総務省トップ > 政策 > 白書 > 26年版 > ビッグデータ時代におけるパーソナルデータの取扱い
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第3節 パーソナルデータの利用流通の円滑化

1 パーソナルデータの利用流通に係る国内外の動向

(1)ビッグデータ時代におけるパーソナルデータの取扱い

現在、官民を問わず様々な主体においてビッグデータが日々生成され、ネットワークを通じて流通している状況にある。そして、流通するデータの中にはパーソナルデータも含まれている。従来、我が国においてはパーソナルデータの利活用ルールが曖昧であったことから、事業者はその利活用を躊躇してきた面があったが、この間、ビッグデータの活用による新産業・新サービス創出の動きが国内外を問わず活発となり、データ活用に関する社会の認知度が高まってきたことから、相次いでパーソナルデータを活用したサービスの実証または開始に乗り出している状況にある。ここではその事例をいくつか紹介する。

ア (株)NTTドコモ「モバイル空間統計」

(株)NTTドコモが手がける「モバイル空間統計」は、携帯電話端末を収容する基地局にある位置登録情報を利用し、基地局エリアごとの携帯電話台数を契約者の属性別(年齢、性別、住所)に集計することによって、1時間毎に人口の地理的分布を推計する統計情報である。本情報は、公共分野での防災計画やまちづくり、産業分野での商圏調査等での利用が想定されている。

同社では、平成22年11月よりモバイル空間統計を活用した研究を実施しており、平成25年10月より実用化に踏み切っている。なお、同社は契約者のプライバシーを保護するため、運用データ(位置登録情報及び属性情報)を非識別化処理、集計処理、秘匿処理するほか、利用停止手続き等の基本事項を定めたガイドラインを公表している(図表3-3-1-1)。

図表3-3-1-1 モバイル空間統計の作成手順((株)NTTドコモ)
(出典)(株)NTTドコモ作成資料
イ KDDI(株)×(株)コロプラ「観光動態調査レポート」

KDDI(株)が(株)コロプラと共同で手がける「観光動態調査レポート3」は、携帯電話の位置情報を活用することにより、これまでのアンケート調査では把握が困難であった観光客の行動・動態を把握し、地方公共団体や観光協会等の観光施策立案や地域振興へ活用するものである。

位置情報の取得及び分析は、auスマートフォンユーザ(auスマートパス「スタンプカード」サービス利用者)から位置情報の取得・利用及び非特定化後の第三者利用について個別に同意を取得した後、当該ユーザの端末から行った通信・通話の場所を基地局の接続履歴から取得し、非特定化処理(生活圏を排除した旅程の抽出、位置情報のメッシュ化、個人識別子の秘匿化)を行った上、(株)コロプラへ分析を委託している。数値集計後には秘匿処理(少人数データのマスキング)を行い、作成したレポートをKDDI(株)が提供元となり、定められた事業者を経由して観光協会等へ提供している(図表3-3-1-2)。

図表3-3-1-2 データの非特定化と秘匿処理(KDDI(株)×(株)コロプラ)
(出典)KDDI(株)作成資料

KDDI(株)では、平成25年10月よりサービスを開始している。なお、KDDI(株)は利用者に対し、「スタンプカード」サービスの利用を停止することにより、同意を破棄し、レポートへのデータ提供を停止する対応をとっている。

ウ トヨタ自動車(株)「ビッグデータ交通情報サービス」

トヨタ自動車(株)が手がける「ビッグデータ交通情報サービス」は、同社のテレマティクスサービス「G-BOOK」を通じて収集された車両の位置や速度等の情報から生成されるリアルタイム交通情報や、通れた道マップ、交通量マップ、ABS等作動地点マップや地図情報などを利用することができるクラウド型のサービスであり、企業及び地方公共団体に対し平成25年6月より提供を開始している(図表3-3-1-3)。

図表3-3-1-3 ビッグデータ交通情報サービス(トヨタ自動車(株))
(出典)トヨタ自動車(株)作成資料

利用する地方公共団体や企業が有する各種施設情報や業務用車両などの現在位置を地図上に重ね合わせて表示したり、スマートフォンから地図上に現地の情報や画像を投稿できる機能も有するため、災害時には、避難所などの施設情報に加え、スマートフォンを有する防災職員、緊急車両、災害支援車両等の位置を地図上に表示できるほか、スマートフォンから、防災職員が投稿した被害情報や救援要請などを、交通情報やハザードマップなどと重ね合わせて見られるようになっている。

また、平時では、交通・物流システムへの利用も可能であり、移動体が複数の目的地に効率よく立ち寄るルート計画を地図上で設定したり、移動体の現在位置のトラッキングや実績管理を行うことも可能となる。

同社では、「G-BOOK」を通じて収集した走行履歴等については、道路の区間毎や一定の時間毎に集計するなどの統計処理により匿名性を確保して提供を行っている。

エ ソニー(株)「電子お薬手帳サービス」

医師が処方した薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報をクラウド上に保存するサービスが、ソニー(株)が平成25年秋から川崎市でharmo(ハルモ)の事業名称で試験サービスを開始している「電子お薬手帳サービス」である。利用者に配布する専用のFeliCaカードには、個人識別情報(氏名、性別、生年月日)及び共通IDが格納されている。利用者がカードを薬局のリーダーにかざすことによって、調剤履歴がネット経由で同社のサーバーに保存される仕組みである(図表3-3-1-4)。クラウド上に保存されたデータには個人識別情報が含まれていないため、本人が特定されるリスクを低減した形で調剤履歴に基づくデータを外部に提供することが容易にできる。このデータは、地方公共団体における感染症流行状況の早期把握と情報の発信や、製薬会社における有害事象の早期発見といった目的に活用できる可能性がある。

図表3-3-1-4 個人情報に配慮した情報蓄積システム(ソニー(株))
(出典)ソニー(株)作成資料

以上に記したように、サービス提供事業者によるパーソナルデータの活用は今後、さらに広がっていくものと考えられるが、その活用に際して利用者の理解を得る観点では、非識別化や匿名化といったデータ処理、事前説明または情報公開の実施など利用者に配慮すべき要素は多い。それらの配慮が不十分であったために利用者等からの批判にさらされた例もある中、事業者は細心の注意を払いつつパーソナルデータの利活用に取り組んでいる状況にある。



3 http://colopl.co.jp/location_analysis/別ウィンドウで開きます

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る