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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第1節 様々な価値を生み出すビッグデータ

(3) 企業向けアンケート調査による分析

ア 全業種向けアンケート調査による分析

総務省では、企業等におけるデータ活用の実態(利用するデータ、データ活用に際しての課題、データ活用で得られている効果等)を把握するため、データを取り扱っている企業等に所属する者を対象としたアンケート調査15を行った。その結果を以下に紹介する。

(ア)データ利用の概況

まず、どのようなデータを利用して業務を行っているかについて複数回答で尋ねたところ、「顧客・取引先属性情報」が50%を超えたほか、「経理情報」や「業務連絡・業務日誌等の文書情報」が40%を超え。「取引情報」が30%を超える結果となった(図表3-1-3-12)。それ以下のデータについては20%未満という結果になった。管理部門において活用されているデータや、従前から活用が進んでいる構造化データが上位に来る傾向にあり、非構造化データの業務への活用はそれほど進んでいない状況にあると言えよう。

図表3-1-3-12 利用するデータの種類
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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続いて、勤務先の中でも回答者が所属する部門におけるデータ活用の有無について尋ねた。所属部門における業務を①経営全般、②商品・サービス企画開発、③商品・サービス生産・流通、④販売企画・販売促進、⑤販売・サービス提供、⑥アフターサービスの6種類に区分した上で、回答者が所属する部門の業務に当該業務が該当するか否か、かつ、当該業務におけるデータ活用の有無を尋ねたところ、データを利用しているという回答の比率が多かったものは、「経営全般」が77%と高く、次いで、「販売・サービス提供」、「販売企画・販売促進」の順である(図表3-1-3-13)。

図表3-1-3-13 所属部門の業務におけるデータ利用の有無
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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所属部門においてデータを利用している業務において、そのデータ活用の深度を①データを集約して業務や会社の状況の「見える化」を図る、②データを集約して異常な状況を「自動的に検出」、③集約してデータを基に「将来の状況を予測」、④将来の予測に基づいて機械やシステムを「自動的制御」の4段階に区分した上で尋ねたところ、「見える化」が圧倒的に多く、他の指摘率が30%未満となっているが、その中では「将来予測」、「自動的に検出」が比較的多く、「自動的に制御」は少ない結果となった。(図表3-1-3-14)。

図表3-1-3-14 所属部門の業務におけるデータ利用の深度
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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さらに、データ利用における課題について尋ねたところ、「データの利用による費用対効果が分かりにくい」、「データが散在していて分析できない・しにくい」、「分析・利用できる体制が社内にない」、「どのように利用してよいかわからない」、「データの分析・利用に費用がかかる」といった回答が上位を占めた(図表3-1-3-15)。

図表3-1-3-15 データ利用における課題
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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(イ)データ利用によって得られる効果

続いて、データ利用によって得られた効果について、①コスト削減、②売上向上、③付加価値向上、④顧客満足度向上、のそれぞれについて、具体的に何%の効果を得られたと感じているか尋ねた。

効果があるとの回答はコスト削減が61.2%と最も高く、顧客満足度向上、売上向上、付加価値向上の順となったが、いずれも5割を超える結果となった。具体的な効果の平均値はコスト削減が15.0%であり、こちらも顧客満足度向上、売上向上、付加価値向上の順となった(図表3-1-3-16)。

図表3-1-3-16 データ利用によって得られる効果(全体像)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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続いて、回答者の属性別でそれぞれの効果の平均値を算出した。業種別で見ると、コスト削減は製造業(18.3%)、売上向上では情報通信業(12.4%)、付加価値向上も情報通信業(12.6%)、顧客満足度向上は金融・保険業(16.6%)が最も高くなった。所属部門別では、コスト削減は生産管理・品質管理部門(23.0%)、売上向上は製造・生産部門(13.9%)、付加価値向上は企画・広報部門(11.8%)、顧客満足度向上は製造・生産部門(16.5%)という結果になった(図表3-1-3-17)。

図表3-1-3-17 データ利用によって得られる効果(回答者属性別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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さらに、所属する部門の業務におけるデータ利用によって得られる効果の平均値を出したところ、業務の違いに関係なく、コスト削減や顧客満足度向上の効果が比較的高く出る結果となった(図表3-1-3-18)。

図表3-1-3-18 データ利用によって得られる効果(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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さらに業務別のデータ利用の深度と得られる効果の関係について分析した結果が、図表3-1-3-19である。データ利用により自動制御まで実現しているサンプル数が少ない点に留意が必要であるが、全般的な傾向として、見える化を実現した段階でコスト削減効果が挙がっている点、ただし、販売やアフターサービスでは自動検出まで実現するとコスト削減効果が大きくなっている点が特徴的である。また、他の3つの効果については、概ね、データ利用の深度が深くなるほど、得られる効果も高くなる傾向にあると言えよう。

図表3-1-3-19 データ利用の深度と得られる効果(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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(ウ)データ利用による売上向上効果の推計

上記のアンケート結果に基づき、以下の推計式によりデータ利用による売上向上効果の推計を行った16。なお、流通業における売上向上効果については、別途、流通業向けアンケート調査の結果に基づいて推計を行っているため、ここでの推計結果は流通業(卸売業・小売業)以外の業種における売上向上効果の合計に該当する。


売上向上効果額=全産業(除く流通業)売上高×データ利用率×平均売上向上率


全産業売上高については総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」の数値を用いることとし、流通業を除いた売上高は920.4兆円であった。データ利用率は、今回のアンケート調査に行ったスクリーニング(勤務先がデータを利用しているか否か)で、「データを利用している」との回答割合が31.0%であったことから、その値を代理指標として用いる。平均売上向上率は、回答者ごとに所属企業の売上高(平成24年度)と売上向上率の積により売上向上額を算出し、それを全体で割った平均値(11.5%)を用いる。

以上の数値を用いて計算した結果、流通業以外の業種における売上向上効果を32.8兆円と推計した。

イ 流通業向けアンケート調査による分析

流通業は1980年代からPOSデータを活用した商品調達を行うなど、他の業種に先駆けてデータの利活用に取り組んできた業種であると言える。平成25年版白書に掲載した流通業におけるデータ活用に伴う発現効果として、①プライベートブランドの商品開発、②商品調達・在庫管理、③販売促進、④広告宣伝の最適化、⑤相互送客による売上向上、といったものが見られた。

今回の調査では、文献等による事例収集の段階で新たに見つかった⑥売場動線の最適化、⑦店舗立地の分析、⑧その他、の3つの発現効果を追加した上で、流通業におけるデータの利用状況や定量的な発現効果に関するアンケート調査17を実施した。

(ア)データ利用の概況

回答者の勤務先におけるデータ利用の有無について尋ねた。上記①〜⑧の業務において、POSデータや顧客の購買履歴、SNSの書き込みといったデータ活用の有無を尋ねたところ、商品調達・在庫管理や販売促進、広告宣伝といった業務において、利用しているとの回答が多い結果となった(図表3-1-3-20)。

図表3-1-3-20 流通業におけるデータ利用(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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続いて、それぞれの業務において「データを利用している」と回答した者に対し、利用するデータをどこから取得しているかについて尋ねたところ、社内の業務が最も多く8割前後、続いて、他社から取得・購入が1〜2割という結果となった(図表3-1-3-21)。

図表3-1-3-21 利用するデータの取得先(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済 および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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同じくデータを利用している業務に関し、データの分析をどこで行っているかを尋ねたところ、社内との回答が圧倒的に高い結果となった。その中でも立地分析については、他と比べると外部で分析している割合が高くなっている(図表3-1-3-22)。

図表3-1-3-22 データの分析先(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済 および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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また、データの分析を「社内」または「社内と外部の両方」で行っていると回答した者に対し、社内におけるデータ分析の担当者について尋ねたところ、営業などの現場担当者が最も高く、マーケティング担当者がそれに次ぐ結果となった(図表3-1-3-23)。

図表3-1-3-23 社内におけるデータ分析の担当者
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が 我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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データ利用における課題について尋ねた結果が、図表3-1-3-24である。「どのように利用してよいかわからない」、「分析・利用できる体制が社内にない」、「データの利用による費用対効果が分かりにくい」、「データの分析・利用に費用がかかる」、「データが散在していて分析できない・しにくい」といった回答が上位を占めた点が全業種におけるアンケート結果(図表3-1-3-15参照)と変わらない。

図表3-1-3-24 データ利用における課題(流通業)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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(イ)データ利用によって得られる効果

続いて、データを利用している各業務において、データ利用によって得られた効果が具体的に何%得られたと感じているか尋ねた。なお、全業種の場合とは異なり詳細に効果を把握するため、業務によって効果の指標を変えて尋ねている(図表3-1-3-25)。

図表3-1-3-25 データ利用によって得られる効果(業務別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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プライベートブランド商品開発では、いずれの効果も7割以上が「効果あり」と回答しており、効果の平均値も2〜3割と高くなっている。

商品調達・在庫管理では、売上向上や利益向上は6割以上が「効果あり」と回答し、効果の平均値も17%前後となっている一方、ロス削減については相対的に低い結果となっている。

販売促進では、販促費削減を除き、「効果あり」との回答が70%前後と高く、効果の平均値も15%以上となっている。

広告宣伝ではコスト削減効果について、66%は「効果あり」と回答している。

相互送客については、客数増加について74%が「効果あり」と回答し、効果の平均値は25%となった。

売場動線最適化や立地分析では、いずれの効果も6割以上が「効果あり」と回答しており、効果の平均値も20%を超える結果となった。

(ウ)データ利用による売上向上効果の推計

以上のアンケート結果に基づき、以下の推計式により流通業(卸売業・小売業)におけるデータ利用による売上向上効果の推計を行った18

売上向上効果を把握した6つの業務19のいずれかでデータを活用しているサンプルについて、6つの業務における売上向上効果の最大値と当該サンプルの所属企業の売上額の積により各サンプルの売上向上効果額を算出した20。各サンプルの売上向上効果額と売上額を従業員規模別に集計し、それを割ることにより、従業員規模別の平均売上向上効果(%)を算出した。

また、アンケートでは各業務におけるデータ活用の有無について尋ねており、6つの業務のいずれかでデータを活用している企業の割合(データ利用率)を従業員規模別に集計した。

従業員規模別の売上高については、流通業以外の業種の推計と同様に総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」の数値を用い、以下の推計式により、卸売業及び小売業の売上向上効果額を推計した。


売上向上効果額=(卸売業または小売業の)売上高21×データ利用率×平均売上向上効果


図表3-1-3-26に記載のとおり、卸売業では13.0兆円、小売業では15.1兆円、合計で28.1兆円が流通業におけるデータ活用による売上向上効果と推計された。

図表3-1-3-26 流通業における売上向上効果の推計(従業員規模別)
(出典)総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成26年)
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なお、流通業以外の業種における売上向上効果(ア(ウ)参照)と合計すると60.9兆円という結果になった。これは全産業の売上高22の4.6%に相当する。



15 全国の企業モニター1,000名を対象にウェブアンケートを実施。具体的には「データ利用の有無」、「利用するデータの種類」、「データ利用による効果」を主な調査項目として設計した。付注4-1も参照されたい。

16 推計手法の詳細は付注4-2も参照のこと。

17 流通業に勤務する企業モニター500名を対象にウェブアンケートを実施。具体的には「データ利用の有無」、「利用するデータ」、「データ利用による効果」を主な調査項目として設計した。付注4-1も参照されたい。

18 推計手法の詳細は付注4-2も参照のこと。

19 プライベートブランド商品開発、商品調達・在庫管理、販売促進、売場動線最適化、立地分析及びその他の業務の6業務。

20 アンケートの回答の中に全ての業務で同じ数値を記入していたものが散見されたため、今回の推計では6つの業務における売上向上効果の最大値を当該企業における効果とみなした。また、明らかに過大と思われる数値を記入していたサンプルについては、異常値とみなして推計から除外した。

21 卸売業の売上高は「53建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」及び「54機械器具卸売業」を除く。

22 総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」によると、1,335.5兆円。

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