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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第1節 ICTの進化によるライフスタイル・ワークスタイルの変化

(3) テレワークの効果と活用事例

前述のような課題もあるなか、昨今のテレワークの導入目的としては東日本大震災の影響や新型インフルエンザの懸念等によるBCP対策が挙げられることもあるが、平成25年末の実際のテレワーク導入企業の導入理由を見てみると、「定型的業務の効率性(生産性)の向上」が46.2%、「勤務者の移動時間の短縮」が44.3%とBCP対策の23.5%より上位に挙がっている(図表4-1-2-22)。

図表4-1-2-22 テレワーク導入目的
(出典)総務省「通信利用動向調査」
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そして、その目的に対する実際の効果の認識についても、8割を超える企業で何等かの効果があったと回答しており、導入企業においては、多くの企業でテレワークの導入メリットを感じている状況にある(図表4-1-2-23)。

図表4-1-2-23 テレワークの効果に対する認識割合の推移
(出典)総務省「通信利用動向調査」
「図表4-1-2-23 テレワークの効果に対する認識割合の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

このようにテレワークは前述のような課題はあるものの、例えば通勤時間が無くなることでこれまで時短勤務でしかできなかった社員がフルタイムで就業できることにより企業の生産性が向上することや、育児や介護等により退職せざるを得なかった優秀な社員の雇用を継続できる等、BCP対策以外にも様々な効果が期待されるところである。加えて、テレワークを推進することで社員が限られた時間での業務遂行や会議を意識するようになる等で業務効率化に繋がったり、ペーパーレス化が進むことによるオフィスコスト削減や、電力消費削減によるCO2等の環境負荷の軽減などにつながることも期待される(図表4-1-2-24)。

図表4-1-2-24 テレワークの効果例
(出典)一般社団法人日本テレワーク協会ホームページ23
ア テレワークの活用事例
(ア)株式会社テレワークマネジメント

株式会社テレワークマネジメントは2008年に「テレワークの普及」を目的に設立された企業であり、企業へのテレワーク導入支援・テレワークシステムの開発販売等を主な事業として行っている。同社は現在、東京都と北海道北見市の2か所にオフィスを持っているが、社員6名のうち5名は在宅勤務で業務を行っている。この両オフィスは、常時ビデオ会議システムで接続されていることに加え、仮想オフィスシステムを導入することで、在宅勤務者を含む全社員がインターネット上の仮想的な1つのオフィスでつながっている。PC画面に表示された仮想オフィスでは、社員の離席状態の確認や、複数人でのWEB会議やチャット、資料共有などが可能となっており、円滑なコミュニケーションがとれる環境が整えられている。

また、同社では、自社開発した「Fチェア」と呼ばれる在席管理システムも活用している。このシステムは、在宅勤務時に育児などで離席が複数回あっても、その都度「着席」「退席」ボタンを押すことで、細切れの勤務時間を合計し、その日の在席時間として管理することができる。さらに、勤務時間中はランダムにPCのデスクトップ画面が自動的にキャプチャ・保存され管理者が作業状況を一覧で確認することができるようになっている。これによって、管理者側では社員の勤怠管理を行うことができるとともに、社員側も実際のオフィスと同様に緊張感をもって業務のモチベーションを維持することができるようになっている(図表4-1-2-25)。

図表4-1-2-25 株式会社テレワークマネジメントの例
(出典)株式会社テレワークマネジメント提供資料
(イ)日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフトでは、2007年より在宅勤務制度を導入しているが、2011年の品川本社移転を機にフリーアドレス24の導入、携帯電話やノートパソコンを活用したモバイルワークの強化や、全社員でテレワーク実施を推奨するテレワークデイを2012年より設ける等、性別に拘らないフレキシブルな働き方実現に向けた積極的な取組を行っている。

同社が特に意識しているのは、社員が「いつでも・どこでも」活躍できる為の「勤怠・進捗・情報の3つの管理」を行うための環境整備である。また、オフィス内の無線LANやクラウド環境等を活用し、徹底したペーパーレス化を導入することで、紙を打ち出さない文化を定着させているほか、「Lync」と呼ばれる統合コミュニケーションソフトで在席確認を始め、チャットやIP電話やビデオ会議等のあらゆるオフィス業務が可能となっており、ノートPCとインターネット回線があれば場所にとらわれず業務を行える環境が整っている。そのため、同社内ではデスクで日常的に業務を行っているのは約4割程度で、そのデスクも多くの社員は固定ではなく日々の業務内容などに応じてフリーアドレスで自由に移動することが可能となっている。残りの6割の社員は社内のオープンスペースや社外、在宅等で業務を行っている。業務管理においては、必要な際すぐに連絡がつくことを在宅勤務の適用条件とするルール面と、Lync等のツールがそれを容易に実現する仕組みとの、両面から整えられている。また、社員の相談にタイムリーに応えられるよう、上司と部下の定期的かつ頻繁な面談を必須にするなど、健康管理や業務管理の取組も行っている(図表4-1-2-26)。

図表4-1-2-26 日本マイクロソフト株式会社の例
(出典)日本マイクロソフト株式会社提供資料

業務を円滑に推進する為に、同社のPCは全世界で統一されたセキュリティポリシーが自動的に適用され、PC上の情報はWindows OSに搭載する「BitLocker」という機能で暗号化し、社内ネットワークはVPN等の暗号化された通信を使ってアクセス出来る仕組みが整備されている。又、個人情報やセキュリティを扱うための窓口や定期的なトレーニングも義務付けられており、安全に情報を扱う為の仕組みが提供されている。

一般的にテレワークは、対応できる業務が限定されてしまう、テレワーク用に自宅に持ち帰る資料を事前準備する必要がある等のケースもあるが、同社においてはこれら取組によりオフィス内外、あるいは自宅でも業務環境の差を意識させない環境が整備されている。

同社では、男性で4割弱、女性では5割弱が日中の在宅勤務の利用経験があり、その理由について社内アンケートを取ってみたところ、育児等の家庭の理由が約3割、資料作成等集中したい場合に活用する等の仕事上の理由が3割、その両方が3割強と、育児だけに限らず在宅勤務は通常の働き方として定着しており、経営効率の向上と共に、社員満足度やワーク・ライフ・バランスの向上にもつながっている。

(ウ)英国BT(ブリティッシュ・テレコム)社

海外におけるワーク・ライフ・バランスへの取組を積極的に行っている企業としてBT社が挙げられる。同社は英国ロンドンに本社があり同国をはじめ、世界170か国以上で事業を行っている世界でも大手の通信事業者である。

同社は次の3つの原則に基づきフレキシブルなワークスタイルに取り組んでおり、多様な制度を設けている。

  • 原則1「仕事に大事なことは、どこで働くかという場所ではなく、何をするかという内容である」
  • 原則2「ワーク・ライフ・バランスは社員および企業の双方にメリットがあり、その効果は常にデジタルに把握すべきである」
  • 原則3「ワーク・ライフ・バランスは、企業が社員に対する福祉のために行うコストではなく、経営戦略上の重要な投資として位置付けるべきものである」

制度の例としては、総勤務時間は同じだが1日の労働時間を長くして勤務日数を減らす「集中勤務制度」があり、例えば月曜日から木曜日までの週4日に集中して働くことで、金曜日は休暇を取り子どもに関する用事に充てることができる。また、「在宅勤務制度」については、従業員の約9%が完全在宅勤務を行っており、従業員の7割は部分的在宅勤務で、一部の勤務が在宅で、残りをBTや顧客のオフィスで業務を行っている。

図表4-1-2-27 英国BT社における在宅勤務制度の利用者推移
(出典)BT社ホームページ

このほかにも「フレックスタイム」をはじめ、複数人で仕事を共有する「ジョブシェアリング」、特定の合意の上で勤務パターンや勤務場所を固定しない「自由勤務」、各種休暇制度など様々な仕組みが用意されている。

これら取組の成果としては、欠勤率向上は英国の平均より約40%ほど高く、出産休暇後の女性の98%が職場復帰するなどのほか、CO2等の環境負荷低減や、退職者の減少により新規採用コストを年間数百万ポンド(英)節約するなど多くの効果を上げている。



23 http://www.japan-telework.or.jp/intro/tw_effect.html別ウィンドウで開きます

24 自分の机を社員が持たないオフィススタイルのこと

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