデータの取扱いに関する検討を行った。また、利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信事業者が取得する利用者情報について、当該情報の取扱規程の策定・届出等により適正な取扱いを義務付けることや電気通信事業を営む者が利用者に関する情報を第三者等に送信させる指令となるプログラムの送信を行おうとする場合に当該利用者に確認の機会を付与することを義務付けることなどを内容とする電気通信事業法の一部を改正する法律（令和4年法律第70号）が2022年6月に成立した。その後、その円滑な施行に向けた官民共同での議論を進めている。

10　包括的データ戦略（2021年6月18日閣議決定）

11　その後、当該外国法人からのアクセスは、開発及び保守プロセスにおける正規の作業であったことが確認されている。

2 データガバナンスへの対応の現状

2　データガバナンスへの対応の現状