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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第3節 安心・安全なインターネット利用環境の構築

(2) インターネットリテラシーの重要性

インターネットの普及に加え、スマートフォン等の急速な拡大により、国民全体として ITに触れる機会が増大していることを踏まえ、ITの利活用により、子供から高齢者まで、そのメリットを享受して豊かに生活を送ることができるよう、情報モラルや情報セキュリティに関する知識を含め、国民全体の ITリテラシーの向上を図ることが重要である4

しかしながら昨今ソーシャルメディアでの不適切投稿による問題が注目を集めており、それらを踏まえた上で国際ウェブアンケート調査からSNSを中心とした利用者のインターネットリテラシーの現状及び我が国の特徴等を以下にて分析する。また、インターネットリテラシーにはリスク教育の有無によるところが大きいという指摘を踏まえ、民間団体及び各事業者における取組等を紹介する。

ア ソーシャルメディアでの不適切投稿による「炎上」問題

近年ソーシャルメディアでの不適切投稿によって発生するトラブル、いわゆる「炎上」が注目されている。Googleにおける「Twitter炎上」「Facebook炎上」の日本での検索頻度を見てみると、2010年頃より徐々に頻度が上昇し、2013年から特に「Twitter炎上」において検索頻度が急激に高まっており、2013年に注目が高まったことが見てとれる(図表4-3-1-13)。

図表4-3-1-13 Googleにおけるソーシャルメディアの炎上の検索頻度

この背景には、2013年にSNSを通じた、飲食店やコンビニエンスストア、交通機関などにおける不適切な写真の投稿による炎上事件が各種報道において注目されたことが考えられる(図表4-3-1-14)。

図表4-3-1-14 ソーシャルメディアを通じた炎上事件の事例
イ インターネットリテラシーに関する利用者意識
(ア)SNSにおける匿名利用

他方で、我が国においてはSNSの利用に関して匿名性を好む傾向が指摘されることがある。そこで、国際ウェブアンケート調査を行った6か国で比較した。

6か国における主なSNSにおける利用有無とその匿名・実名利用の内訳については、我が国はFacebookの利用率では他国に比べ低い傾向にあるが、Facebookにおいては実名登録が推奨されているため、各国共通で多くが実名にて利用している(図表4-3-1-15)。一方、そのような推奨が特段ないTwitterの利用者では日本は「匿名利用」が7割を超え、他国に比べても顕著に匿名利用が多い状況にある(図表4-3-1-16)。

図表4-3-1-15 SNSの利用有無と匿名・実名利用の比率
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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図表4-3-1-16 Twitterの実名・匿名利用
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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さらに、SNSにおける実名公開の抵抗感についても「やや抵抗感がある」+「抵抗感がある」の合計が日本は6割を超えており、他国が3〜4割前後であるのに対し、顕著に多い状況にある。また、SNSの利用率が高いとされる10-20代の若年層においてもこの傾向は同様であった(図表4-3-1-17)。

図表4-3-1-17 SNSの実名公開における抵抗感
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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これらのことからも我が国の特徴として、前述の指摘通り匿名性を好む傾向にあると考えられる。

(イ)SNSにおける本人が特定される認識

ではこの匿名利用の高さが、前述の炎上事例につながっているのだろうか。

まず、「匿名でSNSを利用していれば、あなたが誰であるか本人を特定されることはないと思うか」という設問を聞いてみたところ、我が国では半数を超える6割が特定される可能性を認識している結果となった(図表4-3-1-18)。

図表4-3-1-18 匿名利用における特定されるリスクに対する認識
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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さらに「もしあなたが発信したことがわからず、匿名で発信できるとしたら次のような内容を発信したいと思うことはあるか」という設問については、日本では「あてはまるものはない」とする回答が6割と最も多くなり、他国でも同様の傾向にあった。特に「あなたが過去に行った社会の一般常識やモラルに反する行為の露呈」については、我が国では3%弱と他の選択肢と比べても非常に低い結果となり、若年層に限定してみても同様の結果となり、これらの結果から匿名利用による関係性は見受けられなかった(図表4-3-1-19)。

図表4-3-1-19 匿名起因による書き込み意向
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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一方で、「あなたのSNS上のアカウントで発言した場合、フォローされている等でその内容を見られていると思われる人」については、我が国においては友人関係では各国と同様に見られる認識が高い一方で、それ以外の「職場の上司や学校の先生」「元同級生」「家族」などにおいては他国に比べ顕著に低い傾向となった(図表4-3-1-20)。

図表4-3-1-20 SNSにおける他者に見られることへの認識
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また、SNSにおける実際のコミュニケーションの内容をみても、日本は「友人・知人・恋人との雑談・連絡」は他国と大きな差異がみられない一方、家族等の話題や社会や仕事、健康等に関する話題は他国に比べ低い傾向が見られた(図表4-3-1-21)。

図表4-3-1-21 SNS上のコミュニケーション内容
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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これらのことから、我が国のSNS利用の特徴として特に友人や仲間内などのプライベートを意識した利用がされていることが考えられる。

(ウ)SNSにおけるリテラシー教育

前述のとおり、我が国のSNS利用の傾向が見えてきたが、こうしたソーシャルメディア利用のリテラシー教育・研修の受講経験については、日本は「ある」が2割程度であり、他国に比べ低い傾向となったが、「スマートフォン所有者」に限定すると、受講経験ありが日本では3割近くになり、10-20代の若年層に限定してみると、我が国を始めすべての国において受講経験ありの回答が高くなった(図表4-3-1-22)。このことから、我が国及び各国の若年層を中心にこれらソーシャルメディア利用に関するリテラシー教育が浸透しつつあることがうかがえる。

図表4-3-1-22 リテラシー教育の有無
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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(エ)調査結果からの示唆

これらの結果を踏まえると、我が国のSNS利用においては、匿名利用が好まれる傾向があるものの、全体的には潜在的な炎上リスクのある書き込み意向は非常に低い傾向であり、特定されるリスクも過半数で認知されていることに加え、リテラシー教育も浸透しつつあることがうかがえる結果となった。

他方で、SNSは自分が発信した情報は世界中の誰からも閲覧されるリスクが存在し、一度情報が拡散してしまうと文字情報として残り、削除することが困難な特徴がある。また、各種炎上事例においては、書き込まれた内容や写真、プロフィール情報などの部分的な情報を元に、第3者の他人により本人が特定されるケースもあり、情報を発信した本人が仕事や社会的な地位を失い、勤め先の企業等にも影響し大きな損失につながった事案も発生している。

調査結果を踏まえると、我が国のユーザー全体としては炎上につながる恐れのある書き込みの可能性は低い傾向が見られ、そのような事案が起こるリスクは一部ユーザーに限られる可能性も考えられるが、前述のリスク面とSNSのメリットも踏まえて適切に利用していくことが重要であるといえるだろう。

ウ インターネット接続機器における認識差

前述のとおり若年層ではインターネットがより利用されていることがうかがえるが、国際ウェブアンケート調査では16歳以上を対象としており、ここではより下の年齢も含めたインターネット接続可能な機器の利用状況等を見て、情報通信機器のインターネット接続機能についての各年代での認知度を見てみる。なおゲーム機のような専用端末の場合は、インターネット接続機能を持っていても、端末の利用率がインターネット接続率や、専用サイト以外のサイト全般の利用率に直結しない5点に留意する必要がある。

小中高の児童・青少年の情報通信端末の利用状況について保護者に質問したウェブアンケート調査6によると、「携帯電話・PHS」は全体を通じて約3割以上が利用しており、「スマートフォン」は学年が上がるにつれて利用率が伸び、高校生では68.3%が利用している。またノートパソコンは中学生では約5割、高校生では約6割が利用している。加えて「通信機能のあるゲーム端末(ニンテンドー3DS、PSPなど)」は全体で約5割が利用しており、特に「小学校4〜6年生」(63.4%)が高い比率で保有している。また「通信機能のある音楽プレーヤー」についても小学生は低いものの中学生では24.1%、高校生では29.1%と学年が上がるに従って利用率が上昇している(図表4-3-1-23)。

図表4-3-1-23 小中高の児童・青少年の情報通信端末の利用率
(出典)総務省情報通信政策研究所「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成26年)より作成
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また、子供が小学校入学前に情報通信端末を利用開始する割合は、ここ3年で大きく上昇しており、子供が初めて情報通信端末に接触する年齢は、学年が下がるほど早期化していると言える(図表4-3-1-24)。

図表4-3-1-24 各情報通信端末を子供が小学校入学前に利用開始した割合
(出典)総務省情報通信政策研究所「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成26年)より作成
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同調査においては、子供がICTを利活用する能力を身に付けるために必要なこととして、家庭での適切な指導を挙げる保護者が6割以上と最も多い。また、実際に家庭において子供に対しパソコンやインターネットの使い方などの指導を行っているか尋ねたところ、家庭において日常的又は時々子供に対する指導を行っているとする保護者は約5割であった。(図表4-3-1-25)。

図表4-3-1-25 子供が将来ICT利活用能力を身につけるために必要な事項と家庭における指導状況
(出典)総務省情報通信政策研究所「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成26年)より作成
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さらに、家庭において子供に対し、パソコンやインターネットの初歩的な使い方などのほかに、どのような指導をしたか質問したところ、低学年においては機器操作の方法等とネットの利用に係るリスクに関するものが同程度であるが、高学年になるほどリスクに関する指導割合が特に高まる傾向がある。法令やマナーについての説明も子供が小学校1〜3年の保護者では21.5%だが、高校生の保護者では47.6%に上昇している(図表4-3-1-26)。

図表4-3-1-26 ICTについての子どもへの指導内容(学年別)
(出典)総務省情報通信政策研究所「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成26年)より作成
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これらの調査結果から、保護者は一定の問題意識の下、子供のICT利活用のあり方に関わろうとしていることが分かる。

他方、同調査において、端末の取扱い方法などの技術的な内容について、自分と子供どちらが詳しいと思うか聞いてみたところ、全体では7割を超える保護者が自分の方が詳しいと答えている一方で、子どもの学年が上がるにつれて、子どもの方が詳しいと回答する保護者が増加している(図表4-3-1-27)。

図表4-3-1-27 子どもと比較した保護者のICTに係る知識
(出典)総務省情報通信政策研究所「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成26年)より作成
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加えて、国際ウェブアンケート調査において、日本限定で、携帯電話やPC以外の機器にインターネットへの接続機能があることについて認知しているかどうかを世代別で聞いたところ、10〜20代の年齢層、30〜40代の年齢層と比較して、50代以上の年齢層では「分からない」の回答割合が高かった。携帯ゲーム機や据置き型ゲーム機、デジタル音楽プレーヤーでは10〜20代の層の認知度が5割を超えるのに対して、50代以上ではいずれも5割を切り、これらの端末がインターネットへの接続機能を持つことに関する認知度の世代間の差がうかがえる(図表4-3-1-28)。

図表4-3-1-28 情報通信機器のインターネット接続機能についての認知度
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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専用端末の場合は、インターネット接続機能を持っていても、端末の利用率がインターネット接続率や、専用サイト以外のサイト全般の利用率に直結しない点に留意する必要があるが、これらの調査結果から、子供だけでなく親の世代のICTリテラシーに係る課題に題しても対応していく必要があると考えられる。



4 この点については世界最先端IT国家創造宣言を参照のこと。

5 この点については、経済産業省「平成25年度機器ごとのインターネット利用状況調査結果」を参照のこと。

6 我が国の小学生〜高校生までの子供を持つ保護者を対象に総務省情報通信政策研究所がウェブアンケートを実施。アンケート調査会社が保有するモニターから、「小学1年生〜高校3年生(12学年)の各学年の第一子(男子)を持つ保護者」「「小学1年生〜高校3年生(12学年)の各学年の第一子(女子)を持つ保護者」」について、各2,400サンプル(200サンプル・学年別12カテゴリ)、計4,800サンプルを抽出した。

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