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第2部 情報通信分野の現状と課題
第4節 放送政策の動向

5 放送コンテンツ流通の促進

(1) 放送コンテンツの製作・流通の促進

ア 放送コンテンツなどの効果的なネット配信に関する取組

近年、インターネットを通じて利用できる動画配信サービスの普及、若者を中心とした「テレビ離れ」の加速など、情報発信の環境は大きく変化している。動画共有サイトや動画配信プラットフォーム上に多くのコンテンツがあふれる中で、フィルターバブルやエコーチェンバーという社会問題も生じており、特に、これまで各地の放送などを通じて自然な形で発信・共有されてきた地域情報がインターネットの世界では十分な量のアテンション(閲覧数)を確保できず埋没・淘汰されていく傾向が顕著となっている。

このように、官民が協力して社会の基本情報を始めとする信頼性の高いコンテンツを大量のコンテンツの中に埋没させることなく効果的に視聴者に届けていく枠組みを構築していく必要性が高まってきていることを踏まえ、総務省では、2021年度(令和3年度)にTVerを活用した放送コンテンツなどの効果的なネット配信に関する実証事業を実施し、全国規模の動画配信プラットフォーム上でも地域の放送コンテンツなどにその地域の視聴者がアクセスしやすくするための取組や、そうした放送コンテンツなどを効果的にネット配信していく技術面、法令面などのノウハウを持った高度な人材を地域社会において確保していくための取組を官民で連携して推進している。総務省では、今後もこうした取組を深化・拡大させていくことにより、安心安全な全国規模の動画配信プラットフォームにおける信頼性の高いコンテンツのネット配信の更なる促進を目指していくこととしている。

イ 放送分野の視聴データ活用とプライバシー保護の在り方

インターネットに接続されたテレビ受信機などから放送番組の視聴履歴などを収集・分析すれば、例えば地域ごとの視聴者のきめ細かい視聴ニーズに寄り添った番組制作や災害情報の提供などに有効に活用することが可能となる一方で、個々の視聴者の政治信条や病歴のようなセンシティブな個人情報を推知することなども技術的には可能となってしまうという課題がある。

総務省では、放送分野の個人情報保護について、放送の公共性に鑑み、動画共有サイトの閲覧履歴などにも適用される個人情報保護法上の最低限のルールに加え、放送受信者等の個人情報を取り扱う全ての者が遵守するべき放送分野固有のルールを「放送受信者等の個人情報保護に関するガイドライン」で定めている。さらに、2021年(令和3年)4月から「放送分野の視聴データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会」を開催し、データ利活用とプライバシー保護のバランスのとれたルール形成の観点から、放送に伴い収集される視聴履歴などの取扱いに関するルールの在り方に加えて、放送コンテンツのネット配信における配信履歴などの取扱いに関するルールの在り方についても検討を行っているところである。

ウ 放送番組の同時配信等に係る権利処理の円滑化

スマートデバイスの普及などに伴う視聴環境の変化を踏まえ、放送事業者は、放送番組のインターネットでの同時配信等(同時配信、追っかけ配信及び見逃し配信をいう。以下同じ。)の取組を進めている。これは、高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものであり、視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興・国際競争力の確保などの観点から重要な取組となっている。一方で、放送番組には多様かつ大量の著作物等が利用されており、同時配信等にあたって著作権等の処理ができないことにより「フタかぶせ」が生じる場合があるなど、権利処理上の課題が存在しており、同時配信等を推進するに当たっては、著作物等をより迅速かつ円滑に利用できる環境を整備する必要があった。

総務省では、同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望を取りまとめ、著作権法(昭和45年法律第48号)を所管する文化庁に提出した。その後、文化庁とともに関係者から意見を聴取し、制度改正の方向性を検討した結果、令和3年通常国会で著作権法の一部を改正する法律(令和3年法律第52号)が成立し、同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する措置が講じられた。これらの措置は、2022年(令和4年)1月1日に施行されており、その施行にあたり、総務省では、文化庁と共同で「放送同時配信等の許諾の推定規定の解釈・運用に関するガイドライン」を策定するなどの制度整備を行った。

エ 放送コンテンツの適正な製作取引の推進

総務省では、放送コンテンツ分野における製作環境の改善及び製作意欲の向上などを図る観点から、有識者などで構成される「放送コンテンツの適正な製作取引の推進に関する検証・検討会議」を開催し、同会議での議論などに基づき、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」(第7版)(以下「ガイドライン」という。)を策定し、放送事業者及び番組製作会社に対して、放送コンテンツの製作取引の適正化を促す取組を進めている。

具体的には、放送コンテンツの製作取引の状況を把握するため定期的にガイドラインのフォローアップ調査を実施するとともに、ガイドラインの遵守状況について放送事業者及び番組製作会社に対してヒアリングなどの実態把握を進め、発覚した問題点について下請中小企業振興法(昭和45年法律第145号)第4条に基づく指導などを行うほか、ガイドラインの周知・啓発のため、講習会をオンラインで開催し、製作取引に関する個別具体的な問題について弁護士に無料で相談できる窓口「放送コンテンツ製作取引・法律相談ホットライン」を開設している。

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