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第2部 情報通信分野の現状と課題
第1節 総合的なICT政策の推進

(2) 2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方に関する検討

我が国の情報通信市場において、海外のプラットフォーム事業者などの存在感の高まりや国際情勢の変化を背景としたサプライチェーンリスクなどの課題が顕在化していることを踏まえ、総務省では、2021年(令和3年)9月30日、情報通信審議会に「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」について諮問し、同審議会では、Society 5.02の実現や経済安全保障の確保に向けた情報通信政策の方向性や早急に取り組むべき事項などに関する調査検討を行った。

2022年(令和4年)6月30日の同審議会の答申では、Society 5.0の実現とともに我が国の独立と生存及び繁栄を確保し、戦略基盤産業としての役割が増す情報通信産業の戦略的自律性の確保と戦略的不可欠性の獲得を目指すため、①情報通信インフラの高度化と維持、②研究開発・ソリューション・人材育成などの情報通信産業全体の国際競争力の強化、③自由かつ信頼性の高い情報空間の構築が必要としている(図表4-1-2-2)。また、その際、日本が直面する課題や情報通信産業の「デジタル敗戦」の要因を踏まえ、ゲームチェンジャーとなり得る新技術の開発導入、顧客・市場を起点にした事業展開プロセス、「ものづくり」の技術とデジタル基盤の融合によるソリューションの実装などの取組の方向性や、重点的に取り組むべき8つの領域などが示されている。

具体的には、①5Gの普及と高度化、海外展開、②ブロードバンドの拡充等、③次世代ネットワークに向けた研究開発と実装、国際標準化、④放送の将来像と放送制度の在り方の検討、⑤安心・安全なインターネット利用環境の構築、⑥コンテンツ・サービスの振興、⑦サイバー空間全体を俯瞰したサイバーセキュリティの確保、⑧人的基盤の強化と利活用の促進の8つの領域について、それぞれ重点的に取り組むべき事項を示すとともに、その遂行においては、ステークホルダーや関係府省庁、総務省の部局間などで、それぞれの役割(縦割り)と横断的な取組(横串)が有機的に連携し、従来のやり方に囚われない新しい取組が必須であるとしている。

図表4-1-2-2 Society 5.0の実現に向けた基本的考え方

【関連ホームページ】

情報通信審議会 情報通信政策部会 総合政策委員会

URL:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/sougou_seisaku/index.html別ウィンドウで開きます

コラムCOLUMN 2
「情報通信行政に対する若手からの提言〜総務省2.0へのロードマップ〜」

2021年(令和3年)9月3日、総務省は、情報通信行政に対する若手改革提案チームからの提言書「情報通信行政に対する若手からの提言〜総務省2.0へのロードマップ〜」を公表した。

改革提案チームは、2021年(令和3年)7月に設置され、公募を通じて若手を中心に45名の有志職員が参加した。情報通信行政の課題に向き合い、今後のあるべき情報通信行政の実現に向けて必要となる改革について集中的に議論がなされ、提言書が取りまとめられた。また、提言書の公表に先立ち、武田総務大臣(当時)に提言書を手交し、意見交換が行われた(図表1)。

図表1 若手改革提案チームと意見交換する武田総務大臣(当時)

提言書では6つの分野について提言がなされ、一部の提言の内容は既に予算要求や有識者検討会における議論などに反映されている。各分野に関する提言の概要は以下のとおりである。

1 情報流通・横断分野

総務省は、これまでICTの発展を社会に還元し、社会生活の向上や経済活動の推進に取り組んできたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における急速なデジタル化の進展などにより、「ポストコロナ」の新たな課題が顕在化している。これらに迅速かつ適確に対応していくためには、真の「選択と集中」により、限られたリソースが正しい政策課題に集中的に投下されるよう、組織を挙げて体制強化に取り組むことが必要であり、①情報収集・分析機能の強化、②外部人材登用の推進、③現場主義の徹底、④本省部局の組織改革、の4点に取り組むべきである。

2 技術・国際

今後一層不安定、不確実、複雑、曖昧化する社会に対応すべく(VUCA)、従来型に囚われない政策を立案していく必要がある。現在の取組に加えて以下のような新たな取組を進めるべきである。

○技術開発、社会実装、国際展開の連携を強化し、一気通貫で推進する体制・環境や施策スキームの構築を図る。

○ICTによる課題解決を推進すべく、府省庁の所掌などに囚われすぎず、周辺技術の開発や未知領域へのチャレンジなどに幅広く、柔軟に取り組む。

○国際業務における「顔の見える関係」を構築するため、スタッフ職に高位の役職名称を与えるなど、人事上の特別な配慮を行う。

3 通信・電波

通信・電波は今後100兆円を超える基幹産業であり、現在の政策のあり方が今後の日本の行く末を左右する戦略的重要産業である。今後の政策立案においては、①ナショナル(全国レベル)、②ローカル(地域レベル)、③グローバル(地球レベル)の3つの視座と「矛(攻め)」と「盾(守り)」の切り口が有用となる。経済成長や地方創生、安心・安全かつ低廉なICTの利用環境、宇宙・サイバー・電磁波の安全保障(ウサデン)など、取り組むべき対象は多岐に亘る。より一層強靱なインフラの構築やローカル5Gなどによる地域・企業のDXなどを推進に向けた大胆な財政措置の検討とともに、より競争的で透明な電波の割当ての実現に向けた制度改革を進めるべきである。

4 放送

我が国のメディア・コンテンツをリードし、公共的な役割も担ってきた「放送」を取り巻く環境は、スマートフォンの普及や動画配信プラットフォームの急進などにより、急速に、かつ不可逆に変化している。「放送」か「通信」かを意識せず、「好きなときに」「好きな場所で」「嗜好にあった」ものを視聴することが当たり前となる中で、これまでの「放送」の形態・ビジネスに囚われていては、国民・視聴者のニーズに応えられなくなることは明らかである。

総務省においても、「放送」の「これまで」・「今」・「未来」を見据え、①「頼れる」サービスの確保、②「見たい」に応えるコンテンツ力の発揮、③テレビの枠を「切り拓く」挑戦、の3本柱の下、これらの実現に資する具体的な改革を進めていくことが必要である。

5 郵政

創業以来、地域の重要なインフラとしての役割を担ってきた郵便局は、社会の急速なデジタル化の中で「アナログの象徴」として存在感を失いつつある。既存サービスの維持だけでなく、「データ活用」のロードマップを明確にし、「地方創生」の起点として再び存在感を示すことが、時代を越えても郵便局が人々から必要とされ続けるために採るべき戦略である。

日本郵政グループ及び総務省においては、

○地域インフラ事業への参入:「郵便局版シュタットベルケ」

○地方創生プロジェクトを主導する人材交流:「郵便局活用型デジタル人材派遣」

○新たな対話の場の構築:「郵政行政ダイアログ」

といった取組を進めていく必要がある。

6 組織風土・仕事の進め方

総務省においては、今回の改革提言チームに限らず、働き方改革や業務見直しに関する取組を行っているが、情報通信行政の事務に特有の観点から、業務環境や人事制度改革などについて以下のとおり提言している。

業務環境については、テレワークを前提とした業務の徹底的なオンライン化を進めるべきであるとし、それを支えるため、省内LANのさらなる改善や定型業務の効率化などが必要である。人事制度改革については、職員一人ひとりの能動的なキャリア形成を積極的に支援するための施策を行う必要があるとともに、セキュリティ、プライバシー、国際関係といった分野の第一線で活躍できる専門人材の育成が喫緊の課題である。また、特定の職員に業務が集中するのを避けるためにも、業務経験・知識の平準化や、民間企業などとの情報交換のためのネットワークの在り方についても検討が必要である。

【関連資料】

提言書「情報通信行政に対する若手からの提言〜総務省2.0へのロードマップ〜」概要・本文

URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nf4c2000.html別ウィンドウで開きます(データ集)



2 「第5期科学技術基本計画」(2016年(平成28年)1月22日閣議決定)においてビジョンとして掲げられた、ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(「超スマート社会」)。産学民官が連携し、2030年頃までに実現されるべく取組が進められている。

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