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第1部 特集 情報通信白書刊行から50年〜ICTとデジタル経済の変遷〜
第1節 1973−1985年頃:アナログ通信・放送の時代

1 国際情勢・諸外国の動向

情報通信白書の刊行が始まった1973年は第4次中東戦争を機に第1次オイルショックが始まった年であり、1979年にはイラン革命を機に第2次オイルショックに見舞われることとなった。オイルショックを契機としてもたらされた厳しい経済状況を経験したことで、従来の資源・エネルギー多消費型の経済社会からの脱却と省資源・知識集約型の産業構造への転換が志向され、情報通信産業はその中核を担う産業として大いに期待される産業となっていた1

また、米国では、1960年代後半からベトナム戦争下で軍事利用が進展した集積回路(IC)を利用した無線通信・電子応用機器の軍事利用が進み、その下で米国の電子機器産業が急成長した。1975年のベトナム戦争の終結に伴う民間への開放により、民間向け電子応用機器へのICの利用も拡大していった。これに加えて、国防省、アメリカ航空宇宙局(NASA)の支援によりメモリー、マイクロプロセッサなどの開発が進み2、米国における情報通信産業の成長を後押しした。

さらに、1980年代には、米国と英国では、通信市場に競争原理が導入され、同市場における自由競争が進展した。米国では、通信自由化はAT&T(The American Telephone & Telegraph)3の独占に対する司法省の反トラスト訴訟を中心に展開されてきており、数次にわたる訴訟を経て1984年にAT&Tが分割されることとなった。英国では、1979年のサッチャー政権の誕生以降、国家財政と英国経済の立て直しに向けて広範囲に渡る国営企業の民営化が進められ、1982年、それまで英国電気通信公社による独占であった電気通信事業に関する免許が競争事業者1社にも付与され、1984年には英国電気通信公社が民営化された。



1 昭和48年版通信白書の「第1回通信白書の発表にあたって」では、「石油危機を契機としてもたらされた現下のきびしい事態は、従来の資源・エネルギー多消費型の我が国経済社会のあり方に深い反省を促し、省資源ないし知識集約型の産業構造への転換を強く迫っている。このような状況の下において、通信は資源・エネルギーの節約に極めて有効に機能するものとして、また知識・情報産業の最も中核的なものとして、その役割は従来にもまして一層重要の度を加えている。」としている。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/s48/index.html別ウィンドウで開きます

2 井上(1992)「ベトナム戦争における“軍需”と米国半導体産業の発展」慶應義塾大学、『三田学会雑誌』、85巻2号

3 ここでいうAT&Tは、現AT&T(https://www.att.com/別ウィンドウで開きます)とは異なる。現AT&Tは、1984年に分割により設立されたRBOC7社のうちの1社であるSouthwestern Bell Corpが、BellSouth、Ameritech、Pacific Telesisという他の3社のRBOCと分割後の存続会社であったAT&T長距離部門とを合併し、名称をAT&Tとしたものである。

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