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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第1節 様々な価値を生み出すビッグデータ

(3) G空間社会の実現がもたらす今後の可能性

ICTの質と量両面での劇的な変化・進化と併せて、G空間情報とICTを融合させ、暮らしに新たな変化をもたらすための様々な利用シーンの開拓が、すでに国内外で展開されている。

ア G空間情報を対象としたオープンデータの展開

近年、オープンデータの推進により、行政の透明性・信頼性の向上、国民参加・官民協働の推進、経済の活性化・行政の効率化が進むことが期待されている。一部の先行的な地方公共団体では、オープンデータに向けた具体的な取組が進み、データの公開や二次利用の推進が行われている。その対象となる公共データには、G空間情報も含まれており、今後、行政機関が保有するG空間情報の公開及び二次利用の拡大も大きな課題となっている。

G空間情報のオープンデータに取り組んだ事例として、平成25年11月に公開された「徳島県総合地図提供システム」が挙げられる。このシステムでは、徳島県が保有するG空間情報を対象として、総合地図ポータルサイトにて重ね合わせて表示させることが可能なだけではなく、一部の情報は、CSV形式やGoogle Earthなどで表示可能なKML24形式でのダウンロードが可能となっている。ダウンロード可能なデータは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス25の「表示ライセンス(CC-BY)」により、二次利用が可能である(図表3-1-4-8)。

図表3-1-4-8 オープンデータに取り組む徳島県総合地図提供システム

現在扱われているデータは、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、地震震度分布等の防災情報や、都市計画用途地域、学校等であり、今後拡充が予定されている。

イ ウェアラブル端末とG空間情報の融合による新しいICTサービス

近年、眼鏡や腕時計のように身につけて利用するデバイスであるウェアラブル端末に注目が集まっている。その中でも、眼鏡型ウェアラブル端末は、Google Glass等、ICTの新しい利用シーンを切り開く情報端末として、様々な利用シーンの検討が行われており、G空間情報との連携も含めた実証が各地で行われている。

東京都港区では、スマートフォンの観光ナビゲーションアプリとウェアラブル端末を組み合わせた観光案内の実証が平成25年10月に行われている。東京タワーや増上寺等の観光名所への道順や距離、名所に関わる情報が随時表示され、歩きながらのナビゲーション等、新しい観光案内の仕組みについて検証が行われた。このような仕組みの実用化により、ハンズフリーでの観光体験が可能となることが期待される(図表3-1-4-9)。

図表3-1-4-9 スマートフォンと眼鏡型ウェアラブル端末を用いた観光案内の実証(東京都港区)
(出典)株式会社WHERE資料

眼鏡型ウェアラブル端末の利用シーンによっては、屋内外を問わず、場所の把握(測位)や三次元での高精度な地図等、G空間情報が必要となる。特に、人間のリアルタイムな行動に影響を与えるため、従来以上に高い精度が求められる。今後は、ウェアラブル端末の機能向上とあわせて、実利用に相応しいG空間情報のあり方の検討も求められている。

ウ ロボット技術とG空間情報の融合

近年、ロボット技術の一環として、UAV(unmanned air vehicle:無人航空機)もしくはDroneとも呼ばれる、無人飛行体に注目が集まっている。スマートフォンの普及による各種センサーの小型化及び低廉化や、諸外国での軍事目的で開発されてきた無人機技術の民間転用の影響を受け、民間でも利用可能な電動による無人航空機の普及が諸外国では進みつつある。主な利用用途として、ビデオカメラを搭載した警備用途の他、高精細なカメラを搭載したリモートセンシングに使われるようになっている。リモートセンシングについては、従来有人航空機によって取得されていた空中写真の廉価な撮影手段として注目されるようになっており、G空間情報の新しい整備手法として注目されている(図表3-1-4-10)。

図表3-1-4-10 無人飛行体を用いたリモートセンシングの事例(新燃岳噴火時)
(出典)株式会社情報科学テクノシステム資料

また、近年では社会資本の点検手段としての活用や、離島や家庭等への配送手段としての検討が行われている。無人飛行体が安全に活動するためには、安定した衛星測位の取得や、高精度かつ信頼性の高い飛行制御技術の向上が求められる。

エ G空間プラットフォームによるG空間情報の相互利用の拡大

行政機関が保有する公共データの活用促進に当たり、二次利用を想定した公開の拡大に限らず、行政機関相互での流通及び共有の拡大に向けたプラットフォームの形成が諸外国でも行われつつある。

米国は1990年代より、地理空間データ(Geospatial data)の流通促進及びGISの普及に向けた施策を展開してきた。その推進組織として、内務省長官の直下に、14の連邦政府機関によるFGDC(連邦地理情報委員会)が設立されている。FGDCはこれまで、政府機関を対象とした地理空間データの相互利用に向けた活動を展開してきたが、2010年(平成22年)に発生したメキシコ湾原油流出事故の地理情報共有に関する反省を踏まえ、2011年(平成23年)から、連邦政府相互の地理空間データの共有及び活用を促すプラットフォームとして、Geospatial Platformの構築に着手、同年11月より公開が始まっている。また、同年には気温、土壌、水深、大気圧等のデータを対象に公開を開始し、2014年(平成26年)時点で政府機関約37,000のデータセットが公開されている。2013年(平成25年)にはバージョン2.0が公開されており、オープンデータを推進するData.govとの連携がより強化された内容となっている。今後もさらなる対象となるデータセットの拡大に向けて展開が見込まれている(図表3-1-4-11)。

図表3-1-4-11 G空間情報の相互利用促進に向けた米国GeoPlatform
オ 屋内外のシームレス測位の技術環境の展開

米国や欧州では、屋内を対象とした位置情報サービスはIPS(インドアポジショニングシステム)もしくはRTLS(リアルタイムロケーションシステム)と呼ばれ、新しいICTの利用シーンとして注目されつつある。主な屋内向け位置情報サービスの利用シーンは、小売業界を対象とした店舗内の位置案内やスマートフォン向けの広告といったO2O(Online to Offline)の一環としての利用のほか、付加価値の高い機材や製品を扱う業務シーン、例えば病院内の高価な医療機器の所在の把握や、物流倉庫内の在庫や工場内の機材の所在把握に活用されている(図表3-1-4-12)。

図表3-1-4-12 屋内測位を用いた店舗案内と広告配信の事例(米国のBlack Fridayにて、店舗を利用する顧客向けに商品広告とその所在を配信)
(出典)日本マイセロ株式会社提供資料

屋内を対象とした位置情報の把握技術として、IMESやWi-Fi、Bluetooth、超高域無線(UWB)等が使われている。近年では、スマートフォンの普及により、Wi-FiやBluetoothの端末側の対応が進んだことから、これらの技術を応用した屋内測位技術の普及が進みつつある。



24 三次元を含む様な地理空間情報の表示を管理するために開発された、XMLベースのマークアップ言語、XMLについては、巻末の用語集参照。

25 第3章第2節1.(1)ア参照。

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