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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第2節 ICTのさらなる利活用の進展

(3) 電子自治体の推進

ア 自治体クラウド導入の取組加速

地方公共団体においては、多様な住民ニーズへの対応にICTを活用した様々な取組が期待されるところとなっている一方、人材が限られ財政状況も厳しい中、一層効率的な行政運営が必要とされている。また、地方公共団体の庁舎が損壊し、行政情報の流出が生じた東日本大震災の経験も踏まえ、行政情報の保全と災害・事故発生時の業務継続の確保が重要な課題となっている。

総務省はこれまで、それぞれの地方公共団体が単独で情報システム、とりわけ税・住基・国保等の基幹系と呼ばれる情報システムを庁舎内で保有・管理することに代え、複数の地方公共団体が情報システムを集約するとともに、共同で外部のデータセンターにおいて保有・管理を行い、通信回線を経由して利用できるようにする「自治体クラウド」導入の促進を行ってきた(図表4-2-1-11)。

図表4-2-1-11 自治体クラウドのイメージ図
(出典)総務省作成資料

自治体クラウドの導入により、情報システムを共同で保有・管理することでの運用経費等の削減、また堅牢なデータセンターを活用することでの行政情報の保全等の災害・事故等発生時の業務継続の確保を図ることが可能となる。

具体的な取組としては、神奈川県町村情報システム共同事業組合において県内全14町村で自治体クラウドの導入がなされた例があり、平成23年度から各町村で順次稼動している。運用経費の約3割の削減や、ハードの管理等のアウトソーシングによる職員負担の軽減、データセンターの活用による業務継続性やセキュリティ確保等の効果が得られている(図表4-2-1-12)。

図表4-2-1-12 自治体クラウドの導入事例(神奈川県町村情報システム共同事業組合)
(出典)神奈川県町村情報システム共同事業組合作成資料

平成25年6月14日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針〜脱デフレ・経済再生〜」において、自治体クラウドはその取組を加速させることとされている。また、同日閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」においては、「公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会」が目指すべき社会・姿として位置付けられ、より便利で利用者負担の少ない行政サービスの提供を、災害や情報セキュリティに強い行政基盤の構築と徹底したコストカット及び効率的な行政運営を行いつつ実現することが求められている。この中で「国・地方を通じた行政情報システムの改革」として、自治体クラウドについても地方公共団体の取組を加速することとされている。さらに、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月東日本大震災復興対策本部決定)において、「地方公共団体をはじめ幅広い分野へのクラウドサービスの導入推進」が盛り込まれる等、災害・事故等に強い電子自治体の構築は重要なものとなっている。

イ 電子自治体の取組みを加速するための10の指針の策定

前述の「世界最先端IT国家創造宣言」や地方公共団体を取り巻く環境の変化等を踏まえ、自治体クラウドの導入を始めとした地方公共団体の電子自治体に係る取組を一層促進することを目的として、総務省は平成26年3月に「電子自治体の取組みを加速するための10の指針1」を策定し、地方公共団体に通知するとともに公表を行った(図表4-2-1-13)。

図表4-2-1-13 電子自治体の取組みを加速するための10の指針(概要)
(出典)総務省作成資料

本指針では、①番号制度導入を契機として自治体クラウドの導入を始めとする情報システムの効率化に取り組むこと、②オープンデータや新たなICT技術の利活用を通じた住民利便性の向上に取り組むこと、③セキュリティの確保やPDCAサイクルの構築等電子自治体推進のための体制整備に取り組むことなどが示されている。本指針は、番号制度の導入に併せた自治体クラウドの導入を最優先課題と位置付けており、特に①に係る取組について重点的に記述されている。

総務省では、本指針のフォローアップを行うとともに、自治体クラウドの導入に対する地方財政措置や調査研究等、自治体クラウドの導入加速に向けた取組を進めていくこととしている。

ウ 地域情報プラットフォームの普及推進等

マイナンバー制度の導入により総合窓口サービスなど住民サービスの向上や行政事務の効率化が期待されているが、その実現には、団体業務で活用される各種業務システム間の情報連携について、業務分野を超えて確保することが重要となる。総務省では、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)と連携し、マイナンバー制度の導入や自治体クラウドへの移行を契機として、全国の地方公共団体において情報連携基盤―地域情報プラットフォーム―の導入が進むよう情報提供等の支援を行っており、平成26年1月現在、約1,600の地方公共団体において地域情報プラットフォームを採用したシステムの導入が進んでいる(図表4-2-1-14)。

図表4-2-1-14 地域情報プラットフォームの普及状況
(出典)総務省「導入状況にかかる自治体アンケート調査」(平成25年12月)2を元に作成
「図表4-2-1-14 地域情報プラットフォームの普及状況」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

地域情報プラットフォームは、地方公共団体が保有する各種情報システム間の連携(電子情報のやりとり等)を可能とするために定めた業務面と技術面のルール(標準仕様)であり、現在、APPLICにおいて地方公共団体内部の26の業務システムを対象に「地域情報プラットフォーム標準仕様書」が策定されている。この中で複数の事業者の情報システムを組み合わせて業務処理が行えるよう各業務システムが従うべき約束事を取り決めており、業務ごとに最適な事業者を選定し、効率的かつ利便性の高い団体業務を遂行することが可能となっている。地方公共団体においてこうした標準仕様に準拠したシステムを導入することで、総合窓口サービスなど住民利便性の高いサービスの実現のほか、クラウド環境を含めマルチベンダー化によるさらなるコスト削減につながる効果が期待できる。現在の仕様書は団体内での情報連携を想定したものであるが、今後、マイナンバー制度に対応して複数団体間のシステム間標準に必要なルールが追加される予定である。

また、団体間で情報連携を活用する場合、団体間で業務を進める手順が異なることから、情報連携基盤を構築するだけでは足りず、業務フローの調整が必要となる。このため、総務省では、地方公共団体が情報提供ネットワークシステムを利用して他団体との情報連携を行うにあたり、参考となるよう、マイナンバー制度の対象手続について地方公共団体の業務フローの整理、策定をあわせて進めており、マイナンバー制度下で導入希望が高い総合窓口サービス(例:図表4-2-1-15)をはじめ、マイナンバー制度を活用した様々な付加価値サービスや行政事務効率化の実現に向けて、総務省ではAPPLICと連携し情報連携基盤としての地域情報プラットフォームのさらなる普及や活用促進を進めていくこととしている。

図表4-2-1-15 地域情報プラットフォームの活用事例(インテリジェント型総合窓口の実現)


1 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei07_02000018.html別ウィンドウで開きます

2 地域情報プラットフォーム導入団体数全体については、住基等26システムのいずれか一つ以上導入していると回答した市区町村数を計上。住基については、住基システムについての導入状況を記載。地方税については、個人住民税等4システムのいずれか一つ以上を導入している場合、導入済みとして記載。福祉については、国民健康保険等11システムのいずれか一つ以上を導入している場合、導入済みとして記載。
( )は全国の市区町村数を母数とした割合。

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