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第1部 特集 情報通信白書刊行から50年〜ICTとデジタル経済の変遷〜
第3節 1995−2005年頃:ICTの進展〜インターネットと携帯電話の普及〜

1 国際情勢・諸外国の動向

1995年1月1日、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)の設立により、既存の貿易ルールの強化に加えて、新たな分野(サービス貿易)におけるルールの策定など、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)時代と比べ多角的貿易体制が強化され1、2001年に中国がWTOに正式加盟したこととも相まって、世界的な自由貿易促進の気運が高まりを見せた。通信分野については「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」において公衆電気通信へのアクセス及び利用に関する規則を規定する「電気通信に関する附属書」が作成され、音声電話サービスなどの「基本電気通信分野」についてはその自由化交渉である「基本電気通信交渉」が1994年から開始された。

ICT分野での自由貿易促進の高まりに加え、1990年代後半に米国で登場した「ニュー・エコノミー」論によって、ICT投資の活発化と経済成長の源泉としてのICTの役割に対する期待が高まっていった2

インターネットの商用開放の後、1995年に、初期状態でTCP/IPプロトコルを搭載し、プレインストールしたパソコンであればダイヤルアップ接続機能やWebブラウザも付属するMicrosoft Windows 95(マイクロソフト ウィンドウズ 95)の発売を契機として、インターネットの一般家庭への普及が急速に進んだ。さらに、Netscape NavigatorやInternet Explorerなどのウェブブラウザの普及によって、インターネットを通じて文字ベースの情報だけでなく写真などの画像なども組み合わせて閲覧できるようになった。

階層モデルを前提にしたインターネットの普及は、通信機器とサービスの分離を可能とし、レイヤー(階層)の垂直分離を顕在化させ、各レイヤーにおいて多くのサービスが個別に提供されるようになり、それらの専業事業者が台頭した。上位レイヤーでは多様なコンテンツ・アプリ事業者や現在大きな市場支配力を有するGAFAに代表されるグローバル・プラットフォーマーが誕生3した。下位レイヤーでは、IP化の進展などにより、従来の通信機器の製造事業者に加え、ルーター、サーバ、スイッチなどのネットワーク機器の製造事業者も台頭した。

インターネットの急速な普及に伴い、先進国では、負の部分への対応を中心に、インターネット関連の制度的対応が進展した。米国では、1996年に、プロバイダなどは第三者が発信する情報について原則として責任を負わないことなどを規定した通信品位法(Communication Decency Act: CDA)230条が成立した。1998年10月には、子供にインターネットポルノを見せないことを目的とするオンライン児童保護法(Child Online Protection Act:COPA)及びインターネット上でやりとりされるデジタル画像や音声、文字などの著作物の効果的保護を目的とするデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act:DMCA)が成立した。EUでは、1999年に、違法有害コンテンツへの各国政府の法的対応などを求める「グローバルネットワーク上の違法及び有害情報への対処による安全なインターネット利用に関する計画」が決定されるとともに、EU閣僚理事会において、プロバイダなどは第三者が発信する情報について原則として責任を負わないことなどを規定した電子商取引に関する指令が採択・承認された。

また、先進国を中心にインターネットの普及が進む中で、先進国と途上国の間でのICT利用環境の格差が世界的な課題として顕在化してきた。これを受け、1998年のITU「世界情報通信サミット」では先進国と途上国の情報の格差の拡大について課題が提起され、さらに、2000年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)では「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」が採択され、「デジタル・ディバイド」の解消が国際社会の共通課題である旨が明記された4



1 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/gaiyo.html別ウィンドウで開きます

2 「平成12年度世界経済白書」(内閣府)では、当時の米国を中心とする長期経済成長について、「世界の経済学会には3つの見方があり」そのうちの一つが「情報通信技術(IT)の急激な発展は、新しい産業形態や社会情況を生み出し、これまでの経済理論や経験では律し切れないニューエコノミーを作り出したという主張である。このため、経済の潜在成長力が向上、これからも長期かつ持続的な好況が続く、と見ている。(略)「IT革命」といわれる情報通信技術の急激な成長と普及に、これら諸国に立ち遅れた日本としては、抜本的な規制の緩和と構造転換を急いで、「IT革命」の劇的な展開を成し遂げなければならないことは、これらの分析からも認められるところである」としている。

3 Amazon.comは1995年開始、Googleは1997年開始、AppleはiMacを1998年開始、Facebookは2004年創業。なお、中国でもBaidu(2000年創業)、Alibaba(1999年創業)、Tencent(1998年創業)と大手プラットフォーマーが誕生している。

4 外務省「九州・沖縄サミット」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/ko_2000/outline/jp/overview.html別ウィンドウで開きます

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