総務省トップ > 政策 > 白書 > 26年版 > 途上国に広がる「モバイル送金」サービス
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第3節 様々な社会的課題とICTによる課題解決

1 途上国に広がる「モバイル送金」サービス

世界銀行は2013年10月、途上国への送金が2013年に4,140億ドルに達すると発表した。途上国では地方から都会または海外に出稼ぎに行くことが多く、世界銀行によると全世界で2億3,200万の海外への出稼ぎ労働者が存在している。出稼ぎに行った人から故郷に残った家族や親せきへ送金を行う需要があるが、先進国のように銀行の支店やATMが地方には存在しないことが多く、銀行口座を所有していない人も多い1

途上国ではまだ銀行口座を保有していない人が25億人いる2一方で、携帯電話の普及は著しい。このため、途上国で主流のプリペイドのSIMカードでも利用可能な「モバイル送金」サービスが急速に普及している。2014年3月にGSMAが公表した「State of the Industry 2013 Mobile Financial Services for the Unbanked」3によると、2013年末時点で、世界84か国で219のモバイル送金のサービスがあり、うち51.7%と半数以上がサブサハラ・アフリカ地域である(図表1-3-1-1図表1-3-1-2)。

図表1-3-1-1 世界でのモバイル送金サービスの推移
(出典)GSMA
図表1-3-1-2 世界のモバイル送金を実施している国
(出典)GSMA

2013年6月時点で全世界に2億300万のモバイル送金のアカウントが存在し、そのうち90日以内に利用されたアカウント数は6,100万で、30日以内に利用されたアカウント数は3,700万である。今後も携帯電話を活用した「モバイル送金」が成長する余地は大きい。多くの新興国で銀行口座を持たなくとも送金が可能なモバイル送金は社会生活のインフラとなっている。

ケニアでは2007年3月に携帯電話を活用したモバイル送金サービス「M-Pesa」を通信事業者Safaricomが開始している。「M-Pesa」では銀行口座を持たなくとも、携帯からショートメッセージ(SMS)を送信することで、送金、預金・引き出し、支払いといった金融取引を行うことができ、全国のどこでも同一のサービスを受けることができる(図表1-3-1-3)。

図表1-3-1-3 「M-Pesa」の送金、受金の仕組み

2013年8月には、ケニアでのモバイル送金利用者数が2,300万を超えたとGSMAが発表4しているが、これはケニアの成人の74%にあたり、「M-Pesa」は開始してから6年が経過し、現在ではケニア全土に96,000カ所以上の利用可能な代理店(店舗、キオスクなど)があるなど、同国の生活に欠かせないインフラになっている(図表1-3-1-4)。

図表1-3-1-4 ケニアにおけるモバイル送金概要
(出典)GSMA発表資料を元に作成


1 世界銀行によると、世界の貧困層の4人に3人が銀行口座を持っておらず、その理由として、貧しさだけでなく、口座開設に伴う費用、手続き、銀行までの距離にもあるという。

2 http://www.gsma.com/mobilefordevelopment/wp-content/uploads/2014/02/SOTIR_2013.pdfPDF

3 http://www.gsma.com/mobilefordevelopment/the-state-of-mobile-money-usage-how-many-people-use-mobile-money-globally別ウィンドウで開きます

4 http://www.gsma.com/mobilefordevelopment/mmu-releases-infographic-on-the-kenyan-experience-with-mobile-money別ウィンドウで開きます

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