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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第2節 情報通信政策の展開

2 放送政策の展開

(1) 地上デジタル放送移行後の放送政策の展開

ア 放送コンテンツ流通の促進
① 放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会

総務省は、昨今、急速に進む技術やグローバル化等の環境変化を踏まえ、放送コンテンツの海外展開、スマートフォン・スマートテレビに対応したコンテンツ配信等の新たな市場開拓に向けて、海外におけるコンテンツ発信の場の確保や権利処理の効率化などについて検討するため、平成24年11月から「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会11」を開催し、平成25年6月に報告書をとりまとめた。これを受け、平成25年8月に放送コンテンツの海外展開をサポートする横断的組織として、放送局や権利者団体、商社、広告代理店といった幅広い関係者が参画した「一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ(ビージェイ))12」が設立された。また、放送コンテンツの二次利用を促進するため、放送局と権利者(実演家、レコード協会)が協力し権利処理の効率化、迅速化を図る実証実験を実施している。

② 放送コンテンツの製作取引適正化

総務省では、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を策定しており、放送コンテンツ製作に係わる番組製作会社のインセンティブや創意工夫の意欲を削ぐような取引慣行の改善を行い、番組製作に携わる業界全体の向上を目指している。

平成26年4月からの消費税増税に伴い、円滑かつ適正な転嫁の確保を実現するため、3月に消費税転嫁に関する留意点、想定例を記載する改訂を行った。今後も、定期的に「放送コンテンツの製作取引の適正化の促進に関する検討会」を開催し、番組取引の実態調査・ガイドラインの周知啓発やフォローアップを行っていく。

イ 放送サービスの高度化

光ファイバ、衛星その他有線・無線メディアにおける伝送容量や、CPUの処理能力の飛躍的向上など、通信・放送サービスをとりまく環境は大きく変化し、個々のサービスの高度化に加え、通信・放送相互の連携による利便性の高いサービスの提供が、更に容易に実現可能な状況となっている。総務省は、こうした状況を踏まえ、放送サービスのさらなる高度化に向けた具体的な方策を検討するため、平成24年11月から「放送サービスの高度化に関する検討会13」を開催し、「4K・8K(スーパーハイビジョン)」、「スマートテレビ」及び「ケーブル・プラットフォーム」の3分野について検討を行い、平成25年6月にとりまとめを行った。

同検討会においては、4K・8Kや次世代のスマートテレビのサービスの早期開始を目指し、映像関連産業の新事業・新市場を創出し、国際競争力を強化するために、下記の項目についてそれぞれ、実現すべき具体的な目標及びロードマップ、そのための推進体制が明確化された。

① 4K・8K(スーパーハイビジョン)

4K放送については2014年(平成26年)に、8K放送については2016年(平成28年)に、それぞれ試験放送を開始することを目指すロードマップが示された。このロードマップに沿い、平成25年5月に放送事業者、受信機メーカー、通信事業者等関係事業者により「次世代放送推進フォーラム」が設立され、同フォーラムが中心となり、4K・8Kの放送サービスの早期開始に向けて、伝送技術の検証やコンテンツ制作技術の検討等を連携して進めており、平成26年6月2日からは4K放送の試験放送が衛星放送等で開始されている。総務省においては、ロードマップ策定以降の状況変化を踏まえて、ロードマップのさらなる具体化、加速化及び課題解決のための具体的方策の検討を進めることを目的として、平成26年2月から「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合14」を開催している。

また、4K・8Kに対応した超高精細度テレビジョン放送(UHDTV)の実用化、普及促進等を図るため、より効率的な伝送を可能とする最新技術の導入等、必要な技術的条件を取りまとめることを目的に、平成25年5月に情報通信審議会において審議を開始し、現時点で円滑なサービス導入が可能と考えられる技術等について検討した結果、平成26年3月25日、情報通信審議会より「超高精細度テレビジョン放送システムに関する技術的条件」のうち「衛星基幹放送及び衛星一般放送に関する技術的条件」について一部答申を受けた。

さらに、2020年頃の8Kの実用化に向けた放送の規格化や放送機器の開発に関して、無線システムを使った放送素材伝送を行う放送事業用無線局(FPU)の開発は、機動性や回線設定の柔軟性の確保のため喫緊の課題となっている。そのため、総務省では、十分な伝送容量を確保できる120GHz帯の周波数帯を使用した無線システムの導入について、平成25年12月に電波監理審議会における改正省令案の諮問・答申を経て、平成26年1月に省令を改正した。

② スマートテレビ

これまでのスマートテレビとは差別化された、新たな放送・通信連携サービスを可能とする「次世代スマートテレビ」の普及を推進し、新たなビジネスモデル等の創成、市場の活性化等につなげるため、「視聴者の安全・安心の確保」と「オープンな開発環境整備」を実現する推進体制を整備することが示され、この推進体制として、平成25年7月に次世代スマートテレビ推進センターが一般社団法人IPTVフォーラム内に設置された。次世代スマートテレビ上で動作する放送連動型アプリケーションの実現のために必要となる諸条件の具体化に関する体制も一般社団法人次世代放送推進フォーラム内に立ち上がり、平成26年2月にリモート視聴に関する要件が策定された。また、平成25年12月から平成26年3月までの間には、視聴者の利便性及び安全・安心なサービスの提供を考慮しつつ、放送番組と多様なウェブ・アプリケーションが連動したり、テレビとスマートフォン/タブレットが連携するスマートテレビの推進に向けて、ハイブリッドキャスト技術を活用した実証実験「Hybridcast 201415」を実施した。

③ ケーブル・プラットフォーム

ケーブルテレビは、その加入世帯数が我が国の全世帯の過半数(約2,800万世帯)を超える地域の重要な総合情報通信メディアであるが、昨今の映像配信分野等における国内外での競争の激化の中で、一層のサービスの高度化、効率化が求められている。そのため、検討会取りまとめを踏まえ、昨年度より、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟を中心に、ケーブルテレビの共通基盤である「ケーブル・プラットフォーム」の実現、発展に向けた取組が行われている。現在、ケーブル・プラットフォーム事業者によるIP-VODサービスが開始され、平成26年度中にはIP放送のトライアル実現が予定されている。また、日本ケーブルテレビ連盟の調整のもと、ケーブルテレビ業界全体の取組として平成26年6月より4Kの試験放送が全国各地で実施されている。今後は、ケーブル・プラットフォームの機能の拡充、地域連携や新たなサービスへつながる共通ID連携機能の実現、4K・8Kやスマートテレビ等の放送サービスの高度化への対応等、更なるサービス提供に向け取り組んでいくこととしている。

ウ 放送政策に関する諸課題

平成24年11月から「放送政策に関する調査研究会16」を開催し、放送法等の一部を改正する法律(平成19年法律第136号)の施行状況や社会経済情勢の変化等を検証するとともに、時代に即した放送政策の在り方等について検討を行い、平成25年8月に、「国際放送」、「NHKのインターネット活用業務」及び「認定放送持株会社制度とマスメディア集中排除原則」について、第一次取りまとめ17を公表した。さらに、その後、放送事業者の経営基盤の強化について検討を行い、その結果として、平成26年2月に第二次取りまとめ18を公表した。

これらの検討を踏まえて、総務省は同年3月、放送法及び電波法の一部改正法案を国会に提出し、同年6月に成立した(図表6-2-2-1)。

図表6-2-2-1 放送法及び電波法の一部改正法案の概要
エ 放送ネットワークの強靱化

東日本大震災において、放送は災害情報の提供をはじめとして国民が安心・安全に生活する上で大きな役割を果たした。特にラジオは災害時における有用性が強く認識されたが、同時に、低地・水辺に立地する中波(AMラジオ)送信所の防災対策の必要性が明らかになった。

また、放送がその役割を発揮するためには国民にあまねく届くことが必要であるが、電子機器等の普及や建築構造の変化がAMラジオの新たな難聴要因になっている。施設の老朽化や広告市場の縮小等の環境変化も生じている。

総務省は、こうした状況を踏まえ、平成25年2月から「放送ネットワークの強靱化に関する検討会19」を開催し、今後とも放送が災害情報等を国民に適切に提供できるよう、放送ネットワークの強靱化策等について検討を行い、同年7月に中間取りまとめを公表した。取りまとめでは、①放送ネットワークの強靱化、②経営基盤の強靱化(再編促進)、③自治体との連携強化、④新たなアイデアによる事業展開の推進について提言がなされた(図表6-2-2-2)。

図表6-2-2-2 「放送ネットワークの強靱化に関する検討会中間取りまとめ」主な提言概要

このうち、①放送ネットワークの強靱化については、本提言等を踏まえ、「V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靱化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針20」を同年9月に公表し、この基本的方針を踏まえ、基幹放送用周波数使用計画の一部変更21を同年12月に行うとともに、「AMラジオ放送を補完するFM中継局に関する制度整備の基本的方針22」を平成26年1月に公表した。

これらの基本的方針を踏まえ、同年4月に放送法施行規則等の一部改正等23により、FM方式によるAMラジオ放送の補完中継局に関する制度整備を行った。

また、放送ネットワークの強靱化に向けた放送事業者や地方公共団体等の取組を支援するため、総務省は、平成25年度補正予算による「地域ICT強靱化事業(放送ネットワーク整備事業)」を実施し、平成26年度からは、「放送ネットワーク災害対策促進税制」を創設するとともに、電波法の一部を改正する法律(平成26年法律第26号)の成立を受け、電波利用料財源を活用して「民放ラジオ難聴解消支援事業」を実施することとしている。

オ 新たな周波数帯での新放送メディアの展開

総務省は、地上テレビジョン放送をアナログからデジタルに移行したことに伴い、地上アナログ放送の終了及びデジタル放送のチャンネルの再配置により空いた周波数帯に携帯電話などを割当てするなど、周波数の有効利用を図っている。

地上テレビジョン放送のデジタル化に伴い利用可能となるVHF帯(超短波帯)を用いて実現を図る「移動受信用地上基幹放送」は、携帯端末や車載型の受信機で、移動しながらでも情報を入手できる「携帯性・移動性」と、不特定多数に対して同時に情報を提供することができる「放送」という機能を有する新たなメディアとして期待されている。また、映像・音響・データ等の様々な情報を柔軟に組み合わせた、従来にはない新しい放送番組が期待されている。

このうち、207.5〜222MHzの周波数帯を用いる「V−High放送」は、全国を対象とした放送であり、既に一部の周波数帯を利用してサービスが開始されている。一方、99MHzから108MHzの周波数帯を用いる「V−Lowマルチメディア放送」は各地方の都道府県からなる「地方ブロック」を対象とし、地域密着の生活情報や安心安全情報等を放送する「地方ブロック向け放送」として、地域の活性化やより安心安全な社会の実現に寄与することが期待されている(図表6-2-2-3)。

図表6-2-2-3 地上デジタル放送移行後の空き周波数の有効利用
(ア)V-High放送の推進

V-High放送については、(株)mmbiが、「NOTTV」のサービス名で、平成24年4月から放送サービスを開始している。未使用の周波数について、いわゆるソフト事業者の参入に向けて、平成25年8月からV-High放送業務に係る参入希望調査を実施した上で、同年12月からV-High放送業務の認定申請を受け付けた結果、5者から6番組、12セグメントの申請がなされ、平成26年4月、全申請が認定された。平成27年4月の放送開始が予定されている。

(イ)V-Lowマルチメディア放送の推進

平成25年3月から参入希望調査等を実施し、同年9月にV-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靱化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針を公表した。その後、同年12月に99MHzを超え108MHz以下の周波数を使用する特定基地局の開設に関する指針等を制定するなど、一連の制度整備が完了した。また、同年12月からいわゆるハード事業者の特定基地局の開設計画に係る認定申請を受け付けた結果、全国で延べ7者から申請がなされた。今後はいわゆるソフト事業者についての認定等を進めていく予定である。



11 放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/broadband_contents/index.htm別ウィンドウで開きます

12 BEAJ:Broadcast Program Export Association of Japan(http://beaj.jp別ウィンドウで開きます

13 放送サービスの高度化に関する検討会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/bcservice/index.html別ウィンドウで開きます

14 4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/4k8kroadmap/index.html別ウィンドウで開きます

15 放送・通信連携によるスマートテレビの実証実験「Hybridcast 2014」の実施:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu04_02000033.html別ウィンドウで開きます

16 放送政策に関する調査研究会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/bc_seisaku/index.html別ウィンドウで開きます

17 放送政策に関する調査研究会」第一次取りまとめ及び意見募集結果の公表:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000056.html別ウィンドウで開きます

18 放送政策に関する調査研究会」第二次取りまとめ及び意見募集結果の公表:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000071.html別ウィンドウで開きます

19 放送ネットワークの強靱化に関する検討会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/kyoujinka/index.html別ウィンドウで開きます

20 V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針の公表及び意見募集の結果:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu09_02000074.html別ウィンドウで開きます

21 移動受信用地上基幹放送等に係る制度整備(案)に対する意見募集の結果並びに当該制度整備(案)の一部に係る電波監理審議会への諮問及び答申:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000061.html別ウィンドウで開きます

22 AMラジオ放送を補完するFM中継局に関する制度整備の基本的方針(案)に対する意見募集の結果:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu08_02000092.html別ウィンドウで開きます

23 放送法施行規則等の一部を改正する省令案等に係る電波監理審議会への諮問及びその答申並びに意見募集の結果:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu09_02000093.html別ウィンドウで開きます

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