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第1部 特集 情報通信白書刊行から50年〜ICTとデジタル経済の変遷〜
第5節 2015年−現在:ICTの社会・経済インフラとしての定着

1 国際情勢・諸外国の動向

ICT分野を含む様々な分野で、GDP世界第2位の経済大国である中国の存在感がますます大きくなってきている。情報通信産業の生産額は、2014年時点で1位が中国、2位が米国、3位が日本となっており、2000年時点の1位米国、2位中国と順位が逆転している1。このような中で、米国では、中国による知的財産権の侵害、強制技術移転の要求などの行為に対する批判が高まり、中国との技術覇権争いを背景として、2018年8月に2019年度国防授権法が成立するとともに、外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA法)が成立し、外国投資委員会(CFIUS)による対米投資審査が強化された。また、同時に輸出管理改革法(ECRA)が成立し、輸出管理も強化される2など、ハイテク分野を中心に経済活動と安全保障の関係が現実の政策テーマとして意識されるようになった3図表1-5-1-1)。

図表1-5-1-1 米中における経済安全保障確保に関する取組の動向
(出典)総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」

また、2010年代半ば以降、AIなどを活用したビッグデータ分析が普及し、グローバル・プラットフォーマーが提供するサービスの一層の高度化が進んでいる。具体的には、グローバル・プラットフォーマーがエンドユーザーの属性情報、位置情報、電子商取引に係る購入履歴、動画・音楽配信に係る視聴履歴などの個人データを収集・分析し、各エンドユーザーの嗜好に応じた広告などの情報を提示するような付加価値サービスの提供が行われるようになっている。一方で、インターネット上のビジネスにおけるグローバル・プラットフォーマーの市場支配力は一層高まりを見せており(図表1-5-1-2)、グローバル・プラットフォーマーによるデータの寡占やその取扱いなどに関する課題やプラットフォーム上のルールの設定などに係る課題も指摘されている。具体的には、膨大な経済的価値を有するデータの所有が一部のグローバル・プラットフォーマーに集中することで、我々の行動や嗜好が特定の企業によって管理されるような状況への懸念が高まっている。また、国境を越えて膨大なデータの移転が行われる中で、移転先でデータの適切な管理が行われていない場合に生じるプライバシー及びセキュリティに係るリスクへの懸念が顕在化しており、特に多くのデータの移転先となるグローバル・プラットフォーマーにおけるデータ管理への懸念が高まっている。

図表1-5-1-2 GAFAの売上高の推移
(出典)Statistaデータを基に作成
「図表1-5-1-2 GAFAの売上高の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

スマートフォンが急速に普及し、移動通信システムが生活・社会基盤として進化する中で、世界各国で5Gネットワークへの投資や5Gへの周波数割当てが実施され、2019年4月に米・韓でのスマートフォン向けの5Gサービスの開始を皮切りに、世界各国で5Gサービスの提供が開始されている。

また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大を背景に非接触・非対面による活動を可能とするICTの社会・経済活動において果たす役割は更に大きくなってきている。2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵略では、サーバ攻撃や偽情報の拡散4など攻撃手段としてもICTが悪用されてしまっている。



1 小野ア彩子(2021)「情報化の進展に関する日米中比較分析:日本の産業連関表と国際産業連関表によるデータ観察」情報通信総合研究所,InfoCom Economic Study Discussion Paper Series, No.16.
https://www.icr.co.jp/service/infocom-ict/download/discussion-paper/pdf/2021/DP_16_202101.pdfPDF
国際産業連関表「WIOD2016年版」を用いて、2000年と取得可能な最新年の2014年時点の世界と主要国別の情報通信産業(ICTハード、通信、情報サービス、コンテンツ)の生産額、付加価値額などを算出、分析している。

2 経済産業省「令和元年版通商白書」概要
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2019/2019honbun/i0110000.html別ウィンドウで開きます

3 篠ア彰彦「ウクライナ危機が突き付ける「日本の」経済活動と安全保障、検討すべき事案とは」『ビジネス+IT』(2022年3月15日)
https://www.sbbit.jp/article/cont1/82774?page=2別ウィンドウで開きます

4 米谷南海(2022)「ロシアのウクライナ侵攻とICT分野の動向」一般財団法人マルチメディア振興センター、FMMC研究員リポート, March 2022, No.1.
https://www.fmmc.or.jp/Portals/0/resources/ann/report_ru_220315_zenpen.pdfPDF

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